ささざめブログ

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【漫画】唯一無二の空気感に胸が打たれた『ふたりで木々を』の感想

平方イコルスン著『ふたりで木々を』を紹介/レビュー。

(購入はこちらから)

紹介/感想

昨日、位置原光Zの『いっていっぱいいって』の感想を書いたが、同日に楽園コミックスより発売されていたのがこの作品。

実は、平方イコルスン先生について知ったのもここ最近。位置原先生がリポストしたのかなにかで見かけて、もうその不思議な世界観と溢れるトキメキで一撃一目惚れしてしまった。そしてとうとう、新作の単行本の購入に至った。

どの作品も、他では見られない読み味があり、どうやって形容すればよいのかわからないような感想を抱くものも多い。まっすぐぶちかまされてウッとうめき声が漏れるような作品もあれば、なんだかわからないけれど凄いものを読んだ気がする、なんて感覚を得られる作品も。

誰にでもオススメできるというような作風ではないが、自由な発想力と唯一無二の読後感が味わいたい人にはぜひともオススメしたい一冊だ。

特に好きだった話

以下、個人的にグッときた話をまとめておく。微ネタバレ注意。

林立

一作目。「咀嚼音」について話す二人の少女。いやどんな発想したらこんな話になるの!と頭からガツンと食らわせられる一作。

「咀しゃく音カルテルの刺客だな?」「知らないカルテルの人だっ」のセリフが良すぎる。

最早・偏重

気難しい二人の話。2P漫画と4P漫画の別々の回と思われるが、実質続き物。

質の違う「気難しさ」が楽しく表現されていて面白い。最後、小数は甘えですよなんて言い出して、リアルに「めんどくせー!w」と笑い声が出た。

自分はそんなに友達にはなりたくないが、二人は仲良くしてほしい。

脳外不出

休み時間の悪ふざけな感じの、ちょっとおバカな一作。くだらないのが好きなので好き。

失望

死をテーマにした作品もいくつか収録されていて、これはその一つ。死んでしまった少女と、顔のない少女の話。

ラスト2Pの急展開は驚きとやるせなさが同時に襲ってくる。
あと、79P(『いい威圧』『ふたりで木々を』の間)のイラストがゾクっとくる。技あり合わせて一本な一作。

ふたりで木々を

表題作。これはもう、傑作。正直言って、私は最後のコマで泣いてしまった。

木を抜く/植えるという、へんてこりんな能力の話を展開する中で、少女二人の嫉妬と友情、諦め、未来への不安、色んなものがたった8Pで描かれる。凄すぎる。

そんなはず

自死した女性の話。『死にもの』『いい威圧』と一連の作品?

「自死に不本意な部分はないか」と問われた幽霊側の怒りが溢れるシーン、シンプルなのにめちゃくちゃ恐ろしい描写であると同時に、ハッとさせられる。究極の選択を取ったあとに、その最後の行動は自分の力じゃないだろうなんて認められるはずがない。

全部読み切って、もう一度最初のページに戻ると「あれ?」という独白がより刺さる。めちゃくちゃ色々考えさせられる。

かつて

かつての卒業式の苦い思い出と、その後が描かれる話。

本巻の最後のエピソードにして究極のエモ。これがエモじゃなかったらなんなんだっていうくらいエモ。「エモい」という形容詞が嫌いな人にもっと適切な言葉で表現してほしい。私がこの感情を形容するには語彙力が足りていない。

まとめ

変で不思議で、心地いいような居心地が悪いような、なんとも言葉で表すのが難しいが、買ってよかったと素直に感じられた作品だった。

物語が好きな人にこそ、是非、実際に手にとって読んでみてほしい一冊だ。