テレビ東京にて、5月10日深夜1時53分から放送された異色の番組『イシナガキクエを探しています(2)』についての紹介と感想です。
前回の感想
放送はこちらから
作品紹介と感想
前回放送後、実際に繋がった例の電話番号とその後の実際の返信で大バズしていたり、考察勢も大盛り上がりしていたりと、話題の一作。
昨日深夜は第二夜ということで、どんなスタイルでの放送となるかも謎だったが、引き続き「イシナガキクエ」を探す行方不明者探索・報道系ドキュメンタリー形式での放送が執り行われました。
私はといいますと、リアタイ視聴は出来ず、今回もTVer視聴。配信なかったらどうしよう…とちょっとドキドキでしたが、翌昼頃には配信開始されていました。
今回も、亡き米原さんの意思を引き継いだというテレビ東京が、全力でイシナガキクエを探します。
冒頭には前回電話で情報提供を呼び掛けた後のやりとりも。どうやらあの後の電話、マジでかけていたらしいことを、プロデューサーの大森さんと、作家・ライターのダヴィンチ恐山さんが対談で語っていました。
第二夜は、前回にじっとりとあった不安と気持ちの悪さをさらに加速させて、おぞましいとすら思える体験に仕上げてきています。
廃墟突撃映像と、水中探索映像というハイクオリティな恐怖映像と、なんだか的外れで緊迫感があるようでないスタジオ映像のアンバランスさが、これまた気持ちが悪い。
この感じは、『このテープもってないですか?』で、いつの間にか演者も怪異に汚染されていたあの雰囲気を彷彿とさせました。
しかし、いまだどこに着地するのか全く分からない不安感。イシナガキクエとは、そしてこの番組の意図とは、そんな思考がぐるぐる巡る仕上がりでした。
写真、水中の遺物ときて、もはやこれは『特急呪物 イシナガキクエ』としか思えない状況。前回よりも遥かにSCP地味てきましたね(笑)
果たして、米原さんとテレビ東京が追い求めるイシナガキクエとはなんなのか。これは多分答えのない問いだろうとは思いますし、先述のインタビュー記事の通り、あんまり色々考えるのも野暮というものなのかもしれませんが、嫌でも妄想が捗ります。
残された疑問と最高ポイント
今回も、放送中に気になった点や、凄い!と唸った点をしたためました。
考察というほどではないのですが、ちょこっとネタバレ注意です。
情報紹介パートの不思議
前回の電話の一件のあと、実はテレビ東京から実際に折り返していたという事実を踏まえてみてみると、この音声の主たちは、番組が用意したものなのか、あるいはこの『イシナガキクエを探しています』を見て、脳内で創作のイシナガキクエを見出している人たちなのか、さらにあるいは本気でイシナガキクエを見たことがある人たちなのか分からなくなってきます。
「公園で大きな声で「キクエさん」と呼ばれていた」「ホームに座っていた」なんて、前回と同様のどうしようもないような情報がまた違和感を加速させます。そのあとの祓い屋の話なんてのは、逆にイカニモすぎてなんとも思いませんが(笑)
その後、追加取材の結果ということで、前回寄せられた数々の証言がばっさばっさと無意味なものだったと切り捨てられていくようでした。そして寄せられるさらに無意味そうな証言の数々。
なんでこの証言者たち、ちょっとどっかでぶつかっただけの人とか、言葉も交わさず見かけただけの人のことを、イシナガキクエだと思って情報提供してくるんですかね。本当に不思議で、そこが気持ち悪いです。
場所も時間も問わず、どこにでも現れるイシナガキクエの情報。これらがもしキクエのことなのだとしたら、どうも普通の人間じゃなさそうだという感じが伝わってきます。
出演者の神崎さんが、どんな情報が必要かと問われた時の「見た目、姿かたちも大事なんですけど……」という発言をしたとき。姿かたち、なんて言葉、人に使うか?と思いましたが、これは多分考えすぎかなと思います(笑)
心霊YouTuberキラフ、やるじゃん
今回の第二夜の二本柱の一柱、キラフの心霊スポット突撃映像。
心スポ突撃と言えばゾゾゾだ、ということでそりゃあ期待も高まります。まあ、制作陣がどのように担当しているのかは分からないので、ゾゾゾ皆口さんの影響がどの程度あるのかは不明なのですが(笑)
雪の降りしきる廃村的なロケーションで、家の外からもう既に恐怖度は高まっていきます。POV映像で、光と暗闇のバランスもよくて、マジでどこからなにが出てくるか分からない恐怖感がたまらない。この手の映像の中でもかなりのクオリティだと感じました。
廃墟という割に、妙にきれいにモノが残っている家の中。やけに目につく逆さに吊るされたうちわ、真っ赤な電気紐。もう何もかもが怪しく見えてくるところに、とうとう出てきた例の写真。
もうどうみても禍々しい代物だし、律儀に番号ふってあるところもまた気持ちが悪いし、発想と撮影と編集にあっぱれです。撮影者キラフの「ちょっとボケてんですけど……ちょっと怖くないコレ?」なんて半笑いで言ってるのがマジで信じられなくて最高です。
番号のある写真は、イシナガキクエを収めたものなんでしょうか。30枚以上の、顔が判別できない、服装も場所も変わって撮られる写真群。イシナガキクエとは、特定の人物を指すものではなくて、なにか呪い的なものを受けた人の総称なのではないか、なんて妄想も捗ります。
番号のない写真も、人物や形状が上手く判別できず、ただなにか目隠し(?)をしているようにもみえるような写真でした。番号がないことの意味はなんなのだろうか…。
拾ったビデオカメラの映像もヤバい
中学1年生の上田さんから届いたという謎の映像。中学生がこんな深夜の怪しい番組見てるんじゃありません!なんて野暮なツッコミはさておきまして。こちらも中々の映像でした。
まさにファウンドフッテージ映像という感じのノイズとブレ具合から始まる冒頭。ワイプもないから既にこの時点で怖い! 一切なにが流れるのか、どんな映像なのか、そして映ってる人物が何者なのかもわからないから、このあと何が起きるのか全く予測できないんですよね。
そして、映像は水中へ。ここも、人間の本能的な恐怖なのか、なにも見えない水中というのがまず恐怖をあおります。そして、その先にある、明らかに禍々しい何か。
普通に考えると、イシナガキクエの遺体なんでしょうか。しかし、それにしてはやけに頑丈な、金属製の物体のようにも見えます。ぱっと見、アイアンメイデンのようにも見えたんですよね。その前に遺影のように置かれた写真があるように見えました。
個人的には、写真の顔の部分には17番の番号が書かれているようにも見え、先ほどのキラフの映像の17番の写真とも見比べてみましたが関連性は見いだせず。
ただとにかく、明らかに常軌を逸した異物であるということしかわかりませんでした。
そして、この映像を流すテレビ東京。しかも二回も流す。完全にイカレています。
ちょっぴり考察(妄想)
あんまり深く考えずに……なんていうアドバイスもありましたが、ここまでくるとイシナガキクエとはなんなのか、見せられている映像がなんなのかが気になって仕方がありません。
ここからは完全に妄想なのですが、イシナガキクエとは特定の人物を指すものではないのではないかと思います。番組に集められる情報が散漫としていたりするのも、集合的無意識からイシナガキクエを生み出そうとしているような雰囲気が感じられます。
思うに、水中に沈んでいたあの遺物。あれがまさにイシナガキクエなんじゃなかろうかと。それにいったいどんな力があるのかはわかりませんが、とんでもなく禍々しい力を持つ呪物的ななにかなんじゃないかと想像してしまいます。そのイシナガキクエを作り出すために使われているのがあの写真の女性の遺体だったりするんじゃないかなと。
水中に沈んでいるものがイシナガキクエなんだとすると、米原さんの探し人の紙に書いてあった「会話 できない」というのもなんとなく理解ができる気がしますね。彼が「しゃべれないんじゃないんだよ おとなしいんだね」なんて言ってたのも、なんだか意味が通ってくるような気も。
水中映像を撮っていたBackroomからやってきた感じのある二人組は、明らかにイシナガキクエを狙って撮影しに来ていたと思われますが、その後ビデオカメラだけを残していったと考えると、イシナガキクエの影響を受けてやられたと考えるのが普通でしょうか(レオナちゃんは大丈夫なんですかね(笑))。
キアフが突撃した廃墟の住人は、やはりイシナガキクエの作製に携わっていたのでしょう。女性を拉致してはイシナガキクエを作っていたのでは……なんて妄想も加速します。番号の付いた写真は、既に作成に成功したイシナガキクエ。番号のついていない写真は失敗した、あるいはまだ作成前なのか……。
ただ、ここまで考えてきたときに、米原さんとテレビ東京がイシナガキクエを探している理由がやっぱりわからないんですよね。
米原さんは、イシナガキクエの本質を知っていたように思えますが、彼はなぜああやって憑りつかれたように捜し歩きまわっていたのか。そして、なぜテレビ東京スタッフもその捜索に密着し、特番まで組んでいるのか。
もしかすると、すべてはイシナガキクエの意思によってコントロールされているのでしょうか。忘れ去られた自分を見つけてほしいのかもしれません。
やはり根底に、禍々しいなにかが……。なんて、想像するのもやはり楽しいものです。
まとめ
前回は米原さんの演技の迫力に息を飲む興奮を覚えた本作。第二夜では、写真と水中に沈む物体という二段構えの禍々しいコンボですっかりやられてしまいました。
勢いが落ちてしまうんじゃないかと懸念しましたが、そんな心配も裏腹に、より凶悪さを増していっています。さすがの一言。
さあ続いて第三回は……と期待していますが現時点では情報なし。ぜひ続いてくれー!と念を送りながら、イシナガキクエに思いを馳せたいと思います。