御茶漬海苔著『TVO』(全3巻)を紹介/レビュー。
(購入はこちらから)
※上記は、アリス文庫版の『恐怖テレビ TVO』全4巻のリンクです。当方が読んだものとの差異は不明です。
紹介/感想
私は、Webメディアオモコロ(バーグハンバーグバーグ社)に所属されている、ギャラクシーさんの昔からのファンなのですが、そんな彼があるホラー漫画紹介記事で紹介していたのが、この『TVO』という作品でした。
この記事自体は1年ほど前の記事なのですが、このときからずっと次に買うリストにこの漫画が入っていて、先日ようやく重い腰を上げて購入に至ったのです。
DMMブックスで販売されている電子版全3巻を購入して、読み始めるまでにもまた1ヶ月ほどかかったのですが、今日ようやく読み始めました。
そこにあったのは、まさに地獄でした。
ホラー漫画界の巨匠、御茶漬海苔先生の珠玉のホラー短編集といった作品で、もう醜悪で最悪な話のオンパレード。電子版は過去の単行本の再構成版となっているのか、収録話の順番などが前後しているようでしたが、そのあたりは特に気にせず読み切りました。
ギャラクシーさんが記事で紹介されていた通り、収録作品の殆どは、この世にある様々な「嫌」を詰め込んだという印象で、読むだけで不快感で心拍が早まるほど。でも、圧倒的な迫力でなぜかページをめくってしまう。
力のあるホラー作品は小説でも、読みたくないのに次のページに進まざるを得ないというところがありますが、まさに本作もそんな作品でした。
いやしかし、まさに文字通り「吐き気を催すような邪悪」が連続して登場してくるような本作。とても人に進めようとは思えないですね……。でも、きっとこういう作品を求めている人は一定数いるだろうと信じられる。言葉では形容しがたく、忘れられない体験になりました。
印象に残った話
もうどの話も後味が悪く、最凶・醜悪・最悪・悪辣・嫌悪というような言葉ばかりがアタマをぐるぐる駆け巡るエピソードばかりなのですが、その中でも心に(良くも悪くも)ぐさり、と刃を立てられた作品を紹介します。
CHANNEL-2,3 スクール(前後編)
第一話は恐怖テレビTVOという名を冠するにふさわしい「恐ろしいテレビ番組」というわかりやすいホラー作品だったのですが、第二話のスクールから既に急転直下、テレビのことなんか忘れ去られ、もう最悪も最悪も最悪な話が始まりました。
最低最悪の暴力教師という恐怖を親子二代に渡り、父と子という視点で描き切る作品。こんなの誰にも勧められません。あまりにもやるせない気持ちになる作品。
もし今後の人生で、嫌な気持ちになった漫画ランキングをあげることがあるとしたら、これはきっとTOP3に入ってくるでしょう。
CHANNEL-18 シカトの報酬
いわゆる「イジメ」の話なのだけれど、描かれ方が秀逸。恐怖度という意味では他の話と比べてあっさりしているものの、心情に訴えかけるという意味ではピカイチなエピソードです。
イジメの標的山田。その隣の席で傍観者である語り手・良夫。
ある一件のあと、良夫から山田に「君、なかなかやるじゃん。」の一言。刹那、山田からの視線。
この一連のシーンだけで、数多のホラー漫画がなぎ倒されるくらいの力があります。圧倒されました。
CHANNEL-24 もうやだ‼️
こっちが「もうやだ‼️」だよ!と声を荒げたくなるようなタイトルでしたが、実際読むと「もうやだ……」と意気消沈してしまうような一作。
御茶漬海苔先生が描く、青少年の心を蝕む絶望、あまりにも解像度が高くて、心臓を鷲掴みにされるような緊張感があります。
圧倒的嫌悪が駆け巡る作品ではあるものの、最後のコマで青年のある決意を思わせるコマがあり、やや感傷的になる作品でした。
まとめ
本作を書いた御茶漬海苔先生ですが、片目の失明を理由に作家業は引退の状態とのこと。
ホラーが盛り上がっている昨今、漫画家という形でなくとも、氏の力が必要とされるような場面はあるのではと想像してしまいました。
最近の動向が不明な状況ですが、健やかに過ごされていることを願っています。