Audibleで聞いた本が存外に良かったので、本の内容に従って感想を綴っておこうかと思います。
目を引くタイトルにやられた
私もブログを書いて幾星霜(このブログは1年半くらいだけど)な状態ですが、もうね、わかりまくるんですよ。「おもしろい!」とか「好き!」だけで終わっちゃうこと。なんか好きなんだよなぁって思うけれど、言葉にしたためるほどの感情はわかなくて、結局記事にしなかったことなんて数え切れないほどあります。
そんな悩みに直接アプローチしてくるのがこの本。著者の三宅香帆さんは、めっちゃ同世代なんですが、書評家として既に名を馳せている人らしく、羨望の想いも持ちつつ、言っていることに全くツッコミどころが見つからなくて、悔しさよりも称賛の気持ちが強くなった一冊でした。
基本的には全編通して「推し活」というテーマで、どうやって言葉を見つければいいのかとか、他の人の感想などとどう関わればいいのかというのを教えてくれる本で、「推し活」というファン活動が非常に一般的に認知された今、これが刺さる人はかなりいるだろうなぁと感じます。
でも、実は、この本が言っていることって実はかなり普遍的で、「推し活」というテーマに絞る必要すらなくて、現代の生き方というか、自分の感情とSNSとの付き合い方みたいなのが反映された作品だったような気がしました。
伝え方と受け取り方
なにか自分の感情を言語化しようと思ってもうまくいかない、そういうときに最初に思うのは「語彙力がない」ということなんですよね。なんなら、私もほんの少し前に「語彙力が……語彙力がなさすぎる……!」という感情で書きなぐった「けっきょく語彙力大冒険」という記事がありしました。
でも、この本が言うには、実際にはそうではないと。上手な言い回しや語彙力が必要なのではなくて、大事なのは「自分が良いと思ったのはどこなのか」「なぜそう思ったのか」という感情の根源を深堀りすることで、良い伝え方ができると言います。
まさにその通りだなぁと腹うつ感覚がありました。読んでいて面白いレビュー記事とかって、めっちゃ具体的にどこの描写が、とかって言っているイメージもあるし、「この人はこんなところに心揺さぶられたのか」なんていう事実自体が面白いんですよね。
もう一方で、伝え方と逆に「受け取り方」のことにも言及しているのが良かったですね。
SNSで誰もが簡単に自分の感情を発露できるようになった今、自分が好きな(あるいは嫌いな)ものに対する感想も、簡単に大量に浴びることができるわけですが、自分の感想と向き合う前にそれを浴びてはいけないのだということを語っていました。
私もね、いっぱいありますよ。「これ面白いなぁ!」と思っていたものが、SNSとかレビューで酷評されているのをみて、「そう言われてみるとそんなに好きじゃないかも……」なんて評価が揺らいでしまうこと。きっと世の中の多くの人も、知ってか知らずか、そんな経験無数にあるのでしょう。
その他のケースでも、「他の人も言ってるし言わなくていいや……」とか、逆に「皆とは違う意見だから叩かれるかも……」なんていう不安にもしっかり言及されていて、隙がない作品だと感心してしまいました。
Audible版のナレーション、折原くるみさんの朗読がとにかく可愛い
これは本そのものの内容ではないんですが、オーディオブックの朗読を担当されていたのが、折原くるみさんという声優さんでした。
最初は気づかなかったんですが、後から調べると、ラーメン赤猫でたまこさんを演じていた方らしく、言われて「あぁほんとだ!」と納得。
Audibleの語り口調は好き嫌いが結構出るところではありますが、本書の折原くるみさんの朗読は、結構感情が乗っている感じの朗読。苦手だという人もいるかも知れませんが、個人的には彼女の朗読がどストライクでした。
清楚だけどちょっと元気な感じの女の子が、一生懸命に訴えかけてくるような感覚がして、この人が著者本人なんじゃないかと錯覚するくらいの熱量を感じました。それでいて、しっかり聞き取りやすい(ささざめは3倍速とかで聞いてます)。
こういうビジネス書だと、淡々と読み上げる作品が殆どなんですが、本の内容に合わせてなのか、ラノベ系作品の朗読聞いているときの感覚に近いと感じました。この方の朗読、他にもないかなと思ったけれどまだないようで、ちょっと残念だったのでした。
個人的なAudible推し声優に、斎藤楓子さんという方がいらっしゃるのですが、二番目の推しは折原くるみさんになりそうです。
まとめ
最初は、よくある「伝え方」系のビジネス本だろう、位に思っていたんですが、読んでみると思わぬ良作で満足した一冊でした。
余談ですが、サムネに乗せたのは携書版(新書版?)らしく、別のバージョンもあるようです。中身は一緒みたいなので、もし、ご購入の際はご注意を。