ささざめブログ

さめざめと語ります。日記、エッセイ、短編、感想、その他。

【テレ東】今更見た『飯沼一家に謝罪します』は圧巻のクオリティだった

TXQ FICTION第二弾。テレビ東京にて、2024年末に放送されたドキュメンタリー風ホラー・フィクション『飯沼一家に謝罪します』についての感想です。

配信版はこちらから

youtu.be

  • TXQ FICTION 全話リスト

youtube.com

第一弾に負けないクオリティだった

フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)ホラーで、近年注目を集めている名制作陣が集い制作されている番組、TXQ FICTION。前作「イシナガキクエを探しています」で話題騒然となったのも記憶に新しいなか、2024年末に4夜連続という、これまた異例の放送が行われていました。

前回、感想記事を毎話あげたりしていた私でしたが、今回は年末進行中だったことなどから、心の余裕的にちょっと受け止めきれる自信がなかったため、あとでゆっくり見ようとスルーしてしまっていたのですが、先日ようやく見ることができました。(と言いつつ、実際にTVerで見てからこの記事を書き上げるにいたるまで、更に1ヶ月くらいの間が空いています)

全4話を一気見したわけですが、言葉を失いました。圧巻のクオリティとはまさにこのこと。期待を上回る恐怖と得体のしれない気持ちの悪さをしっかりと見せつける番組に仕上がっているなと納得しました。これは、リアタイで見ていたら興奮しただろうなぁとも思うし、でもこんなの1夜ずつみたら不安でおかしくなるよ!とも思いました(笑)


前作は、悲しい愛の物語のようなものを懸想させられるような結末だったのですが、本作はまた違った感触。見終わった今感じていることは、「怒り」がテーマにあったんじゃないかと思います。

幸せを願った家族たちのいびつな結末が描き出すそれは、確かに恐ろしいものに仕上がっていました。

「理解できない」ことの怖さ

昨今のモキュメンタリーホラーの風潮は、「考察」という言葉が独り歩きしている感じで、そういう特別な見方をしないと楽しめないような気分になってきますが、本作は深いことを考えずに見ていてもコワーくなれる作品。

まず突きつけられるのは、「理解の出来ない気持ち悪さ」なんですよね。

突然始まる、知らない一つの家族に対する謝罪番組というところから始まり、普通に考えたら成功するはずがないチャレンジ番組の存在と、それを超常的な、ヤラセとしか思えない様相で達成していく家族。どれもこれも、なんだかいやな気色の悪さを覚えさせられます。(このチャレンジ番組の気持ち悪さは、同じくテレ東の「このテープ~」で味わったのと同じ感覚かもしれないですね笑)

明らかに良くないものを呼び込んでいそうな儀式や、家族の不幸とその裏にいるある人影など、わけがわからなくて気持ち悪くって、それが恐怖につながるというシーンが満載だったのです。

出てくるテレビ局の人間などの関係者が、みんな他人事な感じでヘラヘラしているのもイヤでしたね~。薄ら寒い感じをたくさん浴びせかけられる前半パートなのでした。

こういう描写って、直接的なびっくり驚かしてくるホラー描写ではないんですけど、精神的にクル。

そんなモヤモヤを抱えさせられつつ、恐怖度での最高潮が訪れるのは第三話。飯沼一家のビデオ映像。ここでも、そこで起きているものや、そこに映る彼らの意図は一切読み取れないんですが、とんでもなく怖い。ただ人間の後ろ姿が映るだけなのに、なんでこんなに怖いのか。必見です。

「怒り」の怖さ

終盤は色々なことが明らかになっていき、明確に答えが与えられるわけでもないですが、自然と起きたことの答えが導き出されるような仕組みになっています。

まあ、最終的には解釈次第というところもあって、そこは所謂考察が捗るところなのですが、それはさておき、ここで描かれた物語の本質はなんだったのだろうかというところを考えてみたくなりました。

結局描かれていたのって、「怒り」の恐ろしさだと思うんですよね。しかも今回に至っては、ある一人の人間の、とてつもない深い怒り。

誰かが怒ってるのが怖いというのは、人間に備わった防御機能だと思うんですが、怒られること自体が怖いんでは無いと思うんです。本当に恐ろしいのは、「その怒りがいつ納まるのかわからない」「その怒りをどうやったら納められるのかわからない」ということなんじゃないかと。そして、本作が描き出したのは、なにが真のきっかけなのかも分からない、一生消えることがなさそうなくらいに燃え上がった憤怒の怒りだったのではないかと。

この怒りを抱く役を与えられた人物、最初こそ飄々とした感じで登場するのですが、だんだん恐ろしくってたまらないんですよね。取材しているスタッフの立場に立つと、肝が冷えるなんてもんじゃありませんでした。

まとめ

前作では「イシナガキクエ」という、怪異の恐怖を味わえたのですが、本作では呪術的・心霊的な要素も含んだものの、どちらかというと「人間」そのものの恐怖を味わわされた気がします。例のあの部屋で起きていることとか、冷静に考えると恐ろしすぎました(笑)

繰り返しになってしまいますが、これを1夜ずつ見た人たち、ほんとよく心が保てたな……なんて感心しちゃいます。

まあしかし、こうもクオリティの高いものを見させられると、第三回が待ち遠しくなっちゃいますね。フェイクドキュメンタリーQの新作も見たいし、近藤亮太監督の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』も見たいし。ドキュメンタリーホラー界隈はまだまだ熱い。


……この流れで、放送禁止の新作とかどうですかね、長江さん。書籍シリーズの映像化とかでも……。なんて妄想いだく、ささざめでした。