ささざめブログ

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【映画】操れないから夢なのだ『ドリーム・シナリオ (2024)』の感想

2024年公開、クリストファー・ボルグリ監督作『ドリーム・シナリオ』を紹介/レビュー。

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紹介/感想

A24!アリ・アスター制作!ニコラス・ケイジ主演!と、映画ファンの目を引きがちな名前が連なり、公開当時は結構話題になってた印象のあるタイトルのドリームシナリオが、Prime Videoに来ていたので、早速鑑賞しました。

ニコラス・ケイジ演じる冴えない小太りハゲ教授の主人公が、なぜだか色んな人の夢に出てくるという事件を描く作品。テーマとしては、実際の出来事である「THIS MAN」の話を、脚色して映画に仕立て上げたものという感じですね。

てっきりホラージャンルなのかな、と思っていたのですが、結論、どのジャンルという分け方に悩む作風でした。

ある意味ではホラーであり、恐怖を煽られる演出もあるものの、コメディ的でもあり、サスペンス的でもあり。そうなってしまう要因は結局のところ、結末が曖昧だからなのかもしれません。

なぜ彼が夢の中に出てくるのか、という根幹の部分を含めて、起きている出来事の「答え」は与えられず、しかも終盤はかなり居心地の悪い思いをさせられて、胸が詰まる作品でもありました。


そんなわけで、酷評も多い作品のようなのですが、個人的には嫌いになれない。

起きていることや、人々の反応は正直荒唐無稽でバカバカしいんですが、ニコラス・ケイジ演じる主人公が描き出す悲哀がとてつもなくて、そこに引き込まれてしまったんですよね。

PhDであり、自分の能力を信じるプライドはあるけれど、実際には上手く行かないことばかりな彼。それが突然時の人として持て囃され、けれど羽目を外しすぎるわけでもなく、ずっと理知的な葛藤を抱えている。そんな姿を見ていると、なんだか、重しを肩にズン、と載せられたような気分にさせられます。

そんな彼が最後に心から願っていたのは。というのがラストシーンで描かれるのですが、そこで描かれたものが美しく、そしてあまりにも哀しさを誘うもので、心に残るシーンとなったのでした。

まあでも、心は沈みますね。そんな映画です。

コントロールできないものへの恐怖

映画でもその名前が登場しますが、エルム街の悪夢のフレディがそうしたように、「夢」という場所は逃げ場のない恐怖を描くのに最適な題材ですね。

本作でも、夢で起きていることだからこそ、原因もコントロールの仕方もわからず、本人の意思ではどうにも出来ないことによる理不尽な恐怖が描かれました。

それを増幅するために利用されるSNS・インターネットミームという存在も、「アンコントローラブル」なものに対する恐怖を演出するために活用されたという印象を受けます。

結局、「自分じゃどうにも出来ないこと」って怖いよなぁ、と。そんなことを改めて感じさせられる作品でした。

まとめ

一体どこに着地するんだ!とワクワクしながら見ていたけれど、最後はあっさり、消化不良気味に終わってしまう一作でしたが、ニコラス・ケイジが醸した哀愁が心に刻まれた作品になりました。

……まあ、人に勧めようとか、もう一回見ようとは思わないですが(笑)


(余談)

子供の頃、エッチな夢が見たくて、家にあった女性下着カタログを枕の下に忍ばせたこともある私ですが、いまだに夢の中で自由に動けたり、狙った夢を見られたりしたことはありません。

30も越えた今でも、エッチな夢を見たいなぁ、なんて思っているささざめでした。