
甘沢林檎 原作、野口芽衣 漫画『異世界でカフェを開店しました。』を読んだので、感想・レビューを書きます。
※eBookJapanさんの、25周年記念で1日限定無料公開されていたものを一気読みした感想です。(現在は無料公開期間終了しています)
(購入はコチラから)
紹介・感想
お料理知識で異世界を無双するタイプの作品は、旅する料理人のパターンと、お店を開くパターンと、王宮に雇われるパターンがあると思います。
で、本日のタイトル、『異世界でカフェを開店しました。』の場合はと言うと、タイトルの通りお店を開くパターン。ある日突然異世界に転移してしまった主人公のリサが、最悪の食事情をもつ異世界に、お料理文化革命を巻き起こすべく、カフェおむすびを開店し、悪戦苦闘する物語です。
主人公自身には特に目立ったチート能力があるでもなく、とにかく只管に好きな料理を、精霊や周囲の人々の力を借りながら手に入れた食材で再現してレパートリーを増やしながら、関わる人々を笑顔にしていく、ファンタジー・ドラマな作品に仕上がっています。
一応魔法などの要素も登場はするのですが、メインとなる調理技術や食材たちは現代に準ずるものなので、そういうシステム的な部分の面白さは控えめ。
一方で、少しずつ私達の食事が異世界で浸透していく様とか、問題をお料理で解決する手腕とか、各キャラクターの丁寧な心情描写とか、見どころはたくさんある一作でした。
もちろんラブコメ要素も提供。まあ若干、近いところでくっつきすぎじゃない?っていう感じはしなくもないんですが、こればかりは仕方ないですね(笑)
みんなが主人公、みたいな作品
序盤はもちろん主人公のリサさんの視点がメインにはなるわけですが、既刊15巻分も続いている物語なのもあって、章によってクローズアップされるキャラクターが変わってきます。群像劇……とまではいかないかもしれませんが、それくらい感情移入できるキャラクターが揃っているというわけです。
個人的にやはり好きなのが、ヒーロー役となるジークくん。騎士団を抜けてカフェ店員になる思い切りの良さがありつつ、冷静沈着で湿り気の少ない男なのに、優しくて暖かみもある。そんな彼が、リサに対する思いに気づく流れとか、その他もろもろ、とてもぐっと来るシーンが多いんですよね。
カフェおむすび最初にして最大の危機の原因ともなった少女・ヘレナの成長ぶりも見どころで、既刊終盤の範囲では、彼女にまつわるエピソードがメインになってきます。ここも、とても感動的なシーンが描かれて、なんだか親目線になっちゃうお話に仕上がってました。
中盤から始まる、学院編でメインキャラクター的なポジションとなる、貴族のルトくんも、孤児のハウルくんとの友情話が熱くてとても良かったのでした。
その他、どのキャラクターも、それぞれに感情移入できる魅力がたっぷりなところが見どころなのかな、と思ったのでした。
まとめ
「カフェを開店」というテーマだけで15巻も、一体どうやって……?という興味もありつつ読んでいくと、そこにいたのは、めちゃくちゃ有能だけど多忙で手広くやってる主人公たちがいた一作でした。
どう考えても、その規模ではやっていけないのでは……と心配していたところに、ようやく人員追加が来て一安心か、と思いつつ、いやいやそれでも絶対足りないだろ、と思っていたりするささざめです。余計なお世話ですね(笑)
お料理系作品のなかでも、かなり真面目にお料理をする作品なので、誰にでもオススメしやすい一作です。
ちなみに、ラブコメ要素はかなり控えめ。基本はさっぱり、でも大事なところは甘々、っていう感じで、コーヒーを飲みながら食べるケーキみたいな感じで、甘すぎずサラリと楽しめる一作なのでした。
