ささざめブログ

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【映画】亡者と話せる魔法のおてて『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー(2023)』の感想

2023年日本公開、ダニー・フィリッポウとマイケル・フィリッポウ監督作『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』を紹介/レビューします。

紹介/感想 (なるべくネタバレなし)

2023年の公開当時、結構SNSで盛り上がっていた印象の一作。

北米配給が、ヘレディタリー/継承、ミッドサマーなどでおなじみのA24で、そのA24ホラーの中でも最高収益、という宣伝文句で日本にはやってきている。まあ正直、A24の名前つけてホラー出せば何でも売れる、みたいな時期でもある気がするので、果たしてその内容に反映されている指標であるかは甚だ疑問だったりします。

内容はというと、ビビッドなビジュアルの「手」のオブジェをフィーチャーした、降霊術をテーマにした、心霊系サイコ・ホラーといったところ。

主人公のミアは、母親を無くした黒人の女子高生。懇意にしている同級生(?)の少女・ジェイドと、その弟・ライリーの家に寝泊まりする彼女が、ジェイド・ライリーとともにとある「降霊パーティー」に参加。

そこで登場した、手のオブジェ。それを握り、"Talk to me"と言えば霊の姿が見え、さらに"I let you in"と言えば、霊が自分の身体に入りこんでくる体験を味わうことができる。主人公はそんな体験にのめり込んでしまうが、もちろん、何も起こらないはずはなく……。

という感じでスタートする物語なのでした。

めちゃくちゃ絶賛されてる映画ではあるものの、個人的にはややNot for meな一作。キャラクターに感情移入しにくいタイプの作品で、ストレス耐性が結構必要かもしれません。

ただ一方で、件の「手」を使ったシーンや仕組みはよくできているし、ホラーとしての緊迫感は一級品でした。というわけで、ティーザーを観て、「手」に惹かれた方はぜひ観てみては。


以降、ネタバレありで感想を述べます。ご注意ください。

一家に一手(ほしくない)

とにかく目を引くあの「手」のビジュアルはとても良かったですね。

劇中で説明されるのは、防腐処理をされた実際の人間の切断された手であるということだけなんですが、それをわざわざ握り込むことで、幽霊と会話可能になって、さらにそれを取り込むことができる。降霊を終えるには手を離さなければ行けないと。

まあぶっちゃけてしまえば、死者との交信というテーマですし、これっていわゆるウィジャボードもの。日本で言うこっくりさんみたいなもんだよなぁとは思います。

しかし、こっくりさんの十円玉は、指から離せばいいだけですけど、こっちは握り込んじゃってますからね。そう簡単には外れませんよ、ってな演出も楽しめるわけです。

そんなわけで、この手を使ったシーンは、どれもかなり緊迫感があって、でもどこか滑稽さもあって、絶妙なバランスで描かれていてとても良かったところでした。

まあただ、手が活躍するシーンは映画序盤がメインで、中盤以降は手自体の活躍は少ないのが残念な気もしますが……。

イライラまったなし

ティーンが主人公だと、未発達な心の機微により生み出されるジレンマみたいなのが映画的に利用されたりすることは多いと思いますが、それにしたってイライラするのが本作でした。

こんなに邪悪な主人公を見たのは久々だよ、っていうくらいの邪悪さ。イービル。お前が悪魔か。という感じ。

自分の利益のためなら、他人にどんな損害を与えても構わないという感じの主人公で、もう終始イライラしちゃいました。

まあ、ホラー映画のキャラクターなんて、理解不能な行動を取るのが定番なわけですが、そういうのってスラッシャーホラーとかとの相性が良いと思うんですよね。

この手のサイコホラーは、ある程度の「避けようがなかった」という納得性があるほうが良いと思うんですが、特にあの、自分が母親と話したいがためにライリーに90秒を超えて手を握らせるところと、その後のムーブは理解しがたい。

展開として、ライリーの母から締め出されるシーンで、たいていこういうシーンって、視聴者視点だと「違うんだよ! わかってくれよ!」みたいな気持ちになるのが普通なんですが、初めて「ママがあってるよ! そいつが全部悪いからぶっ飛ばしていいよ!」って教えてあげたくなりました。

まとめ

主人公の動きにとにかくイライラした作品ではあったものの、ラストは途端にあっさり。

しかもちょっとスッキリ展開も用意されているので、意外にも鑑賞後感はそんなに悪くなかったですね。

だからこそ意外とみんな高評価つけてるのかも。……でもやっぱり個人的には好きにはなれない一作でした。


悪いところばかり書いてしまいましたが、いいところももうちょっと掘り下げると、降霊からの頭を打ち付けるシーンは、ホラー映画の定番演出ですが、やっぱり衝撃的でナイスでした。

あと、ライリー役のジョー・バードくんの薄幸少年感がとても良かったのと、降霊パーティーを主催してるヘイリー役、ゾーイ・テラキスの中性的な雰囲気と悪ガキ感があるのにどこかいい奴っぽさも漂わせる雰囲気が個人的には刺さったところでした。


ぶっちゃけていえば、おバカなティーンに翻弄されるタイプの作品なわけですが、多くの人を魅了したらしい演出を期待して観てみてはいかがでしょう。というところでこの辺で。