
TXQ FICTION第四弾。テレビ東京にて、放送された『UFO山』の感想です。
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過去の感想
紹介・感想(なるべくネタバレなし)
フェイク・ドキュメンタリーホラーとして、時代を代表するシリーズとなりつつある、テレビ東京『TXQ FICTION』シリーズ。
前回の『魔法少女山田』は、キャッチーなタイトルとビジュアル、第一夜ではトム・ブラウンが出演するコメディロケパートがあるなど、インターネット上ではかなり話題を呼んだ印象でした。そして、そこから先に待っていた、とんでもないラストは、忘れたくても忘れられないものに。
まだそんな興奮、あるいは絶望が覚めやらぬ中、年末のクリスマスという、世間も浮かれきったところに、目を覚ませと冷水をぶっかけんが如く放送された、TXQ FICTION第四弾『UFO山』。なんとも間抜けな響きのタイトルで、しかも「UFO」という、個人的にはあんまり好きではないし、気持ちも踊らないタイプのタイトル。
しかし、これまでのシリーズ作とはまた違った様相で、ゆっくりと着実に、精神を削り取られるような映像が繰り広げられ、最後には持っていきどころのない感情が胸の中に渦巻く一作でした。
テーマは、タイトルの通り「UFO」。
放送は、かつて冬の雪山で不審死を遂げた、「市民登山家」を名乗る男・蜂谷さんの死の真相を追うドキュメンタリーとして進んでいきます。
相変わらずクオリティがむやみやたらに高い、過去のTV映像パート。今回はこのパートがかなり大部分で使われるのですが、どれも本当に放送されたものと見紛うほどの真実味を帯びていました。作品の本質とはちょっと異なる部分ではありますが、細部のリアリティの凄まじさは必見です。
蜂谷さんの死を追うにつれて、明らかになってくる「UFO」つまり、宇宙人・未確認飛行物体といった、言ってしまえば「胡散臭い」と言いたくなる情報の数々。
視聴者の心を手球に取るように、「バカバカしい」と思わせられたり、「本当なのかも」と疑う気持ちを抱かせられたり忙しまま、新たな事実が少しずつ明らかにされていきます。
最終的に提示される、この死の真相。明確な答えこそ与えられないものの、今回は「選択肢」が視聴者に対して明確に与えられた気がしました。そして、そのどれを取っても、もうどうしようもないじゃないかと虚無感が胸に襲いかかり、とにかくもやもやと言い表せない感情が胸に去来するばかり。
一つだけ言えることがあるとするならば……、
こんなもんクリスマスに放送するな!!
という言葉かもしれません(半分は褒めています笑)。
以下からは、ネタバレを気にせず、思ったことをつらつらと書いてみようと思います。
「信じたいものを信じる」ということ
今回は、全編通して、「人間は信じたいものしか信じない」というようなテーマがあったように思います。
冒頭で繰り広げられる、討論番組の構図なんかはまさにそうで、UFO肯定派と否定派が真っ向からぶつかりあって、互いに一切折れない。ここから既に、人の信じる心の「怖さ」みたいなものを少し感じます。
私なんかは、正直に言えば完全なる「UFO否定派」側の人間で、UFO肯定派の意見なんかは、見ていても「何をバカな」と一笑に付してしまうタイプの人間です。
でも、私は私で、そうやって、「UFOなんてない」という言葉の方を信じたいから、そっちしか信じようとしていないんですよね。熱心に、「UFOがいる」という事実を否定するような証拠ばかりを探そうとしてしまう。そうやって目が曇ってしまうことって、結果的に「盲信」という言葉に繋がっていくもので、何かを信じるということにはそれくらいのエネルギーというか、危険性があるものなんではないかと思っています。
作品が進んで、蜂谷さんが、UFO前衛科学なるものに傾倒していたらしいことがわかってきてすぐ、「きっと彼は、UFOの実在の証明のために自殺したんだ!」と私の脳内では半ば決めつけにかかっていました。
それを後押しするかのように登場する、研究会元メンバーの石井さん。彼の言葉で更に「ほらやっぱりね」と、私の信じたものが補強されて安心が形成されていきます。
そして、最終夜に登場する、蜂谷さんの最後の映像と、蜂谷さんの息子・吉岡 空さんの問いかけ。ここで、自分の信じてきたものが揺るがされます。明らかに手ブレする最後の映像は、蜂谷さんが一人きりでないことを示唆するもの。
ここで、自分が信じてきた物語は少し誤りがあって、実はこれは他殺に近しいような事件だったのではないかという発想に。しかし、そのことについて問いかけられた空さんの反応は、思いもしないものでした。彼の反応は、そこに"人"の介在を疑っておらず、父は宇宙人に会うという目的を果たしアブダクションされたのだと主張。
ここのやり取りは、最初、薄ら寒い恐怖を感じるものでした。しかし、最後のメールの文章と映像で、その印象は一転して、あまりにも悲しい物語に転換。
「あれはきっと人の手が」とか、「宇宙人なんているわけが」みたいな主張は、もはや空さん相手には意味がなく、そこにかけられる言葉は、ただ本当に、父の願いが成就されたのだろうと信じてあげられることなのだろうと。
そんなわけで、個人的に本作一番の見どころは、空さんのインタビューでしたね。
先述の通り、思っていた人物像とは全然違って、飄々として掴みどころのない人物。いちいち分かりきったことを「あなたはどう思います?」なんて、問いかけてくるうざったさが鼻について、どんどん印象が悪くなっていった人物でした。
ただ、それが最後のメールと映像で、180度印象が変わるんですよね。彼は、自分の一言が父を殺してしまったかもしれないという幻想に、今もずっと囚われ続けていて。自分がすがるように思っている「父は宇宙人にアブダクションされて願いを叶えた」「あれは別人だった」という考えを肯定してくれる人を探している。
しかも、来る人を選別して、本当に信用できると思った人を選んで、ようやくそこまで話すというところに、彼の本気を感じるんです。
最後の映像を見たあと、私は彼に、「宇宙人なんていない」と、言えるだろうか。そう思うと、ぐるぐると思考ばかりが巡って、答えが出ないのでした。
それはそうとして真相は?
結局のところ、作中では答えは明かされなくて、「あなたが信じたい結論を信じてください」みたいなことなのかな、と思っています。
与えられたヒントは、シロクマ、大学生の連続自死、UFO前衛科学、当日山に登っていた他の人物の存在など。色々あるものの、果たして本当にそれら一つ一つに関係性があるのか、そして明確にこうだと言い切れるほどの証拠や推理は出てきませんでした。
なので、これはあくまで個人的に「信じて」いることなんですが、やはり私としては蜂谷さんは研究会のメンバーに殺されたと見るのが自然だと思っています。というか、とにかく元メンバー・石井さんが怪しすぎるんですよね。
第三夜のインタビューでは、蜂谷さんのことを「本物になりたかった偽物」とまで評し、「一人で雪山に入るのも自殺行為」だなんて言っておきながら、第四夜では「実は直前まで一緒にいた」「彼は登山に慣れているから一人で行くのを止めなかった」と答えるのは明らかに矛盾を孕んでいると思います。良い印象を持っていない蜂谷さんが写った写真。しかも、その日彼が死ぬというその直前という写真。それを手帳に入れて持ち歩いているという行為も理解が出来ません。
でも、こうやって思ってしまうのは、「この事件は人為的なものだ」とか「石井さんの言動が怪しいからきっとなにか知っているはずだ」と、私自身が「信じたい」から、そう思考が誘導されているだけなのかもしれません。
また思考が巡るばかりで、やはり答えは、出ませんでした。
まとめ
ちょうど名探偵津田とかSASUKEとかに被っていたのもあって、少し埋もれてしまった感覚のあったUFO山(実際私も、リアタイは出来ず、翌日拝見しました)でしたが、そのパワーは相変わらず凄いものがありましたね。オクラホマ河野さんが出てきたパートとか、色々とリアルで最高でしたね(笑)
前回の『魔法少女山田』が鮮烈だっただけに、やや地味な感触こそ否めませんが、いつもよりサスペンス感が強かったり、悲劇的すぎず、でもそこはかとない物悲しさとかやるせなさを感じられる一作だったりして、これもまた唯一無二だなぁと思わさせられました。
フェイクドキュメンタリーホラー界隈は、このTXQ FICTIONやフェイクドキュメンタリー「Q」の盛り上がりによるものなのか、このジャンルの日本における原点的作品『放送禁止』の新作も決定したとのことで、とても嬉しく思っています。
来年も、是非色んな作品を見たいなぁとおもっているささざめでした。