ささざめブログ

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【小説】真実は、いつも苦く『五つの季節に探偵は』の感想(Audible版)

逸木 裕作『五つの季節に探偵は』をAudible(Audio Book)で読んだので、感想・レビューを書きます。

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紹介・感想

まもなく(一旦)退会予定のAudible。(おそらく)最後に聴くこととなったのがこの『五つの季節に探偵は』でした。

タイトルから分かる通り、探偵モノ。ミステリー。

でも、人が死んでとか爆弾がとか、そういう劇的なものじゃなくて、もっと日常に近いタイプのミステリーでした。

主人公となるのは、榊原みどりという女性。女子高生である彼女が、探偵という職業に目覚める2002年・春から、私立探偵として現役で働き続けている2018年・春までの、年月を超えた五つの季節を舞台にした短編集となっています。

一つ一つの事件は大きくはないけれど、どれも緻密に構成されていて、謎が解けた瞬間にそれまでの想像が突如として覆される瞬間はたまりません。まさしくミステリー小説。

ただ、それ以上に本作の特徴となるのは、その作品の多くが、とにかく苦い後味を持っていること。

「真実を追う」という、探偵の天性のようなものを自分が持っていることに気づいてしまった主人公のみどりは、全てを詳らかにしたいという、半ば脅迫めいた信念を持っていて、だんだん狂気的に思えてきます。

その性質が最もわかりやすく出るのが、第三章「解錠の音が」。大きなトラブルまで巻き起こしつつも、それでも止まることなく真実を知るために走り抜ける。

この章のラストは、読んでいて、「この女、いかれてやがる!」と笑みがこぼれるもので、とても好きでした。

読後感はあまり良くない

先程から書いている通り、基本的にビターな終わり方ばかりするので、基本的に読後感が悪い。モヤモヤします。

主人公が抱える、呪いのような性(さが)が、どこか読んでいるこちら側にも降り掛かっている気がして、ちょっと辛くなるようなシーンも。

ただ、終盤で救いのようなものはあるので、一冊読み切ったときは少し心が晴れるかも。

私は最初、2章まで聴いて止めてたので、暫くの間すごくジメッとした感覚が心に残りました(笑)

まとめ

フィクション的な探偵ではなく、いわゆる「興信所」「探偵事務所」のような、現実的な探偵業がテーマになっている小説を読んだ(聴いた)のは初めてだったので、少し新鮮さを覚えました。

よくあるミステリと比べたら、ワクワクする感じは少ないものの、真実が暴かれたときの驚きはより現実的に、深く衝撃を感じさせられる一作でした。

謎があったら解かずにはいられない、すべてが解き明かされるまで読み進めずにはいられない。そんなあなたはぜひ手にとって見てはいかがでしょう。