
TXQ FICTION第五弾。テレビ東京にて、放送された『神木隆之介』の感想です。
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過去の感想
紹介・感想(なるべくネタバレなし)
あまりの多忙で、まったく時間的にも精神的にも、見る余裕がなくて先延ばしにしてしまっていた、TXQ FICTION最新作『神木隆之介』。
TVerでの一話配信が終了してしまい、一話はYouTubeでのみ公開の状態になったわけですが、4/6には第二話もTVerから配信終了してしまうと気づき、慌てて視聴しました。
今回も、四回に分けて放送されましたが、これまでとはまた違った試みが。
言わずもがなですが、そのタイトルの示す通り、主演となるのは「神木隆之介」本人。
本シリーズではこれまでも、現実世界の人物たちが本人役で登場しているものの、本作は主軸の部分にこの現実世界に存在する「神木隆之介」という存在を据えて、彼が作る「フェイクドキュメンタリー」を追いかけるという構図で進行していきます。
元々難解なところの多いシリーズですが、今回はまたひねりが効いていて、そのフェイクドキュメンタリーの構造が多重に構成されていて、何が真実で何が虚実なのかが何も判断できなくなっていく。
第一夜でのこれから何が展開されていくんだろうという不安、第二夜・第三夜で謎解きが進行していくワクワク、そして第四夜で叩きつけられる謎、困惑、気持ち悪さ。
「神木隆之介」という、慣れ親しんだ存在がそこにいるからこそ味わえるものがそこにあって、現実世界の我々観客に与える混乱が、より一層増幅されているように思いました。
昨今はちょっと「フェイクドキュメンタリー」という言葉が悪目立ちしている印象があって、それだけで嫌悪を示す人もチラホラ見かけます。
特に、TXQの前作『UFO山』は、シリーズの中でもやや異色で、抽象的というか、掴みどころが少ない作品だったのもあって、本作に対してもやや厳しい反応が見受けられたような感触は、公開当時SNSを流し見していると感じたところではありました。
ただ、実際見てみると、そんなのどうでも良くて、普通に単体のドキュメンタリーホラーとして面白い。表層的に見たときの展開の良さと、最後に提示される謎、その奥に見える違和感と導き出される真実のバランスが良く出来ていて、最後までみるとすぐもう一度第一夜を見返したくなる。そんな仕上がりになっていたんではないでしょうか。
とはいえ、やはりこのジャンル全体が抱えている「鑑賞すること自体の難しさ」みたいなのがあって、これが楽しめるかどうかはきっと人によるのだろう、とも思います。
なんにせよ、これまでのシリーズを楽しんでいて、もしまだ見ていないのなら、是非見てみてほしい一作でした。
以下からは、ネタバレを気にせず、思ったことをつらつらと書いてみようと思います。
俳優・神木隆之介
神木くんって、実は私にとって、ちょっと親近感を覚える存在。
実は私、彼と同い年で、誕生日も近い(20日程度しか離れていない)んで、多分、ほぼ同じ時代を生きてきたんですよね。
とはいえ、もちろん、私と彼とじゃあ生きてきた場所があまりにも違いすぎるわけですが、私が子供の頃、TV越しに、同じく子供である彼の姿を見て、彼(と、あと志田未来ちゃん)の活躍をみると、なんとなく応援していたんです。
そんな、近いようで、でも雲の上のような遠い存在の彼が、自分の好きな「ドキュメンタリーホラー」というジャンルに関わってくるというのは、またさらに親近感を覚えるというか、どこか通じ合うものがあるように感じてしまいました。
でも、そんな気分に冷水を打ってくるのが、第一夜で出てくる以下の文章。
フェイクドキュメンタリー
ドキュメンタリーの形式で作られた「フィクション」
事実のように見えるが登場人物や出来事は全て演出
つまり、そんな風に勝手に親近感を覚えたけれど、これも結局はフィクションなわけですよ。
ここに、今作での本当の恐怖が隠れていると思っていて、今回は「そもそも何が真実なのか」っていう問いかけが主題なんではないかと。
そういう意味で考えていくと、俳優・神木隆之介が主役であることに、強烈な意味が乗ってくるんですね。
神木くんは、劇中に登場する「てるちゃん」と同じく、幼少から子役として活躍し、今に至るまでずっと「神木隆之介」として世に出続けている。
そのルックスも相まって、彼の演じる役は多くが善玉(ベビーフェイス)なキャラクターが多い印象で、彼自身もきっとそういう人間性なのだろうと、勝手に思ってしまっている自分がいます。
でも、そもそも俳優という職業は、本来の自分を表に出さず、「役」を表現するという職業。言ってしまえば、これは「フィクション」を作り出すという仕事なわけです。
幼い頃からずっとフィクションを作り続けた彼が、「神木隆之介」として、TVの中でフィクションを作る。そもそもこの構造こそが多重のフィクションになっている。
そして、作中ではさらにフェイクドキュメンタリーホラーを作るというフィクションが表現され、さらにそれ自体もフィクションで……といった具合に、そもそもどこに真実があったのかがわからなくなっていく。
役者に限らず、衆目の目にさらされる立場になると、きっとそういう恐怖ってずっとつきまとってくるんだろうと思います。
本来の自分じゃないものを自分に当てはめられて、勝手に自分がフィクションの中の住人にされていく。そんな恐怖が本作には隠れている気がします。
このフィクションの中の「神木隆之介」は、そんな恐怖の中で、一種の「救い」を求めているんではないかと。
なぜ彼があの映像を自らの30周年イベントで流したのか。なぜ、フェイクドキュメンタリーホラーとして撮影を続けたのか。
フィクションを演じ続けた彼は、あの涙の瞬間、何を演じ、何を演じていなかったのか。そんなところに思いを馳せると、脳が理解を拒絶していくのでした。
まとめ
第四夜の展開で、大きく覆される作品だったため、事実の考察よりも、作品自体の持つテーマの部分を考えるのが楽しい一作でした。
実在の人物が主軸となるフェイクドキュメンタリー、『山田孝之の東京都北区赤羽』とか、『カルマの木』とか、好きな作品がいくつかあって、本作もそれに名を連ねることとなりましたね。(前者2つはホラーではないけれど笑)
あと、見過ごしがちだけど、あのてるちゃんハウスのロケーションが最高でしたね。一階のTHE廃墟っていう雰囲気に対して、比較的新しくみえる、壁にかけられた洋服類と、リフォームが施されているように見える二階。このちぐはぐ感が余計に気味が悪く、展開が読めなくなった要因の一つだったのでした。