ささざめブログ

さめざめと語ります。日記、エッセイ、短編、感想、その他。

【エッセイ】理想の自分とのギャップを抱きしめる

 いくつになっても、他人の成功が妬ましく思えるし、幸せそうなカップルを見ると吐き気を催す。子供たちの騒ぎ声も耐え難く感じる。こんな自分が大人として恥ずかしい。同じような感情を抱える人が他にいることもわかっているのだが、それでも、自分が望んだ大人像とのギャップに嫌気がさす。

 釈迦は、「一切皆苦」と言った。全てが思い通りにいくわけではないということだ。望むような自分になれないのは、当然のことなのかもしれない。きらびやかな輝きを放つような生き方を夢見たけれど、そんな風には自分は生きられないようだ。なんど、そうやって自分に言い聞かせてもやはり自分の醜さを簡単には受け入れることはできない自分がいる。

 

 理想の大人になれないまま、歳を重ねる。どんなに抗おうとも、時間が過ぎるほどに、理想は日々遠ざかり、ついには心が折れてしまう。そうなる前に、今の自分を受け入れることが大切なのだろう。

 なりたい自分と現実の自分、そのギャップには、「自分らしさ」が隠れているのではないだろうか。自分の中に湧く汚れた感情、嫉妬、反感、嫌悪――これらは人間らしい感情であり、自分らしさの根源なのだ。それを誰かにさらけ出すことは望ましいことではないかもしれないが、少なくとも自分自身はそれ受け入れることで、ようやく自分自身と向き合える。そこにこそ、自分の、人間としての面白さが詰まっているのだ。

 

 もちろん、自分の中にある汚ない感情を自分らしさだと受け入れるのは簡単ではない。でも、それを受け入れる勇気を持つことは、成長への第一歩だと思う。自分らしさを知り、自分に合った成長の仕方を模索しながら前に進むことが、理想に近づくための数少ない道の一つなのだ。

 今日もまた、どす黒い感情を抱えながら日常生活を送る。あの頃想像した自分の姿とは少し違うかもしれないが、それが自分なのさと笑い、前を向く。