テレビ東京にて、5月17日深夜1時53分から放送されたTXQ FICTION『イシナガキクエを探しています(3)』についての紹介と感想です。
20240522追記
TVerで第四話が5/24夜8時からあるそうです。TVerでオマケのパターンがあったか~。嬉しいですね。
大森時生らが手がけたテレビ東京の #イシナガキクエを探しています。テレビ放送は第3話で終了したものの、TVerで第4話の配信が決定。本記事内に最新のコメント、画像を追記公開するーー。https://t.co/jizK5DZhHc
— Forbes JAPAN (@forbesjapan) 2024年5月22日
以下は、これで終わりと思ってる感想です。(追記終わり)
前回までの感想
放送はこちらから
作品紹介と感想
まずはネタバレ控えめに感想を。
話題の渦は収まらず、幅広い層に楽しまれていると思われる、フィクションホラー、TXQ FICTIONの第三夜・イシナガキクエを探していますの完結編がとうとう放送されました。
この楽しかった日々も終わってしまうのかという寂しさ抱きながら視聴しましたが、先週までの見え方からがらりと印象の変わる第三夜は、『放送禁止』シリーズで真相を知った時のような驚きがあり、最高の回でした!
疑問と疑念を与えた第一夜、一気に気持ちの悪さ・異形への恐怖を煽った第二夜、そしてそれらの答えを一部示した第三夜と、完璧な構成だったのではないでしょうか。
これまでのテレ東・大森Pがチャレンジしてきた『このテープ~』や『祓除』と比べると、レベルアップした感じを明確に覚えた一作でした。
もう、これはとりあえず第三回まで一気に見切ってほしいですね!
番組冒頭は、前回までと違ってスタジオにアナウンサーたった一人。まさか他の出演者たちに何かあったのか、と緊張感が一気に高まります。そして始まるVTR。
以前の『このテープ』でもあった、過去のTVバラエティ番組の再現っぽい映像。前回は登場するキャストの雰囲気が現代的すぎるという批評もありましたが、今回はまさにその頃の雰囲気を感じさせる出来栄えに、まず感心。
そこに登場した、若き日の米原さん。一見、このころからずっとイシナガキクエを探していたんだな、と思わせておきつつ、終盤、これまでの見え方をガラリと変化させる一言が聞こえます。
うわぁなるほど!そういうことか!とここで膝を打ちました。この一言を聞くと、第一回で米原さんがTVクルーに言った言葉の意味が理解出来てきます。
続いて、米原さんの真意を探るべく、新たな人物に取材を行います。ここでも、若き日の米原さんがコンタクトを取っていた相手が明らかになり、彼らの目的の一端が見えます。
ただし、多くは語らず、気づけば放送時間も残りわずか。想像の余地を多数残しながら、エンディングを迎えてしまいます。
最後はあるニューズ映像で締めくくり。ここは『奥様ッソ』のオマージュかな、とも思わせる演出で思わずニヤリ。
そして明かされる米原さんの死に関するとある事実。意味深なカメラワーク。果たしてそのとき、彼の身になにがあったか。そこは視聴者の想像の中にゆだねられた形となったのでした。
そんなところで、番組は終了。最後まで怪異らしい怪異を直接的に殆ど見せず、ありがちな加工は一切見せない真っ向勝負な一作でした(もちろん、恐怖度を煽るための演出というのは多分にあると思います)。
第三夜で、物語の真相への道筋を示しつつも、明確な答えにはたどり着けないようなシナリオもばっちりで、妄想が止まらなくなる結末です。
イシナガキクエとはなんだったのか。テレ東の思惑はどこにあったのか。そこを考えるだけでも小一時間は楽しめる一作でした。痺れた!
真相を妄想する(ネタバレ注意)
ここからは、第一夜~第三夜を受けての、個人的な考察です。考察といっても、あくまで妄想ですので、まあ話半分くらいでお楽しみいただければ。
米原さんとイシナガキクエの関係性
どうやら、米原さんはイシナガキクエという人物に「会いたかった」わけではなかったようです。第三夜の内容から、彼はずっと「イシナガキクエがもうこの世に存在していないことを証明するために、イシナガキクエを探し続けていた」ということが分かります。
なぜ彼が、あんなにも彼女(?)に執着していたのかは一目瞭然で、死ぬ間際、あのインタビューの間もずっとイシナガキクエの影に怯え苦しんでいたのでしょう。もし見つかってしまったら、また「処理」しなければいけない。
それでもあくまで表面上は「仲のいい知人」を探している風だったのは、なにかイシナガキクエに関する制約によるものなのか(TV番組の都合の悪い部分にノイズが走っていることなどから、キクエに不都合な情報が改変されてしまうのか?)、あるいは、過去キクエを探していたときの経験からふるまいを改めている(信用してもらうために、あくまで人探しを演じている)のか。どちらなのかは不明です。
ただ、第一夜の最後、あの迫真の表情で「本気なんだな?」とテレ東スタッフに見せたあのシーンは、「このことを本気で受け継ぐ気があるんだな?」という意思確認だったのだろうということは明確です。
イシナガキクエとはなんだったのか
この部分は、番組の中で語られた情報からは読み取り切れませんでした。ただ、語られた事象の節々から感じられたのは、どうもそれが存在すると世の中にとって(少なくとも米原さん・乙さんたち)にとっては、明らかになにかよくないことが起きるものであろうということ。
最初の密着の時は、米原さんはあくまでキクエのことを「仲の良かった知人」という風に語っていましたが、第三夜の過去の生放送番組の部分や、電話音声などからは「~体」「処理する」という言葉が聞かれ、どうもそれが単なる人ではないだろうことが分かります。
第二回で感じたようにやはりイシナガキクエとは「なにかしらの呪物」あるいは「人ならざる怪異そのもの」であり、この世にあってはならない存在なのでしょう。そしてそれは、何体も処理(退治)しても、なかなか駆除できないという性質を持つ。このあたりは、リングシリーズの「貞子」のオマージュかもしれませんね(まあ、強い怪異というのは往々にして消しても消しても消えないものですが笑)。
この知らず知らずのうちに増殖している、というような恐怖は、テレ東のこの特番『イシナガキクエを探しています』で多数寄せられた目撃情報からも読み取れます。つまり、キクエは消滅していない。地域や時代を問わず、全国どこにでも出没している。
この番組は、その事実を拡散する立場となっていたのでした。果たしてそれが良いことなのか、悪いことなのか、そこは分かりません。十中八九、駄目なことだったような気がしますねw
あの家の写真の意味
第二回で放送された、心霊YouTuberの突撃映像。これも、これまでの内容を受けて、ある程度考えることができました。
あの家は、おそらくイシナガキクエを「処理」するために使用していた家なのでしょう。しかし、それを使っていたのが米原さん・乙さんたちなのかというと、そうではないかもしれません。
イシナガキクエは、どうやら全国どこにでも登場できるようです。ということは、もしかするとキクエを「処理」していたのは米原さんたちだけではなかったのかもしれない。
それに、あの大量のキクエの写真。あれは、おそらく処理のために必要、あるいは処理したことの証明となるものなのでしょう。後ろの番号が処理済みのキクエだとすると、あの写真に振られた番号は35まで。この数字は、米原さんが生放送の番組で口にした「35も」という数字と符号しますが、その後の電話音声の話で、さらに別のキクエの処理を乙さんに依頼している声があることから、彼らが処理したのは36以降もあったはずです。
そうなってくると、あの家にあった写真は、別の人物が処理したものなのではないか。そして、番号のついていない写真があったということは、処理できていないキクエがそれだけいるということなのではないか……そんな風に思えてきました。
→(追記)第四回の放送で、これは考えすぎだったことが分かりました。普通に米原さんたちが利用していた家だったようです。では、36以降の写真がないのは……(追記終わり)
少し気になって、第一回の放送も再度見直してみましたが、米原さんがもってきたキクエの写真の裏に番号が書いてあったかどうかは判別できませんでした。もしかすると、米原さんも、あの写真(=未処理のキクエ)を持っていたからこそ、あそこまで執着してキクエを探していたのかもしれません。
水中映像はなんだったのか
これについても、憶測の域を出ませんが、何かしらこじつけることは出来そうです。
考えた可能性は三つで、一つは米原さんのようにキクエを捜索している説。もう一つは乙さんのようにキクエを処理しようとしている説。最後は、米原さんが口にしていた「代理人」という存在である説。
第三回の米原さんの言によればキクエの処理には「代理人」なる存在が必要なようです。それが一体何を意味するのかは不明ですが、例えば、乙さんのような処理を出来る人に代わり現地に赴き、キクエを映像や画像に収めることが、処理するために必要なのかもしれません。
彼らはその依頼を受けて報酬を得ているのか、あるいはなにも知らずにあの映像を撮影しているのか……。後者だとすると、あの映像を撮ったあとになにが起きているのか、気になるところです。
そして、あの映像がレオナちゃんに拾われてしまったということは……少なくともあの一体の処理は失敗しているのでは……なんて妄想も膨らみました。
米原さんの死の真相
米原さんのパートナーだったと思われる、第三回に登場した稲垣乙さんは、既に故人。彼女がいつ頃なくなったのかは不明ですが、少なくとも直近で亡くなったというわけではなさそう。そうなると、テレ東が米原さんに密着していたあの時期には既に亡くなっていた可能性が。
もしかすると、米原さんは乙さんが亡くなっていることを知らなかったのかもしれませんが、もし知っていたとすると、彼は内心相当焦っていたのではないでしょうか。
キクエが残っているかもしれないから、探さなければいけない。しかし、見つけても処理してくれる乙さんは既にいない。
そんな絶望感を想像すると、なんだか自分も胃が痛くなってきます。
そして、あの死を報じるニュース映像。あれはもしかすると、彼は自らキクエを処理しようとしたのではないでしょうか。そして、死に至った。
それはもしかすると、「代理人」となったということなのかもしれないですし、あるいは「処理に失敗した」「返り討ちにあった」ということなのかもしれません。
真相こそ不明ですが、少なくとも米原さんは彼の意思で死んだわけではないのではないかと思います。
写真の燃えカスが意味するところはなんなのか……まだまだ考えられる結末はありそうですね。
残された色々な疑問たち
ここまで述べてきた内容にも色々と疑問点が残っていますが、そのほかにも全く見当のつかない事柄が残っています。
まず最も謎なのは「テレ東の真意(作品中のテレ東、という意味です)」。
三回に渡る番組で、なぜテレ東はイシナガキクエを探そうとしたのか。処理する云々というのは、おそらく知らなかったことなのでしょう。彼らがなぜ米原さんの意思を受け継いであんなに大々的に捜索番組を行ったのか。そこは読み取れないままでした。
あくまで、話題になりそうなコンテンツを作ろうとしていただけなのか、それともなにかの意思に動かされていたのか、そのあたりは不明です。
第三回で、米原さんがTV出演したときの映像は「匿名の人物から送られた」とされています。
これが一体誰だったのかも気になるところです。あの映像の意図も不明。
あの映像を解析したことで「米原さんの意図」に気づけたことからすると、あの映像の提供者は「キクエを処理している側の人間」なのではないかと思われます。
やはり、キクエを処理する人々は米原さんたち以外にもいて、そんな人物が真相を知らせるためにあの映像を送りつけたのかもしれません。
あのノイズはキクエの抵抗を受けたものだったのかもしれませんが、新時代の技術によって解析され、事実が暴かれ……。
テレ東がAI解析でキクエの姿を明確なものにしたりしたことも、もしかしたらキクエにとって都合が悪いことなのかもしれないし、その真逆で、キクエの力を増長させるものなのかもしれない。
まあどこまで行っても謎でしかないのですが、なんだか怖いようなワクワクするような、そんな謎ですね(笑)
第三回で、突然出演者たちや電話オペレーターたちがいなくなったことの意味も気になるところです。
もしかすると、ここまでの取材で、どうやらキクエがやばい存在らしいとようやく気付いたTVクルーが、なにか考えなおして演出を変えたということかもしれませんね。
「なんかこのままやってるとヤバそうだから、キクエってヤバい奴っぽいです~っていう情報だけ流して、あとは知らんぷりしちゃお!」
なんて、無責任な汚い大人だったりするのかも、なんて思うとちょっと笑っちゃう自分でした。
まとめ
大好きなフェイクドキュメンタリー「Q」シリーズの制作陣と、いつも期待の目で見ているテレ東のモキュメンタリ―系作品の制作陣の夢のコラボということで、追い続けた3夜でしたが、もうたっぷり楽しむことができました。
考察とは名ばかりの妄想ばかりでしたが、こうやって、「こうだったら怖いかも」と恐ろしい想像をしてみたり、逆に「実はこんなくだらない話かも」とばかばかしい想像をしてみたり、答えが提示されないからこそ脳内で楽しく展開できる作品だったと思います。
それにしても、このTXQ FICTIONシリーズ、この3回で終了なんでしょうか。そうだとしたらもったいないのでぜひ続けてほしいですね!
あと、そろそろ「Q」の新作を……と、皆口さんたちに念を向けつつ、キクエの余韻に浸ろうと思います。