ささざめブログ

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【読書】インパルス板倉さん初エッセイ『屋上とライフル』が良すぎた件

 インパルス板倉さんのエッセイ『屋上とライフル』の感想を書く。

(購入はこちらから)

紹介

 生粋のコント師であり、腐り芸人であり、近年は作家としての才能も発揮している、我々のような草の根から葉っぱをかき分けて世間を見渡しているような日陰ものにとっての太陽の存在。それが板倉俊之だ。

 すみません、言い過ぎました。

 要するに、私は板倉さんのちょっとしたファンなのだ。先日、板倉さんがエッセイを出版していることをたまたま知り、早速Amazonにて購入した。
 (ファンというにはおそすぎやしないか、という指摘もあるだろう。ごもっともである。)

 板倉さんのその意外と人情に厚い部分や、くだらない妄想を頭の中で張り巡らせている部分が存分に溢れた一冊になっていて大変満足度は高かった。

 ただし、収録作品の多くは板倉さんのnoteの方で無料で読めるので、まずはそちらで見てみても良いかもしれない。私は読み終わってからこのnoteの存在を知ったので、やられた!と思った。

note.com

 

 以下、とくに気に入った話と、その感想です(順不同)。微ネタバレ注意。

 

特にお気に入りの作品

特別な一万円

 板倉さんの古くからの友人Tさんとの話。久々に食事に出るも、財布を忘れた板倉さんが、Tさんに1万円を借りることになるのだが……。

 あまりにも良い話すぎて、まず、板さん、あんたこんな人情があったのか……と、驚愕した。そして最後のオチが完璧すぎる。いや、きっと、最後は作ってるだろうなと個人的には思うのだけれど、そんなのは野暮ってものだろう。スーパーの駐車場で1万円の入ったアームレストを開けたところで、おいおいまさか、冗談だろう?と自分もTさんになった気分だった。

 

あるハロウィンの日

 ハロウィンの日、家に帰ってきた板倉さんがマンションの大家さんの仕掛けたトラップ(ハロウィンの飾りつけ)に振り回される話。

 なんともバカバカしい作品で良いw 勝手に他人に悪意を振りまく、腐り芸人らしい板倉さんが垣間見れる。「ちきしょう……!ちきしょう……!」は板倉さんの声が聞こえてくる思いだった。

 

In my opinion 右、左、右

 本作では、言葉の疑問などについて「In my opinion」という形でまとめられている。このタイトルはその中でも、道路を横断するときの右、左、右、に疑問を呈する話。

 最初のうちは、おいおい板さん、こんなのもう皆通ってきた疑問ですよ、と思ってしまう自分がいたのだが、突然板倉ワールドに舵が切られて、なるほど面白い!と腹落ちした。

 右、左、右となった仮説が繰り出すストーリーを是非堪能してもらいたい。

 

渾身の力作

 板倉少年の話はどれもおバカで、それでいて今の板倉さんが小さくなった姿が容易に想像されて非常に楽しい。この『渾身の力作』はそんな中でも特にお気に入りの作品だ。

 夏休みの工作の話なのだが、猪突猛進で、一度信じ込んだことはもう完全に信じきってしまう板倉さん。なんともありえないような大作を作り上げてしまう。

 絶対の成功を信じてその大作を運んでいる姿も、結局上手く行かないところも最高である。

 

まとめ

 初のエッセイでありながら、かなり満足できるクオリティの一冊だった。

 是非第二作も出してほしい、がきっとストックが全然ないのだろうと思うので、なかなか出ることはないだろうと考えると残念でならない。

 ほっこり、楽しく、クスリと笑える本が読みたいときには是非オススメである。