津田彷徨原作・医療監修、瀧下信英漫画『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』を紹介/レビュー。
紹介/感想
数ある異世界転生/転移系物語の中でも、これはかなりの異色作。とある医師がめちゃくちゃハードな異世界へ転移してしまう医療ファンタジー物語。
冒頭の入りで、無医村出張からの転移という流れのため、「村のほうは大丈夫なの!?」とちょっとだけ心配になるのだが、物語が動き出せばもうそんなことは気にならない。
愚直に患者を助けたいと願い続ける主人公が、怒涛の状況に巻き込まれていく。亜人、キマイラ、竜と、冒頭から治療のスケールがハンパじゃない。
舞台になっているのは「治療魔法」というものが非常に特殊で、極一部の人間にしか扱えない神聖なものとされてしまっている世界。そんな世界に現代の「医療」という知識を持ち込む主人公。自分の持つ医療知識を世界に還元せんとする主人公達と、それを渦巻く黒い影。とにかくビターでハードで壮大だ。
そんな、見方によっては荒唐無稽な物語なのだが、漫画が非常に上手いことと、医療描写がしっかりとしているためか、なかなかに説得力があってぐぐっと魅入らせられてしまった。
医療知識を使った転生系物語といえば、『JIN―仁―』が真っ先に思い出されるのだが、異世界ファンタジーと言う要素から、また違った体験を得ることが出来る。竜の胃の腫瘍を摘出するための豪快すぎる手術は一見の価値ありだ。
出てくるキャラクターたちが魅力的で、特に竜の一族がやたらに格好良いのも好きなところだ。ぷるぷると可愛いスライム枠のエルに、もふもふで可愛いキマイラと、ヒットする要素もバッチリだ。
物語はまだまだどんなふうに転んでいくのか分からず、可能性に溢れた作品で、先が楽しみである。
読んでいる側としては、医療器具やら薬やらがいつ尽きるのだろうかとハラハラしっぱなしだ……。
5巻のラストで、打ち切りENDか?と思わされたが、現在(2023年11月時点)も連載継続中である。ここから改めて物語の2本の軸が揃い、動き出すという表現なのだろう。
なんとも続きが楽しみな漫画である。