ささざめブログ

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【漫画】冒険者令嬢の世直しファンタジー『貧乏令嬢の勘違い聖女伝』(全4巻)の感想

 馬路まんじ原作、遊行寺たま漫画『貧乏令嬢の勘違い聖女伝 ~お金のために努力してたら、王族ハーレムが出来ていました!?~』を紹介/レビュー。

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紹介/感想

 令嬢ものの作品というのは、現代にもはや数えきれないほど存在している。そんな中でも、この作品は魅力的なキャラクターと圧倒的な漫画力で、ページを読み進める手が止まらない作品だ。

 主人公は、一度悲運の死を遂げたものの、なぜか幼少の頃の自分として巻き戻り、二度目の生を授かる男爵令嬢。このあたりの設定自体はテンプレ感があるのだが、二度目の死を避けるために彼女が選ぶのは、冒険者としての自立の道。

 戸惑うばかりの父をおいて、狩りに出かける少女の姿、そして彼女が狩ってきた獲物を料理することでぷくぷくと太りいく父親。彼女の存在が領民へも幸せをもたらす。ただの、巻き戻り無双物語というよりは、主人公が堅実に力をつけて、実直に周囲に優しく振舞ったであろうことがわかり、この時点で好感がもてた。

 

 物語は、そんな主人公の将来を案じた父と領民たちが、一芝居うち、彼女を旅立たせるところから本番だ。この後、主人公はずっと、父や領民を案じて必死に金を稼ごうとしてしまうので、正直ここの展開はやや悲しいというか、見てられない感じもあるのだが、ぽわぽわと明るい彼らを見てるとまあいいだろうかとも思えてくる(結果的に、彼女が旅立っていなければ、国全体に不幸が蔓延するのだろうという未来も考えられるため、必然だったのかもしれない)

 冒険者として旅立った彼女はその後、亡国の獣人王子(可愛い)やら、ムカつく第三王子(可愛い)やら、ストーカー有能眼鏡執事(可愛い)やらと出会っていく。
 この手の物語では、どうしてもなんだかよくわからないけど周囲から好かれて行ってしまうみたいな展開がありがちだが、この主人公の言動はまごうことなき「聖女」のソレであり、周囲からよく見られるのは必然だと読者も感じられるため、人が集まっていくことに違和感は覚えなかった。

 

 全四巻で漫画の方は完結してしまうのだが、たった四巻だったとは感じさせられない、濃密でシリアスな展開がそこにはまっていた。街を救うために、強大すぎる敵とのバトルは手に汗握るし、諸悪の根源ともいえる王との対峙もまたワクワクする展開だった。

 ほんとうに、四巻で終わったのがもったいない。ストーリーやキャラクターが魅力的なのもそうだが、漫画力も非常に高くて、とにかく読みやすいのだ。力入りまくりである。

 逆に言えば、サクッと読み切ることができ、先が気になればそのまま原作小説のほうへと移行することもできると考えれば、この聖女伝の入り口としては最高の作品なのかもしれない。オススメ作品だ。