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【漫画】生き残るために引きこもる!『転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります』(既刊2巻)の感想

 藤森フクロウ原作、炬とうや漫画『転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります』を紹介/レビュー。

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紹介/感想

 現代の悪役令嬢といえば、悲惨な死を回避するために、悪戦苦闘しているうちにいつのまにか学園/国中で崇めたたてまつられてしまっているもの。いやいや、なんでそんな危険を犯す必要があるのよ。家から出なければいいじゃない。

 そんな声が聞こえてくるのが、本作の主人公だ。悪役令嬢としての結末を回避するために、引きこもりになることを選んだ主人公なのだが、やっぱり周囲をメロメロにしていってしまう物語である。

 家から出ないのに物語が展開するのか?という不安もあるかもしれないが、圧倒的存在感を持つ冷徹溺愛魔王系父、有能眼鏡執事やら、激カワ弟と継母やら、推せる貴族兄妹(パワー系妹)やら、個性的で魅力いっぱいなキャラクターたちが登場して飽きずに楽しめる。

 

 タイトルでは「引きニート」と言っているのだが、その実、主人公の彼女は「実業家/起業家」のような振る舞いをみせており、表舞台には上がることがほとんどないながらも様々な商品を開発したりして、富を得ている。精神面では卑屈さを感じさせる彼女だが、有能で強かな面もあるため、不快感はそこまで大きくない。
 このあたりのバランスは、読後感に大きくつながるため、個人的にはプラスなポイントだった。周囲から無条件に守られてばかりの主人公ではなく、きちんと自立していける女性なのだ。

 

 2巻の展開では、周囲からの恋心に気づき葛藤する展開なども用意されていて、良くも悪くもややストレスのかかる内容となっている。

 個人的には、ここで継母が、実の息子を強く叱責し、主人公を守る発言をするところで少し目がうるんだ。こういう、誰かが誰かに認められるというシーンは大変心に刺さる。まあ、弟クンのほうも可哀想なため、複雑な感情なのだが。

 

 表舞台には上がらずとも、おそらく今後ますます存在感を増していくであろう主人公と、それを守る周囲の人々。彼らの幸せな結末が見れるよう、この先も祈るばかりである。