ささざめブログ

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【漫画】この聖女、強すぎね?『真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです』(既刊6巻)の感想

 鬱沢色素原作、松もくば漫画『真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです』を紹介/レビュー。

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紹介/感想

 現代において、聖女というのは追放されるものであると、相場が決まっている。タイトルを見て分かる通り、本作も、そんな聖女の追放物語である。

 追放者のテンプレは色々と網羅されていて、追放先で王子様と恋に落ちたり、追放が原因で元いた国が大変なことになったり、それで逆恨みした人物による復讐物語があったりと、このジャンルに精通する人にとってはもはや慣れっこな展開が用意されている。

 とはいえ、読んでいて陳腐な感じはせず、テンポよく読み進めることができた。おそらくこれは、キャラクターが良いことと、漫画がポップで可愛い感じであることが要因となったのではないかと思う。

 

 主人公の聖女は、内面的にも能力的にも申し分のない聖女。国全体をすっぽり覆うほどの結界を張り、彼女がいるだけで国は潤い安泰となる。あまりにも聖女としての能力が強すぎるのではないかと心配になるほどなのだが、そんな彼女を「幽閉」し、さらには「追放」という裏切りを見せる元いた国については、もはや温情を施す余地はないだろう。

 既刊の終盤では、追放に至った原因となる女の背景が描写される。自業自得による大ダメージを食らった彼女に対しては、やややり返しすぎでは……?と最初思わされたが、その後の彼女の内面描写でなるほどここまでの人間なら仕方がないかと納得させられる。この作品は、このあたりの読者のメンタルコントロールも上手だなと感じた。

 

 主人公が新たに関わることとなる、追放先で出会う人々が、とことんいい人ばかりなのも、(やややり過ぎではないかとも思うほどだが)個人的には面白く読めたポイントだった。

 人間的に魅力いっぱいな甘々王子や、もふもふ枠で可愛いラルフ、旧知の仲である人化イケメンアホ毛ドラゴンに、精霊王まで登場する。追放/復讐といったところの、痛々しく見えてしまう表現も、この魅力的なキャラクターたちとぽわぽわポップな漫画に中和されて、楽しく読み進めることが出来るのだ。

 

 この先も、主人公は様々な苦難にあい、聖女の力を駆使する展開が続くのだろうが、その底知れぬ聖なる力がどこまで通用するのかだろうか。まだまだ先が気になる作品だ。