和泉あや原作、七緒たつみ著『破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします』(全6巻)を紹介/レビュー。
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紹介/感想
乙女ゲーム世界転生系の悪役令嬢グルメ漫画。現実世界で、ビルの屋上から飛び降りる人を止めようとして一緒に落下してしまった主人公。実はその落下しようとしていた人は神様だった。お詫びにと、主人公が愛した乙女ゲームの世界へ転生してもらうのだが、転生先が「悪役令嬢」だったというところから物語は始まる。
悪役令嬢もののセオリー通り、滅亡フラグをなんとか折ろうと悪戦苦闘するのだが、運命の修正力には叶わないのか、どんどんと近づく破滅エンド。よくあるのは、このフラグ回避の学園生活を描写するパターンだが、この作品は学園パートはあっさり終了。「一旦破滅エンドから目を背けて旅に出る」という選択肢が取られる。
主人公の黒髪乙女アーシェは、幼い頃にたまたま出会っていた金髪イケメン・ザックと再会。彼と共に、亡き母が口にしていた「幻の料理」を探して旅に出る。旅先で出会う新たな仲間、温かく美味しそうな料理、転生と神様の隠された謎、一度は振り切ったかに見えたが着実に忍び寄る破滅エンド。最初の印象と比べて、濃厚で楽しい物語が楽しめる一作だった。
どんな苦境でも珍しい食材のためなら目を変えて楽しい表情を見せる元気な主人公は応援しやすいし、モフモフ要員のシーゾー(神様から授けられた妖精)が出してくれる現実世界の調味料も駆使しながら、幻の料理を追い求めていく過程もワクワクする。個人的には、最後まで主人公のことを「マンゴー・レディ」と呼び続けるマンゴー狂いの騎士・エヴァンが強く印象に残った(笑)
まとめ
全6巻で、きっちりと最後まで描かれる本作。原作小説の方では、コミカライズ完結記念として、もう一人の転生者と神様の話について記されているので、コミックを読んだ方にも是非読んでみて欲しいところだ。(番外編部分だけでも読めるのでオススメ)
個人的には、第6巻はかなりグッときた巻。特に、王妃様の真実の吐露と氷解のシーンは、涙が自然と溢れたシーンだった。ああいう、誰かの苦悩とそれが誰かに理解されるみたいなシーンに弱いのよ……。
余談(ネタバレあり)
個人的には、最後まで悪役となってしまうゲーム主人公であり本作の悪役・ミアは、見た目が可愛らしいだけに、正直ちょっと可哀想にも思えてくる。
なにか、作中で反省したり、心が入れ替わるようなきっかけだけでもあればよかったのだが、そこまでは描写されずただ他国で幸せになっていそうだというだけだったのが心残りだ。
なんか巡り巡って国家間戦争とか仕掛けてきそうじゃない?と思わずには居られない私だ。