ささざめブログ

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【漫画】極悪令嬢だって恋には落ちる『悪役令嬢? いいえ、極悪令嬢ですわ』(全6巻)の感想

浅名ゆうな原作、斯波浅人漫画『悪役令嬢? いいえ、極悪令嬢ですわ』を紹介/レビュー。

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紹介/感想

悪役令嬢はレベルが上がると極悪令嬢になるようだ。

乙女ゲーム世界が舞台。なかなか主人公周りの設定にクセがあり、そこから生まれる数多のドラマが特徴的な本作。

主人公は薔薇姫として世間から忌避される存在。古のドラゴンから愛され、本来はその生家にて生涯を遂げるような悲運の人だ。
彼女が、庭である青年と出会うところから物語が動き出し、淡い恋模様が始まっていくこととなる。

主人公はタイトルの通り「悪役令嬢」なのであるが、彼女自身は転生者などではなく、とにかく聡明で冷徹で知略に長けていながらひたすらに美人であるというキャラクターになっている。
先述の設定があるため、そんな高い魅力をもってしても人々から恐れられているという気高くも悲しさを感じさせる存在だ。

彼女を囲むキャラクターのなかには、お約束的であるが、本来の乙女ゲームの主人公であり転生者である少女が登場する。さらには、もう一人の転生者でありながら主人公が恋をすることとなる青年も。転生という題材をチープに見せず、奥行きをもたせることに成功した設定だと感じた。 この手の悪役令嬢ものでよく見る、逆ハーレムルートを狙って暴走したゲーム主人公が空回って……という展開もあるのだが、懐の深い主人公の存在と、想像以上に純朴であったゲーム主人公の交わりによって、オリジナリティを感じるストーリー展開が生み出される。


やはりキャラクターが魅力的だと物語は面白く感じるものだ。
聡明さの冴えわたる主人公は、恋愛についてだけは弱いところが可愛らしいし、そんな彼女と対等にやり合いながらも最後まで親友ポジションであり続けた王子も大変魅力的だった(個人的に、彼がめちゃくちゃ好きなキャラだったので、なんとか幸せになってほしいものだったのだが、漫画ではそこまでは描かれなかった……)。

当初は嫌なキャラクターとして描かれていたゲーム主人公も、中盤からは(読者視点だと)人が変わったように可愛らしくなる。最後までプチ逆ハーレム状態を貫く彼女の行く先も気になるところだ(笑)

最終巻では、漫画オリジナルの展開とのことだが、きっちり物語が完結に向かう。大変気持の良いラストを迎えるため、読後感がとても良かった。読んで良かった作品の一つだ。