ささざめブログ

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【小説】"普通に生きる"の難しさ『コンビニ人間』の感想(Audible版)

村田 沙耶香作『コンビニ人間』をAudible(Audio Book)で読んだので、感想・レビューを書きます。

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紹介・感想

文学にはあんまり明るくない私。かつて小説を読むときは、いつもタイトルと、最初の一文が面白そうかどうかで判断していました。

ただ、電子書籍文化になると、その「最初の一文」にアクセスしにくくなったりして、そういうきっかけはかなり減ってしまった気がします。

さて、ここ最近はAudibleに加入しているので、何か面白そうな小説はないだろうかとAudibleのページをスクロールしている私。目に止まったのはこの「コンビニ人間」というタイトル。

果たして一体どんなタイトルだろうかと想像します。コンビニ人間。写実的な現代風刺作か? あるいは、コンビニを舞台にしたコメディ?

ナレーションは、オアシズ・大久保佳代子。大久保さん? ほなコメディか……。と思いながら作品紹介に目を向けると「芥川賞」の文字。ほなコメディちゃうか……。

と脳内ミルクボーイを召喚しつつ、そのときちょうど腹痛に苦しむ夜だったので、もうなんでも良いやと聞き始めたのでした。


結論から言うと、まったくもってもう全然好きとは到底言えない作品なんですが、とにかくパワーが凄くて、生きる力を吸い取られる感覚のある一作でした。

主人公は、30代独身女性。社会に馴染めず、「普通」でいられないまま大人になってしまった彼女が、唯一「普通」でいられる場所であるコンビニ。30を過ぎてもコンビニ店員として働く彼女。

それこそが彼女が、普通を装って生きていく唯一の方法であるにもかかわらず、世間はそれを奇異の目で見て、そのままでいさせてくれない。

取り繕いながらもなんとか今までは上手く生きてこられた主人公。しかし、主人公と同じく、いや主人公を遥かに超えるような社会不適合者である男・白羽との出会いで、彼女のコンビニ店員としての生活にも変化が生まれていくことに。

見方によっては「現代社会に一石を投じる」系の作品だし、ここで描かれるのは、「普通」の価値観が合わないという人にとっての「地獄」の表出でもあると思います。

なので、芥川賞を取った、というのはなんとなく理解はできる。


あと、Audible版の朗読、大久保さんがかなりマッチしてましたね。

最初こそ棒読みな感じがして、大丈夫だろうか?と感じるかもしれませんが、主人公の無機質さとマッチしていて、ほどよい中年女性感も出ていて。

なので、オーディオブックとしての完成度は申し分なしだと思います。

NOT FOR MEでした

ただ、やっぱりこれはちょっとNot for meな一作でした。

とにかく、先述の「白羽」を筆頭に、主人公の周りを彩る人たちの性格が悪い!

白羽の異常性はもう言うまでもなくて、さっさと捕まれって感じなんですが、中盤の知人とのバーベキューのくだりとか、あまりにも不快すぎて辛かった……。

まあこれはフィクションの中のお話なんだから、こんなこと言ってもしょうがないのだけれど、でも言いたいのは、現代の人たちって、きっともっと「無関心」ではないかと思うんです。

本作の中では、とにかく主人公に対する「普通」という圧力がのしかかり続けるわけですが、30半ばを過ぎたような人間を「普通」にしようとするようなお人好し(悪い意味で)は、まあド田舎に住み続けているとかだったらまだまだいっぱい居るかもしれませんけど、少なくとも都会にはもうあんまりいないでしょう、と思ってしまいます。

なので、どうしても醜悪に書かれている、という感じが拭いされず、自分には刺さらなかった一作だったのでした。

まとめ

とにかく、負の方向へのエネルギーは凄いし、「普通に生きる」ってなんだろうっていう、本質的な疑問を胸に浮かべずにはいられず、そういう意味では文学的な価値がある作品なのは間違い無いと思います。

ただ、とりあえず言えるのは、私はとても嫌な気持ちになりました(笑)