ささざめブログ

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【漫画】死んだフリして復讐を『葬偽人』(既刊4巻)の感想

朝野いずみ原作、八橋舞雪作画『葬偽人』(既刊4巻)を紹介/レビュー。

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紹介/感想

闇多き現代社会を舞台にした復讐モノは人気ジャンルだと思うが、その中でも一癖効いたテーマで楽しませてくれるのが、この『葬偽人』だ。

主人公の田之中雀は、就職した会社でイジメにあっていた。友人だと思っていた同僚・亜衣里に裏切られ、もう見るに耐えないような辛い体験を味わってしまい、とうとう自ら命を絶とうとまでしてしまう。

そんなときに出会ったのが「楽しく◯んでみたい人募集」という衝撃的な広告。てっきり、そういう詐欺広告から始まるバイオレンスな話なのかと思いきや、なんとその電話先の相手は、親身になって話を聞いてくれる。そこから、本当に死んでしまうのではなく、「死んだフリ」を使った戦いが始まっていく。

復讐モノの雰囲気は根底にありつつも、あくまで死んだフリ・葬偽を用いた問題解決が行われていて、新鮮な感覚が味わえる一作だ。ただ単に相手を貶めるだけでなく、温かい方向に解決する話も多く、初見の印象よりもやわらかな印象を感じた。

とはいえ、かなり精神的にクる描写やキャラクターも多いため、こういったタイプの作品に慣れている人出ないならオススメしにくい作品でもある。メンタル弱っているときに読むと、一緒に持っていかれてしまうような内容なので、元気なときに読んで欲しい。

各章の感想

以下、各章の感想を簡単にまとめる。ネタバレを含むため注意。

主人公・雀のケース

もうとにかくクソ男の課長とクソ女の元友人がやばすぎる。課長がある行動にうつしたときのシーンはもう痛々しすぎて見ていられないほど。

復讐もその分全力。ちょっとやりすぎじゃね……? 法に触れてね……?と心配にもなるが、まあその分相手が邪悪に描かれているので、意外とバランスは取れているか。

SNS中毒とストーカーのケース

信用できない依頼人、のパターン。まあでも、かわいそうでもある。というか、犯人がヤバ過ぎる。将来心配だよぼかぁ。

フォロワー500人でSNS中毒になってるところは、ちょっとファンタジー過ぎる気がしてしまったw

モラハラカス旦那のケース

んもーーー男のワタシから見ても旦那へのイライラが半端じゃない相手。ぶん殴ってやりたくなる。前半の現状を見せるシーンでマジでイライラしすぎて、一度読むのをストップしたほど。それくらいきつい。

増田こうすけ劇場みのある顔して、キツイ言葉を投げかけてくる旦那。もう制裁してやってくれ!という思いで読み進めれば、なんとかギリギリ溜飲が下がるくらいにはなってくる。でも、ちょっと最後はほんとに大丈夫か心配。

スーパーマーケット社員の苦悩のケース

パートのBBAにブチギレる回。よくここまで血が流れなかったね、と本気で心配になるくらいのムカつき。葬偽を仕掛けようと依頼してくるのは、とある女性の幼馴染男性。久々に再開した彼女のとんでもない行為をなんとか辞めさせるために葬偽をしかけるというトリッキーな話。

とにかく、スーパー社員の彼女が追い込まれまくってて行動にも気合が入っているのが目に付くが、それ以上に、彼女に嫌がらせをし続けるパートのBBAがヤバ過ぎるので、彼女を止めようとも強く言えない。

まあでも、こういう、パートが権力を握っちゃってるケースってよく聞くもんね。怖いよね。正しい人が痛い目を見る世の中。

いやでも、あのBBAもあんな家住んでたら絶対噂になってるでしょと思うんだけどねw

再婚した元父一家のケース

元父の再婚相手がきつい話。多額の保険金に目がくらみ、甘い言葉で旦那と元嫁(死んだフリ中)との間の娘に優しくしようとしたりするシーンがもう見ていられない。邪悪。

そして、これまた依頼人も暴走気味なシリーズ。あまり彼女には感情移入できず、むしろ弟が不憫で……。

最終的に丸く収まって入るのだが、かなりやってることが綱渡りな気がする一作。でも雀ちゃんが可愛いからいっか、となったが。

まとめ

死んだフリがそんなに上手くいくのだろうかと疑問も度々湧き上がるが、まあそこは漫画なので御愛嬌。気にせず楽しむのが吉だろう。

ミステリアスな葬偽社メンバーたちの過去話なんかもまだまだ繰り出されそうで、先が気になる一作。第5巻が2024年3月8日発売予定とのこと。購読中の方は要チェックだ。