ささざめブログ

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【考察】フェイクドキュメンタリー「Q」|生配信作品『ニ篷ッ、ホタクヌロソョ (内部告発の生配信)』

YouTubeにて配信されている大人気ホラーモキュメンタリー、フェイクドキュメンタリー「Q」より、2023/9/23にLive streaming onlyとして配信された作品の感想と考察を書く。

2023/09/25 15:00追記-------------------------------------

アーカイブ公開もあるようです!見逃した部分もあったのでとても嬉しい!緊Q特版のときは、こっそり変化があったようなので、今回生配信見れたという人も必見ですね。

なお、以下の記事では、生配信のあと、再公開はないという前提で書かれておりますのでご了承ください。

追記おわり-------------------------------------------------

2023/10/7 1:40追記--------------------------------------

アーカイブが公開されたので追加の考察を書きました。

sasazame.hateblo.jp

追記おわり-------------------------------------------------

 

 

9月14日。普段、作品の告知と、視聴者の感想リポストしかしない@pro9ramQのアカウントが、突然以下の画像ポストを行った。

 

次の作品に向けての布石かと騒がれた数日後、以下のポストが行われる。

夜9時、ライブ配信限定という異色の告知。過去に、緊Q特版という形で、一挙放送(と見せかけた再編集版)の放送があったが、今回はそれを更に上回るような形で、完全生配信として作品が放送された。

 

以下、感想とネタバレを含む考察になります。ご注意ください!

 

※本記事では、本編画像は使用していません。必要に応じて、Xなどで配信当時の情報を検索していただくことをオススメします。

・検索例
(#フェイクドキュメンタリーQ OR #pro9ramQ) until:2023-09-25 since:2023-09-22

https://twitter.com/search?q=(%23%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%BCQ%20OR%20%23pro9ramQ)%20until%3A2023-09-25%20since%3A2023-09-22&src=typed_query&f=live

 

ライブ配信であることを100%活かした快作

配信中度々YouTubeコメント欄が映し出されるなど、それが完全に生放送であることがアピールされながら本作は進行していった。

途中途中で発生する読み込み中の表示(ぐるぐる)は、事前に用意されたものではないかとも感じられ、どこからどこまでが生なのかというのがわかりにくく、もしかすると、編集をとことん頑張れば、撮影済み映像に、スマホ画面だけをリアルタイム合成して表示というのも出来るのかもしれない。

ただ、あのレベルに違和感なく合成するのは、生配信というレベルでは流石に無理ではないかと思う。そのため、ここでは全編本当に生配信だったものとして考える。

 

さて、その生配信であることを強く意識させたチャット欄の表示だが、これは「ただ生であることのアピール」ではなかった。最終的にこれは、視聴者たちを、怪異の渦中に放り込む最悪の呪い拡散放送として、視聴者の存在を作品の中に取り込む演出であった。

だからこそ生配信でなければ意味がないし、アーカイブが残せないというのも納得なのだ。リアルタイムに見ていて、コメント欄が流れていくのも含めて、1つの作品として昇華されている。

最近人気のある、「見ている人をも呪いに巻き込む」というタイプの作品の、最高峰ではないだろうかと思う。

 

1つ目の配信のラストには、流れていたコメントが登場人物に読まれ、「死んじゃう……みんな死んじゃう……」と、視聴者に呪いが降りかかることを予感させつつも、最後には「嘘だから」で終わる。なんて素晴らしいエンディングなんだと関心しきりだ。この瞬間、ああ、だから生配信だったのかと悟らされる。フェイクドキュメンタリーを謳っているチャンネルだからこそ、”嘘”という言葉がフックになってくる。本当に嘘なんだろうかと不安にさせられる。

 

余談だが、生配信を使ったホラー作品といえば、私の記憶に新しいのは「生でコワすぎ!」だ。これは作品の特性上、怖いというよりも面白さが勝っていたものだったが、今回の配信はホラーに完全特化。唯一無二のクオリティを叩き出していたと感じる。

 

恐怖表現はわかりやすい

普段のQシリーズでは、「なんだかわからないけれど、どうやらコレは怖いものらしい」という、じわじわと侵食してくるような恐怖が特徴的であった。

一方今回の作品では、謎の死体袋、祈りを捧げる信者たち、風呂場で呪詛(のようなもの)を唱える男性、黒い影、そして謎の箱などと、ここが怖い!と思わせてくれるポイントが多数ちりばめられた作品だった。

 

個人的には、あとから考え直すと、やややり過ぎにも感じるソレらだったが、配信を見ている間は次に何が出てくるんだとドキドキが止まらなかった。

生配信であり、普段の作品群のようにゆっくりと見直したり出来るものではないからこそ意識されたものなのかもしれない。

 

以下は考察を綴る。

導入で使われた画像

今回の作品は、これまでのシリーズ作品と比べても、やや異色な作品であったと感じる。最初の画像から、配信まで含めて、全体的に「SCP」や梨.psd作品を思わせる要素が多数あった。

画像

この内容は色々と考察されているが、配信の内容も含めると、意味は限定されてくるため、それほど難しく考えるようなものではないだろう。ただ、この画像で逆にミスリードを狙っているのかもしれないが。

 

細かい文章内容についてはXで検索すると丁寧に解読しようとしている方が多いのでそちらを参照してほしい。私としては、以下のような内容であると理解している。

 

・ある家族の娘が、「大量破壊兵器」と呼ばれる呪具を作ってしまう

・その呪具により、家族は破滅(ハ滅)し、父母は死亡、娘は行方不明となった

・ある団体が、その呪具を悪用しようと企み、いまも実験を繰り返しているが、使用方法がわからず実験による死者が発生し続けている

・一家は、呪具によって、なにかの姿に変えられている

 

タイトルの意味

ニ篷ッ、ホタクヌロソョ1というタイトルで始まった生配信。この解読方法はすぐ発見され、それが「内部告発の生配信1」であったことがわかった。SJISEUCの変換が必要で、サクラエディタなどで変換をかけると、正しい文字列が確認できる。

余談だが、今回の文字化け変換は、以下のサイトでも確認出来る。こちらでは、実際にどのような変換が行われてあの文字が出てくるのか少しわかりやすいので、原理が知りたい人は見てみるとよいだろう。

www.edu.i.hosei.ac.jp

 

関係ない話だが、文字化けを使った仕掛けというのは、興ざめになってしまうパターンもあるため、個人的には注意が必要な演出だと思っている。(私だけかもしれないが、そもそも、なんでそんな文字化けが起きたの?と疑問が先にきてしまうことが偶にある)

今回はそれが内部告発という設定上、あえて文字化けさせている(団体側に簡単に見つかってしまうのを避けている)というふうにも解釈することができるため、きちんと意味のある文字化けで大変素晴らしいと感じた。

 

配信者は誰

内部告発の生配信」というタイトルだったことがわかったのは良いが、ではこの配信をしていたのは誰だったのだろうか。

 

配信中、カメラを回し続ける男は、服(Q2:1でノーフィクションに出演した女性が来ていたのと同じ服)を運ばされた以外になんの役割も持っていない。ただウロウロと、謎の家の中を歩き回り、怖い場所を撮っているだけである。(ちなみに、ところどころで両手が映るシーンがあるため、どうやらヘッドマウントのような形での撮影になっているようだ)

最後には「携帯ダメ!」と、言われてしまうことから、やはりこの撮影はこの謎の集団が自発的にやっているものではなく、まさに内部告発なのだろう。

しかしながら、最後のこの「携帯ダメ!」と奪われるシーン、撮影者の男はウーウーと唸るだけで、言葉らしい言葉は発さない。あまり知性を感じさせないその雰囲気に、この男が内部告発を企てたのか?というところには疑問が生じる。(呪具の影響を受けて精神がおかしくなっている可能性もあるが)

 

生配信1が終わったあと、突然始まった生配信2。これについては、(恥ずかしながら)実は私は見ることが出来なかったので、ネット上に流れている画像やレポートから推測するしかない。

この配信を行っていたのが、1つ目の配信と同じ人物が配信していたかどうかについては怪しいのではないかと思っていたが、見ることが出来たという人の話を見ていると、最後に「いたぞ!」という声が聞こえて配信は終了したことからも、生配信1のあと逃げ延びた配信者という線が強そうだ。

また、もう一人防護服を着ている人物がいたということなので、おそらく先述の(黒い影を見せた)共謀者も一緒になって配信していたのではないか。

 

生配信2では、どうやら生配信1の家とは別のロケーションで、更に禍々しい雰囲気の物体を撮影したりなどしているようだ。一体この場所はなんなのか。

メモ書きの内容にもある、一家が元々住んでいた家が、生配信1の家なのか、あるいは生配信2がその場所なのか。

 

これらを考えると、以下のような関係性が思い浮かぶ。

・生配信の撮影者は、誰か(例のメモを書いた男?)に依頼されて、配信を行っている→だからあれほど、今配信されているかどうかを度々確認していたのでは?

・生配信の撮影者は、途中別の男に誘われて、黒い影を撮影する→共謀者がいる?この男が依頼者?

・生配信1の最後、捕まった後に逃げた撮影者と、その共謀者が別の廃墟に逃げ込む→この場所がメモ書きの廃墟なのか、あるいは生配信1の家がその廃墟なのか、全く関係ないのかは不明。

 

途中、不用意に箱に近づいていったりするのも見ていると、とても生配信1の撮影者が、この呪具のことを理解しているとは思えないため、彼はあまり知識がないのではないだろうかと考えた。

 

あの箱は一体なんだったの?

あの象徴的な禍々しい箱。この正体ついては、正直、答えらしい答えは無いのではないかと思う。三足で支えられた金属製の箱で、とても日常生活に存在するとは思えないビジュアル。錆なのか血なのかわからない色合いに、小学生女子が貼ったかのようなシールという、ひと目見ただけで身体中から危険信号が発せられるような物体で、もう視聴者としては大興奮だった一品だ。

この箱が、例のメモの「大量破壊兵器の呪具」と仮定してみる。記載からみるに呪具は一家の娘が作成したという。しかしあのシールが貼ってあるのをみると、どう考えてもそれは小学生女子の行動によるものとしか思えない。ということは、女の子が遊んでいるうちにあの呪具がたまたま生まれてしまったのだろうか。

 

あるいは、呪具を作成した娘と、シールを貼った娘が別というのも考えられる。呪具を手に入れた団体の実験に、「呪具と一般家庭を一緒に過ごさせる」というようなものがあったとしたら、その家庭の娘が……というのも考えたが、あのシールの古さを考えるとその線は薄そうに思う。

こちらのポストによれば、あのシールは1978年のもの。そうなると、やはり呪具が出来た頃(あるいは、呪具になる前に)娘がシールを貼ったと考えたほうがしっくりくる。

もしかすると、例のメモのにある娘が呪具を「作った」というのは、実は娘が遊んでいる内にあの呪具が「偶然できてしまった」のではないか。

 

ただ、ここで一つ気になるのが、あの箱の能力だ。中からは機械音のような音が聞こえており、生配信1のラストでは、携帯の着信音のようなものが大量に聞こえてきていたことから、なにか電気的なものに作用する力を持つ怪異であることがわかる。

もし、その成り立ちに関係するのが幼い子どもだとすると、その能力の元が何なのかがピンとこない。昭和のおもちゃで、たとえば「笑い袋」なんかは1970年代にもヒットしていたのではないかと思うが果たして……

 

最終的に、私の考えている(突飛かもしれない)仮説としては

・あの箱は、一家の娘が「たまたま作り出してしまった」類のものであり、電子部品などに干渉するような力すら持つ→電波を通して視聴者を呪えるほど強力?

・最後に箱が開いてしまったときには、着信音・あるいはおもちゃの音のようなものが一斉に聞こえる→もしかすると、行方不明になった娘も箱の中に取り込まれている?

 

箱、呪いといえば「コトリバコ」がすぐに思い浮かぶインターネットに生きてきた私も、新たな恐怖の箱を手に入れた作品であった。

 

その他の謎たち|旧作との関連性は?

他にも沢山の謎が散りばめられた本作。どれも明確な答えはなく、好きに想像するしかないので、ここからは簡単に思いついたものを述べていく。

 

旧作『ノーフィクション』と本作はどこまでつながってる?

個人的には、Qシリーズの作品同士のつながりはあまり意識したくないと思っている。「もしかすると関係があるかもしれない」程度に考えておくのが好きだ。ただ今回については、かなり明確に過去作と関連するものが登場したために、なんとも悩ましい思いをしている。

 

というのも、ノーフィクションの範子さんの服が本作で突如登場したのだ。本作の考察勢も一斉にノーフィクションとの関連性を見出して行っている。例えば、例のメモ書きに登場した家族というのが範子さん一家であり、この箱の作成者が範子さん、あるいは行方不明になっているという範子さんのお姉さん、裕子さんだという意見などがある。

私は、そこまでの見方にはやや否定的である。あのメモ書きの内容と、範子さんの現状は繋がらないようにも感じるし、範子の両親が死んだのは10年前だったりと、時期も合わないような気がするからだ(メモ書きの家族が消失したのがいつなのか不明なので、憶測でしかないのだが)。

 

では、範子さんに一体何があったのか。私の考えは次の通りだ。

・メモ書きによれば、団体は呪具の実験を繰り返していて、それで多数の死者を出している→範子さんは実験の被験者に使われた

・洋服だけが撮影者に手渡され、外に運ばされる。その横には簀巻きにされた遺体と思しき物体が。また、箱の周りには黒い液体が飛び散っている→範子さんは実験により死亡。遺体として簀巻きにされている? あるいは黒い液体としてあの部屋に飛び散っている?

・なんで範子さんが?→身寄りのない引きこもりの範子さんが死んでも構わない被験者として最適だった? あるいは彼女、または彼女の家に取り憑いている怪異が目的で団体が近づいていた?(バケモノにはバケモノをぶつけるんだよ理論)

 

それにしても、久々に服だけ登場させてこんなに視聴者を惑わせるなんて、全く罪な女である。

youtu.be

 

あの黒い影や浴槽の人は?

あからさまに恐怖を煽ってきた、浴槽で呪詛を唱える人物と、隣の部屋にいた黒い影。彼らについても謎ばかりだ。

まず最初に思いついたのは、実験による被害者だということ。浴槽の人物は精神崩壊、黒い影は死亡し霊魂化しているのではないかと(あの部屋に飛び散ってた黒い液体が関係してそうとか思ったり思わなかったり)。

 

浴槽の人物、私は男性だと思ったが、その人こそが範子さんではないかと疑っている人もいるようだ。

また、メモ書きにあった「姿を変えられた家族」の父母がこの影だった可能性も考えられる。

 

これらについてはあまりこれだと言える決定打は思いつかない。

 

箱に拝む人たちと防護服たちの関係は?

私の解釈としては、いずれも呪具を悪用しようとする団体の関係者たち(末端)である。

箱に拝んでいた人物たち:箱の動きを鎮めるためにあの体制で拝んでいる(おそらく、過去の実験であれが有効であると知っている)。ブザーがなると同時に姿を消すが、その後女性のほうは再登場するので、単純に家から撤退していただけだろう。

防護服たち:実験結果の確認、後片付け、そして呪具の回収を担当させられている作業員。

 

生配信2の廃墟と大量の手足

先述の通り、生配信1の家と2の廃墟の関係性ははっきりしていない。ただ、私の想像だが、メモ書きにはハイキョという文字が見えることから、おそらくあの場所こそが呪具を生み出してしまった家族の家だったのではないか(柱のシールなど、子供がよくやることだと思う)

そうすると、あの大量の手はなんだったのか。これは私としては2つ想像するものがあって、一つは「これが家族が変えられた姿」というもの。もう一つは「実験の犠牲者たちが無造作に積み重ねられている」というもの。

まあ、どっちも嫌過ぎる話だが。

 

まとめ

生配信限定という異色作。私も2番目の配信が見られなかったり悲しい思いもしたが、このような現象もコミコミで作られた作品と捉えたほうがよいのだろう。

ただ、この配信が見れなかった結果、悪い印象を受けていたり、トラブルに発展してしまっているケースも見受けられるため、結果として良かったかと言われると、なんとも言えないところだ。 

(追記)後に公開決定されたので、この心配は不要になったので良かった!でも、もっと早く教えてほしかった…w

 

個人的には、今回も非常にクオリティが高く、楽しい恐怖映像を享受でき、大変満足である。

 

全く持って余談だが、あんなに危険な物体を、あんな方法で運び出す方が悪いと思ったのはきっと私だけではないはずだ。嘘だから、とあまりにも下手な言い訳をしてしまうのも納得である。