ささざめブログ

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【考察】フェイクドキュメンタリー「Q」|『Q2:6 隠しリンク - Hidden Link』

YouTubeにて配信されている大人気ホラーモキュメンタリー、フェイクドキュメンタリー「Q」の最新作シーズン2第6話『隠しリンク - Hidden Link』の感想と考察を書く。

本編

youtu.be

紹介・感想

前作、『Q2:5 怪談 - Passengers』の公開が2023/8/6。その間、生配信作品・トロイの木馬を挟み、シーズン2ナンバリング回としては久々の新作公開が2024/1/21にあった。

2023/1/1に『Q2:1 ノーフィクション - Nofiction』で幕を開けたこのシーズン2も、一年が経過してようやく折り返し地点といった所だろうか。シーズン1と比べてスローペース(シーズン1はおよそ1年で完結)だが、その分長編回も多く、その中で怖さ・不気味さの感動をキープし続けている。


今回の『隠しリンク』も、正味17分33秒としっかりじっくり楽しむことができる一作。

今回はインターネット黎明期を思い出させるような「個人制作サイト」を舞台としていて、あの頃確かに存在していたアングラな雰囲気の個人サイト群や、FLASH動画でホラーを楽しんでいたことのあるような層にはかなり深々と突き刺さったんじゃないかと思わされた。

かくいう自分も、そんな人種の一人で、ソースコードの隠しコメント、隠しリンク連続などが出てきたときには、子供の頃に怖いサイトにアクセスしてしまったときのあのゾクッと身震いする思い出が蘇ってきた。


冒頭はポッドキャストで話す二人の男性。楽しい雰囲気の会話から、ソースコードに隠された「悪口」というリアルな気持ち悪さを見せつつ、とある「音声ファイル」からはジェットコースターのように視聴者を恐怖の渦へと巻き込んでいく。

全編、PC画面直撮りが殆どを占める映像でここまで気持ちの悪い恐怖というのを演出できるのかと感動と驚きにあふれる一作だった。


以下、内容に関する妄想・ネタバレを大いに含みます。先に本編を視聴してからお読みいただくことをオススメします。

ポッドキャストと同窓会サイト

作品冒頭は「各市役所に2人は居る顔 つっちー」と「最近テンションが上がった言葉は 「機材席開放」今ちゃん」の2人によるポッドキャスト1(番組タイトル不明)で始まる。ちなみに配信日時は2017/11/30 午前2:06。めちゃくちゃ「丑三つ時」に上げてるところに制作陣のこだわりを感じる(笑)

つっちーは冒頭から、「まずはまあ タツキくんの話だね」と言って話し始めるが、このタツキくんの話というのがなんなのかは不明だ。ナレーションが番組情報を話している間も、裏で他愛もない話をしているようだ(部長がどうとか言っているが、本編にはおそらく関係ない)。

動画0:55より引用:Macであることがわかるが、この後でサイト閲覧しているのはWindows機だったりする。

ナレーションが終わると、つっちーの話は、大学の同期の結婚式で会った「カメヤマ(カメ・性別不明)」の高校の話に移る。高校の同窓会の委員であるというカメは同窓会ホームページを管理する役割を担っているらしく、そんな彼が受け取った3年後輩の女子の訃報。それをみたカメは、どんな子だろうとホームページの卒業生一覧のページを見て、隠しメッセージの存在に気づく。

カメはなぜソースコードを見た?

そもそも、カメがなぜソースコードを見たのか?というところは最初の疑問だ。死んだ女子の顔写真を見る、というところまでは動機としては理解できるのだが、その写真のページでソースコードを見るというのはやや不可解な行動だ。

カメがエンジニア職だとすると、まあ分からなくはない行動ではある。というのも、実は私もエンジニア職なのだが、気になったページはソースコード、というか開発者ツールというものを使って分析したりすることはよくあることなので、まったくありえないとも言い切れない。

ただ、その後の話で、そのホームページは「カメの友達」に頼んで作ってもらったものだという。ということは、カメ自身にはそういった知識はあまりないのではないかと推測される。

動画4:20より引用:調査(Q)が気になった人も多いようだが、これはFirefoxブラウザの開発者ツールを開くコマンド。

当ブログで調査(Q)をクリックすると、画面下部のような開発者向けの画面が開く。

隠しメッセージは誰が書いたのか

画面上では、アルバムページは2009年(平成21年)度卒から2001年(平成13年)度卒までが存在するのが確認できる(なぜ近年のものがページ上部に出てきていないのか謎。更新されていない?)。その殆どに隠しメッセージが入っているようで、どうも生徒の犯行というのは考えにくい。

後の話で、このホームページは先生などいろんな人も管理用パスワードを知っていて、パスワードなんてあってないようなものだ、という発言をつっちーがしている。このことから、一番有力なメッセージ元は、学校の教師ということにはなるだろうか。

動画4:33より引用:◎◯▲の記号の意味は果たして。

動画5:18より引用

動画5:22より引用

動画5:26より引用

動画5:30より引用

ただ、どれも、学校の教師が書いたと言うにはやや幼稚な罵詈雑言にも感じる。書かれている内容としても、「同級生たちが裏で言っている陰口」が具現化しているような印象で、教師という立ち場から出てくる暴言かというと疑問だ。「超やばい」「超うざい」のような若者っぽいワードと、「木偶の坊」とか、「醜男」みたいなワードが混在していて、どうにも一貫性がないようにも感じる。

やはり複数人が書いているのだろうか。しかし、その場合◎◯▲の記号が一貫して使われているのがまた気になってくる。この記号は不愉快さや嫌われていた度合いだろうか。死んだ女子の記号はなんだったんだろうか。

2011年以降同窓会サイトが更新されていない謎

同窓会サイトは2010年頃に更新が止まっているように見える点は、細かいが気になった点だ。

つっちーと今ちゃんのポッドキャスト(第二十回)の配信日は2017年11月。つっちーがカメに話を聞いたのもこの近辺であるだろう。では、同窓会サイトはいつ頃作られたものだろうか。

動画3:39より引用:コピーライト表示が大きく映し出される。なにか意図がありそうな演出だ。

同窓会サイトのコピーライトは「Copyright 2004-2010」となっていることから、このサイト自体は2004年頃に作られたサイトで、2010年頃までサイトが更新されていたと考えられる。

つっちーによれば、このサイトを作ったのは「カメの友人」という話だったが、2004年に制作するには2004年以前の卒業生と考えるのが普通だろう。

仮に2003年に高校卒業とすると、カメの生まれ年は1984年(昭和59年)頃。現在ならおよそ40歳程度(ポッドキャスト配信の2017年で33歳ということで、年齢設定的には結婚式で聞いた話というところの違和感はなさそうだ。よく出来ててすごい!)

では、2010年で更新が止まっていそうなのはなぜなのだろうか。

動画4:05より引用:2010年に関するお知らせで停止しているTOPページ

動画4:06より引用:アルバムページは2009年度卒、つまり2010年の卒業生の分までしか存在しない

動画6:17より引用:同窓会活動紹介のページも2010年で停止

カメは「ホームページを管理する役割」で「年に2回程度来るメールを確認する」と言っていることから、2017年時点でもなにかしら動きはありそうなのに、なぜ2010年でページの方は停止しているのだろうか。ここにかなり違和感を覚えてしまった。

2010年の翌年2011年といえば、東日本大震災があった年でもあるが……さすがにこれ以上はこじつけすぎな気がするためやめておこう。

恐怖の<コウカ>

約2分間の恐怖体験。ここ最近でこれほど鳥肌が立ったことはないというほどに鳥肌がたった瞬間だった。美しいが不安定なピアノの音色に、複数の男女のうめき声や判別のつかない喋り声。

途中や終盤にはあきらかに逆再生を用いている箇所も。ただこれは、全編が逆再生なのではなく、通常再生と逆再生の音声を織り交ぜて作成されていて、逆再生したら意味が通るとかそういう類のものでもないのではないかとおもっている。

(逆再生動画を作られている方もいらっしゃいました。感謝!)

(ピアノの耳コピという斜め上すぎる視点で考察されている方も。すごい!笑)

この<コウカ>については、様々な考察が飛び交っていて、フィルム・インフェルノとの関連を見出す声や、「降下」という掛詞から地獄への降下を連想する声も多く見られた。

実際、聞いただけで呪われそうなくらい気持ちの悪い音声で、この音声が終わると同時に『隠しリンク』のタイトルとTCG(タイムコード)が表示されて、「お憑かれさまでした」とか「チューナーが調整されました(祓除)」とか言われたときのような感覚を味わった。まさに、地獄へと飲み込まれていくような感覚なのだ。


そして、この音声のあと、BGMが消え、ナレーションの声。「隠しリンクは、このページにも、存在した」で鳥肌がスタンディングオベーション

ここからはホラー演出全力で、映像的にも音響的にもひたすらに気持ち悪いシーンが続く。素晴らしいという他ない。つっちーと今ちゃんもログアウトしてしまう。帰ってきて!

隠しリンクの先へ

<コウカ>の次のページは「この人たちを探しています」という真っ青な背景のページ。なんとなくテレ東の伝説的番組『蓋』を思い出されるようなページだ。

動画11:16より引用:途切れる「NO IMAGE」、顔の判別もつかない解像度の画像、不安になるサイズ感の男性。どれも不気味で素晴らしい。

余談だが、元ネタは行方不明者捜索のサイトだろう。これもやや不気味だとして、ネットで度々話題に上がっていた。

www.mps.or.jp

年代もバラバラで、最近のものと思われる画像から、白黒でいつのものかわからないような画像まで並ぶそれは非常に不気味で、一体「なぜ探しているのか」と気持ち悪く感じるところだ。


その次のリンクでは、掲示板サイトへリンクする。明らかに不審過ぎる投稿が並ぶサイトで、闇掲示板というべき内容だ。

動画12:01より引用:teacup掲示板(2022年にサービス終了)が使用されている

動画12:27より引用:遺体の処理方法のような投稿や、明らかに事件性のありそうな投稿が目につく。こういう掲示板、あったよなぁ。

そこからは、はてなマークが16回続き、ダウンロードリンクが。ダウンロードされるのは「キムラヒサコ.zip」。もう怪しさ満点だが、パスワードロックされたそのzipをPika Zipというツールで解析(しかも爆速で終了する解析)し、ある画像ファイルを開く。ファイルの更新日時は「1993/07/26 13:542」。笑顔の女性の移るスナップ写真で、見る人によっては心霊写真のようにも見えるかも知れないそれについて、動画の中のナレーションは一切触れない。ただ画面外の私達に向けてそれを見せるだけだ。

その後、隠しリンクをたどり続ける調査者。隠しリンクの数が6000を超えたという情報だけを残して、動画は終了する。

いや、何の目的でそんな継続してるんだよ、とかそもそも隠しリンクは1ページに一つだけなのかとか、とにかく疑問が尽きないまま取り残されてしまった。

隠しリンクの意味は

最初の同窓会ホームページの話と、隠しリンクの先の話は、リンクで繋がってはいるものの、関連性は見いだせない。

リンクというのは、簡単におけるし、どこにでも飛ばせるから、同窓会ホームページと同じサーバーである必要もないのだ。


実際、あの怪しい闇掲示板の住人が、あの同窓会ホームページを経由して掲示板に来ているかというと疑問が残るだろう。普通に考えれば、個別に存在する掲示板に勝手にリンクを付けているだけと考えるほうが自然だ。

あの隠しリンクは「地獄へ至る道」であり、同窓会ホームページはその「入り口の一つ」だったのではないだろうか。

そう考えると、あの「クエスチョンマーク16回」というのは、どこか儀式的な要素を感じずにはいられない。YouTubeコメント欄では、これは仏教の地獄でいう八大地獄と八寒地獄に関連するのでは、という考察も見かけてしまい、ますます怪しく思えてくるところだ(個人的にはやや行き過ぎかとも感じるが面白い指摘である。個人的な認識としては八大と八寒地獄は別物であり、内容にはやや疑問は残る。仏教的地獄観で見れば16というワードには「十六小地獄」のほうが結びつきそうだな、と感じた。このあたりの話は『鬼灯の冷徹』を見ると面白おかしく学べるのでオススメだ笑)。


余談だが、隠しリンクたどるためにここでこそソースコード見ろよとか、TABキー押せば見つかるだろうとか、色んな人があれこれ言っているのがちょっとおもしろいところだった。私にも、あの頃のインターネットの懐かしい記憶が蘇ってくる思いだ。


 


まとめ

今作も、多くの謎を残しつつ、「個人ホームページ」を舞台とした、最高級の恐怖表現を楽しむことが出来た。

直近では、Q制作陣の寺内康太郎氏が携わったテレ東『祓除』が盛り上がったのもあり、そろそろQの新作も見てみたいと思っていたところに、期待通りのガツンと重たい一撃を食らわされた。こんなに高品質な映像が無料で楽しめるだなんて、全くいい時代だ

全12回あるとすれば、まだ残り6回は楽しめると思われるこのフェイクドキュメンタリー「Q」。次回があがるのが、今からすでに待ち遠しい。


  1. 軽く検索をした限りでは、このポッドキャストに実際にたどり着くことは出来なかった。その他、あの同窓会サイトなども、実在はしないようだ(近年のホラー作品では、実際に用意されていることも多いので少しだけ期待したが、S1のオレンジロビンソン…でもそういう仕掛けはなかったのでQシリーズはそこまではしないということだろう。思うに、フェイクドキュメンタリーを謳っているからこそ、映像部分以外での現実とリンクさせる表現はやらないようにしているのではないだろうか)。
  2. 93年……特にこれと言ったそれらしいものは思い浮かばないが何かあるのだろうか。7/26は幽霊の日、らしいが……まあ関係はないだろう。