ささざめブログ

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【テレ東】異例のリアルイベントへの序章『祓除 事前番組』の感想と考察

 11月15日~18日に横浜赤レンガ倉庫にて開催される、テレ東60祭というイベントのなかの企画、『祓除』についての事前番組が11/8深夜に放送されたので、その紹介と少しばかりの考察を行う。

(番組公式HP)

www.tv-tokyo.co.jp

 

(番組公式Xアカウント)

https://twitter.com/futsujo_tvtokyo

 

2023/11/19追記

イベント本番が終了したので、配信の感想とちょっとした考察を綴りました。

sasazame.hateblo.jp

 

 

紹介

 2024年で、テレビ東京は開局60周年を迎えるらしい。そんな記念すべき節目に、謎のイベントが開催されることが明らかになった。それが『祓除』。

にぎやかなイベントスケジュールの中で明らかに異彩を放つ祓除
(画像引用元:テレ東60祭公式HP)

 60年を超え、『良い61年目を迎えるために行う祓除』と題された、謎しかない番組なのだが、そのタイトルと、制作陣の名前で、完全にホラー作品であるということがわかりきっており、話題となっている。

 そんな作品の事前番組というのが、11/8深夜に公開、その翌日にはTVerYouTubeでも配信され、より広がりを見せている。今回は、その事前番組の感想や、気になった点を紹介する。

 ちなみに、大前提として、今回の番組はあくまでリアルイベントに向けた「事前番組」であるため、かなり多くの謎を残したままにしてある。また、類似作品の傾向からみても、おそらく万人がコレだ!とおもえるような結論は出てこない、謎の多いイベントとなるのではないかと想像する。そういった雰囲気を楽しめないという人にはあまりオススメしない作品だ。

 

豪華すぎる制作陣

 先に、この番組の制作陣を整理しておく。

 まず、構成には『かわいそ笑』などで大人気を博しているホラー作家の梨氏、『近畿地方のある場所について』が大ヒット中の同じくホラー作家 背筋氏、放送作家のさかもと良介氏らが携わっている。

 演出には、近年『フェイクドキュメンタリー「Q」』シリーズなどで知られる寺内康太郎氏、演出・プロデューサーとして、『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』などの尖りに尖った作品をテレ東の電波にのせて配信し続けている大森時生氏の名前が上がっている。

 さらに、ラインプロデューサーとして、Not Foundなどのホラードキュメンタリーを手掛けることで有名なSS工房の古賀奏一朗氏の名前も見られた(おそらく、ドキュメンタリパートはSS工房と寺内康太郎のコンビで撮られているのではないかと推測)。

 これらのメンツを見てもらえば、もう完全にホラー作品を、中でも「ホラードキュメンタリー」を作りにきているだろうことが容易に想像される。そして実際、そういう番組であった。

 

タイトルの意味

 祓除、という聞き慣れない言葉のタイトル。ただ、漢字からして「悪しきものやけがれを払いさる」という意味が含まれるだろうことは想像がつくだろう。実際に辞書でもそういう意味で出てくる。ただし、読み方については「ばつじょ」「ふつじょ」あるいは「ぶつじょ」という読みをする場合もあるようだ。

 番組の建前としては、『これまでに人々のあいだで穢れや禍とみなされてきた映像や物品を無害化するための式典』と銘打たれているが、実際のところどうだろうか。

除?徐?

 番組タイトルには、上記の通り『祓除」と記載されているし、実際祓除という言葉も存在するのだが、アイキャッチ画像では、除の辺の部分が、加工されたビジュアルとなっている(ちなみにこれらのビジュアルはFranz K Endo氏が担当されているらしい)

 この画像だけでは、除にはあまり見えない。いったいなにか意味が隠されているのか。そんな疑問が強く増幅されるのが、事前番組本編ラストのこんなテキストだった。

引用元:YouTube『祓除 事前番組』

 除の文字が「徐」に変わっているのが分かる。ダブルミーニングなのだろうか?

 漢字としては除は「取り除く、よける」、徐は「遅い、ゆっくり」という意味がある。除くのではなく、ゆっくりと呪いが侵食していくような意味合いが込められているのか?とも思うが、そもそも「祓」という字の方に「神に祈りケガレを取り去る」という意味が含まれているのでなんとも言い難いところだ。
 ただ、少なくとも私の調べた限りでは「祓徐」という用法は一般的ではなさそうで、なにか意味があるように思えてならない。

 

本編の流れと、気になった部分の考察

 番組冒頭は、「祓除を開催する理由を説明します」と言い、その後、要因(1)から要因(5)までが紹介される。要因というには全く持って言葉足らずな映像ばかりで、ハッキリ言ってなんの説明にもなっていない映像群なのであるがとにかく不気味さばかりが募っている。

 番組の流れは以下の通り。

要因(1):■■■のプロデューサーが雑誌記者に取材を受けた際の録音テープ

 心霊企画を担当していたという、とあるプロデューサーが、どうやら自殺(?)したのではないかというような噂話をしている会話。

 

要因(2):■■■のラジオで放送された番組の録音テープ

 大したことのない人生相談からの、なにか禍々しいものを見たらしいラジオ出演者たちの会話が収録されたテープ。

 

要因(3):視聴者センターの録音データ

 ナニカがテレビに映っていると苦情を言う視聴者と、それに対応するオペレーターの会話。ファイル名は「_4520110213.mp3」。

 

祓除師の紹介:いとうよしぴよの映像

 今回のイベントで祓除師を担当するという男性、いとうよしぴよ(51)の紹介映像。

 この部分はかなりフェイクドキュメンタリー「Q」っぽさが強く、とにかく絶妙な不気味さをキープしている部分だ。とにかくよしぴよさんの雰囲気がたまらない。実は彼、実在の人物なのだ。氏の名前でネット検索をすると、noteやYouTubeでギター役者と銘打って活動されているのが見られる。事前の仕込みかと思ったが、どうやら本当のアカウントのようだ。

 なんとも形容しがたい氏の演技(あるいは彼自身の持つ人間性)が、番組全体の持つ不安さと不気味さを加速させる。どうやら、汚れや災いを取り払ってくれるような人物ではなさそうだぞ、というのがかなり想像される。素晴らしい。どこで見つけてきたんだと惚れ惚れするような人選だ。

 彼の弾くギターの演奏に乗せて、彼が祓除らしき作業を実際にしている映像が流れる。IHコンロの上で、フライパンにいれた写真らしきものを炊き上げている。どうにも内容までは判別できないが、火に照らされた彼の頬が、やはりどこか不気味に見えた。

 

要因(4):プレゼントコーナーに送られた葉書

 不気味さMAXの手紙。支離滅裂なその内容には、『このテープ』のラストの恐怖シーンを思い出された。

 ざっくり再現した文面は以下の通り。読み取れない部分は■でマスクした。改行位置は手紙の通りである。限界まで読み取った結果を一応載せておくが、やり始めて私は大きく後悔した。もうハチャメチャに疲れた。字が汚すぎる。文字と文字を重ねるな。左上の無とか気持ち悪すぎるぞ。

こんにちわ本■聞きたいことがありますの
で連絡さしておきました
皆様■のやっている事をしっかりと
ているのでしょうか、放送という井態のんてはあのよ
うなこと(それは単に論理の話ではなく〈可能性〉とし
ての話なしです、つまり何かを一つの映像■こすと
■とであり、それはを消えたとしても〈私〉として連続性をもち
つづけるものとして在り続けますあああした段階を経てな
い人びとひとにとってだと喩ば「一足飛び」の段階にある者を見せて
しまった場合それは何も知らぬ子供に飛行機の操縦を任せるかのような
暴力的なおこないであり、無責任に手をとって引き上げることが必ずしも幸せであ
るということはできないのです。そうしてか考がえると、ああした■■につい
て〈濾過〉というべき■■が施されていないことは■■に■■■
うれめるべきⅡ封なのではないか。思います。この侭では無■の視聴者の方々にあい
もしくは見えてしまう必要のないものをみせて、あまつさえそれが〈■
境の変化〉あかしであろうということになってしまうのではないかと思うのです。兄に
私はそれの凡てが悪だと断じている訳ではなくそれが〈尚早である〉というリスクを
無視してしまうのはまだ危ういのではないかと、むしろ現■■としての■点から心を
配っているのです。この忠告がいつしか、正常かつ新しい世をつくりておくための方法として
あることのきっかけになればと思っています。

 どうも、書いてある内容は、なんだかやばいものを放送しているぞという忠告のようだ。うーん、気持ち悪い。いやしかし、この読み取りで神経がすり減ったので、かなりイライラが勝っているいまだ。許さないぞ!

 ナレーションが、一部の、読みやすいところだけ読み上げたのも腹が立つ。ちょっと文面と違うし。恣意的だぞ!!

 コレと比べたら、先日のフェイクドキュメンタリーQの生配信の手紙は随分優しかった……。

 

要因(5):視聴者投稿の映像(中止.prproj)

 「怪奇 山の上の謎の光」という投稿映像。編集前の映像だから、ナレーションなどが入っていないのだが、編集予定のテロップやナレーションが文字で表現されていて、なかなか新しい表現方法だ。不気味でとても良い。

 映像的には、なにか起こりそうでなにも起こらない。だがなんだかとても気持ちが悪い。というようなものだ。

 映像の後に「祓除は必要です」とテロップが出て、再度映像が切り替わる。

 

よしぴよの祓除場所再訪

 TVクルーが、よしぴよの祓除場所再訪に付きそう映像。「敬鬼神而遠之(鬼神を敬してこれを遠ざく)」という、孔子論語が元になった言葉を引用して、祓とはなんなのかを説明する。この言葉は要するに、霊や神といった存在は敬うが、人間とは違う存在なのだと理解せよ、と言ういった類の意味なんだそうだ。よしぴよも、それと似たような主張をする。倒したり消滅させたりすることはできないのだと言う。

 終盤は、暗い川のなかで祓除を行う映像で終了。25:10には、明らかに黒い人影が川の真ん中に映る映像なんかも入れ込んで、番組は終わりを迎える。

 まあ、最後の人影はファンサービス的な要素だなとも思ってしまうくらいなのだが、ゾクっとくる演出だ。やはりよしぴよがやっていることは、霊的な存在を「祓う」ようなことは出来ていなさそうだということの表現になっているだろう。

 

 総合して、この事前番組で分かったのは「テレ東はどうやらかなりヤバイものを抱えているらしい(要因1~5で表された部分)」ということと、「祓除師よしぴよは、かなりやばい(祓除の能力は信用できないし、そもそも自分で膿などを溜め込むタイプと言っている」ということだ。これらがフックになって、本番のイベントにつながるのではないかと推測する。

 

まとめ

 結局のところ、祓除とはなんなのか。これから何が起こるのか、というのは全くわからないまま番組は終了した。気になる人は、本番のイベントを楽しんでね、ということだろう。悔しいが、私は配信チケットを購入することに決めた。

 なんとも上手いこと乗せられてしまったものである。しかし、このようなホラードキュメンタリー的作品がより盛り上がることを祈り、話題になってほしいと願っている。

 11/18のイベント当日が楽しみだ。

(配信チケット販売サイト)

pia-live.jp