ささざめブログ

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【テレ東】悲しみと残された謎。TVer限定配信の解決編『イシナガキクエを探しています(4)』

TVerにて限定配信されたTXQ FICTION『イシナガキクエを探しています(4)』についての紹介と感想です。

前回までの感想

sasazame.hateblo.jp

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放送はこちらから

tver.jp

作品紹介と感想

TV放送も終了し、もう終わったかに思えたTXQ FICTION第一弾、『イシナガキクエを探しています』。私もしっかり楽しませてもらい満足していましたが、第四回がTVer限定で配信されると聞き「いやまだ続くんかーい!」とツッコミました。

前回で大きな視点の転換を起こすような事実も告げられ、もうここから語ることはあまり多くないのでは?とも思ったのですが……実際に見てみると、そんな懸念は吹き飛ばされました。「見て良かった」と思える回に仕上がっています。

前回までの放送を振り返りつつ、前半部は前回取材した稲垣乙さんのご遺族、義一さんから送られてきた乙さんの遺品のテープ。そこには「イシナガキクエ」「番号の振られた写真」「処理」「代理人」などの謎が多かったワードに関する真実が提示されるような映像が残っていました。

内容的にも、前回嫌な想像をさせられたところがまさにその通り具現化されていたというところで、精神的にダメージを食らうような内容。でもそれ以上に、映像としてのクオリティが凄いですね。異物の気持ち悪さもそうですし、8mm/VHSなどの各映像の質感の再現度も素晴らしい。このあたりは、フェイクドキュメンタリー「Q」シリーズで培われたものを最大限に発揮しているのかな、という印象でした。

後半には、新たな映像も登場。第二回の放送で登場したYouTuberキラフも再登場し、笑顔にさせられました(直後に笑えなくなりますが笑)。そして、最後の映像では、あまりにも悲しい事実の一部が提示され、大きな衝撃を与えられます。そのまま、余韻も残さずエンド画面が映し出されました。

ぐるぐると思考の中で、「え、今のはもしかして……ということは……」と妄想がぐるぐると巡る感覚がまた味わえるとは思っていませんでした。そして、思い返せばまだ謎も残されていて、改めてなんだかすごいコンテンツを見てしまったな、という感覚にさせられました。

明かされた事実と残された謎(ネタバレ注意)

第四回までで、この「イシナガキクエ」と「米原さん」を取り巻く一連の事実が明らかになったので、改めて整理します。考察、というか妄想している部分も多いので、話半分で聞いてください。

米原さんと乙さんの「処理」

乙さんの遺品のビデオ映像には、件の「処理」の映像が残っていました。そこにあったのは第二回であった水中映像に映った白い布で簀巻きにされた遺体らしきものと、番号が振られたキクエの写真でした。

映像から察するに「代理人」とはやはりキクエを処理する上で必要となる「遺体役」のことだったようです。キクエを処理するために、非常に多くの人間が犠牲になっているということが想像できますね。米原さんの家族も全員若くして亡くなっているのは、代理人となったからなのでは……。そして、その他の代理人はどうやって調達していたのか……。

また、そんなある種凶悪な犯罪の匂いがする行為なのにも関わらず、米原さんと乙さん以外にも協力者がいたこともわかりました。多くの人が関わってこの処理に当たっていたということは、イシナガキクエというものが本当に深刻な怪異なんだろうということが想像できます。

処理の方法としては、白い布で遺体を巻き、呪言をそこに記し、番号の振られた写真をそこに載せ、地中に埋める、あるいは水中に沈めるなどの方式となっていましたが、即ちこれは「埋葬」だと思われます。代理人をキクエの代わりに埋葬することで、キクエの霊魂を浄化するというような意味なのでしょうか。米原さんの住む地域全域で、処理された遺体が少なくとも35体は埋まっていると考えると恐ろしいですね……。

それだけ埋まっているからこそ、誰かに掘り起こされたり、発見されたりしてしまわないようなリスクを考えて、定期的に監視が行われていたのかもしれない、とも思いました。その確認の映像が第二回で流されたものだったのではと。

まあそうなると、ではなぜあれがレオナちゃんに発見されてしまったんだというのも気になりますが……。

家と写真

前回の放送のあと、「あの家は別のキクエを処理している人の家かも」なんて考察をしていましたが、なんてことはなく普通に米原さんのお家でしたね。

やはり、処理のために使用していた家なのではないかと思いますが、自宅では家族に見られてしまうから、というような理由で別宅を利用していたのかもしれないですね。

ちなみに、第四回ラストシーンで、あのお札だらけの離れがあったのも、この家でした。

写真については、やはり番号のついた写真は処理済みのキクエで間違いなさそうです。36以降の番号が振られていない写真が残っているところはやはり謎のままでした。番組が強調した、あの白いなにかが口から出ている目隠しされた女性の写真はなにを意味するのか。もしかすると、キクエが生前に受けた何かの儀式の影響で怪異となってしまった、その瞬間の写真なのかもしれないですね。

米原さんの死の真相

前回は、最後に米原さんはキクエに襲われたんじゃないかとか、戦った結果負けてああなったんじゃないかとか妄想していましたが、やはり彼は自殺だったように思います。

正確には、おそらく彼は彼自身を代理人として、キクエを処理したのでしょう。焼身自殺はつまり、「火葬」による埋葬を意味していたのだと思います。

そしてその瞬間の映像は、あの廃墟を探索していたキラフが抑えていました。遠くに揺らめく人型の火がえげつないですね。キラフは運が良いのか悪いのか……。この悪運がやけに強すぎる感じはなんか白石晃士監督作品の登場人物みたいで、好きになっちゃいますね(笑)

焼け跡に残された白い布の切れ端のようなもの(前回は写真のように見えてましたが、もう一度見ると布っぽいですね)は、あの処理で簀巻きにしていたのと同じようなイメージで、体に巻き付けていたのではないでしょうか(焼け跡にあったのは、どちらかというと布テープみたいな感じでしたが、一人で作業するためにそうなった?)。

自ら準備を整え、自ら処理をする。尋常ではないですね。テレ東スタッフに引き継ぐことができたという判断をしたからなのか、あるいは急に処理をしなければならない状況にあったのか……。

米原さんとイシナガキクエの関係性

第四回最後、割れた骨壺らしきものから飛び出た写真に写っていたのは、仲睦まじそうに映る男女の写真でした。男性が米原さん本人だとすると、女性はやはり「イシナガキクエ」なのでしょう。しかし、この写真に写る彼女は、他の写真のように顔がぼやけていません。なんだか、米原さんが描いた似顔絵にも似ている気がします。

もしかして、米原さんとキクエは愛し合う関係だったんでしょうか。米原さんとキクエが、恋人同士だったんだとすると、彼のこれまで表情や言動のすべてに説明がつく気がして、もう言葉がでません。あっぱれです。

第一回で米原さんがキクエの特徴を語るとき、すごく穏やかなんですよね。優しい口調でしゃべるところから、どうも彼がキクエを「脅威」であるように認識してるようには思えなくて、彼がそれを乙さんと処理しまわっているというところのちぐはぐな感じを覚えていました。しかし、彼がかつてキクエを愛していたんだとしたら……。

実際の経緯は不明ですが、愛するキクエが死亡(目隠し写真が関係?)し、その後今の「イシナガキクエ」が生まれてしまい、乙さんに相談してそれを処理して回るようになったというところなのではないかと想像します。

愛する人を失い、彼女のようなナニカを35も処理(埋葬)し続ける……生き地獄ですよね……。だからこそ、あの過去のTV番組に出たときの言葉が重みをまします。

「見つからないのが一番いいんですけど」「キクエがもうこの世にいないことを皆さんに」

彼は本当に、もう見つかってほしくないと願い続けていたんですね。

残された謎

米原さんとキクエの関係などはかなり見えるようになってきましたが、まだ残っている謎があります。まず一つに、第三者の存在です。

  • 米原さんの葬儀のとき、家探しのようなことをしていた人物(複数?)
  • 第二回の水中映像を撮影した人物
  • 第三回で、番組宛てに過去のTV映像を送ってきた人物
  • キラフが突撃した家から写真を持ち去った人物
  • 米原さんが、乙さんに代わり処理を頼もうとしていた人物

これらが誰だったのかは具体的に明らかにならないまま第四回の終わりを迎えました。

米原さんと乙さんの処理に関わっていた人は複数いるため、今も彼らがキクエを処理しようとしていて関わってきている可能性もありますし、逆にキクエを悪用している人物(組織)が裏で暗躍しているような可能性も考えられます。

テレ東の行動もやっぱり謎なままでした。彼らはなにに駆り立てられて、どういう目的で米原さんの意思を継いだ放送をしているのか。

余談ですが第四回はナレーションが水原アナではなくなっていたので「また水原アナが犠牲になったのか……」とこっそり笑いました(笑)

最後まで、「イシナガキクエ」が何を引き起こすのかも語られませんでしたね。ただ忌々しい、あってはいけないものというだけの描写で、ここまで恐ろしいものだと表現できるのは圧巻。

まとめ

すっかり第三回で終わりだと思っていたので、第四回なんて野暮なんじゃぁと勘ぐってしまいましたが、見てみるともうすっかり揉み手をして「いやぁ~やっぱり期待していたんですよぉ~」と雑魚ムーブがしたくなってしまう満足度でした。

恐ろしい何かを直接見せるのではなくて、それを取り巻く事実を淡々と描写していった結果、その先にある恐怖や悲しみを物語として演出されていて、素晴らしい作品でした。

さすがにこのキクエシリーズはこれでラストだと思っているのですが、TXQ FICTIONシリーズはまだまだ続けてほしいですね。マジで。

一応今回はTXQ FICTION第一弾、と銘打たれているので、すでに第二段の計画もあるのかもですが……期待しています!


ところで、なんか今回はあんまり考察とかしなくていいように作った、なんていうインタビューを見た気がしたんですが、気のせいでしたかね?(笑)