ささざめブログ

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【映画】進化か、模倣か。『プラットフォーム2 (2024)』の感想と考察

大ヒット作が帰ってきた

謎の空間。番号の振られた部屋。上の階層から降りてくる台座。その上にはぐちゃぐちゃの食事。

衝撃的な設定とビジュアルで、大きなヒットとなった映画『プラットフォーム』。その続編が、ネットフリックス制作で公開されました。

(前作の感想)
sasazame.hateblo.jp

今回も全く同じ舞台で、新たな物語が紡がれます。

ちょっと辛口感想になります(ネタバレ注意です)

難解で、終盤は理解の及ばなかった前作の続きということで、この世界をより深く知る作品になるかとワクワクしていたのですが、正直に言うとちょっと期待外れでした。

前作とまったく同じ舞台でありつつ、今作ではある程度「秩序」が保たれた塔の姿が描かれます。

ある人物により統制された塔の姿に新鮮味を覚えつつも、前作を見ている鑑賞者からすると、いやいや結局欺瞞でしょ、という感じがずっとまとわりつきます。

個人的に、プラットフォームという作品というのは、「階級・格差社会のもつむごさ」と、「極限状態において人間がもつべき矜持とはなんなのか」、というところに本質があると思っています。

前作で描かれたそれを、第二作では「秩序」でかき乱したものの、結局結末は変わらないんですよね。前回は「ぐちゃぐちゃの食事」で描かれたむごさが「指導者の崇拝」という形で表現が変わっただけでしょうと感じてしまいました。


正直に言うと、前半はね、それなりに良かったんですよ。無秩序であるはずの空間に秩序が芽生えていて、更にこの空間の中で芽生える人間関係というところで、先が読めなくて少しワクワクしました。

重要な人物となるスキンヘッドで巨体の彼がまた絶妙にキュートなんですよね。盲信しているいかれた人間と比べて現実的な判断(つまみ食い)もできるし。まあそれが原因で最終的にはああなるんですけど……。

中盤以降の、例の指導者みたいなのが出てきてからは正直ガッカリでした。結局彼って、恐怖で人を支配してるだけじゃないですか。

目がくり抜かれているビジュアルも、わかりやすいキャラ付けすぎるし、あの規模の集団をまとめあげるだけのカリスマ性があるというのが信じられない。

結局最期も、主人公の集団とわけのわからぬ直接決戦のさなかであっさりやられるし、なにがしたかったん?って感じで拍子抜けでしたし、なんか「わかりやすい悪」みたいなのがそもそも本当に必要だったのかが甚だ疑問です。


ラストシーンでは、1の主人公と2の主人公関係性が明かされたところは良かったものの、その他の曖昧にぼやかされた世界観が気になりすぎて全然感動できませんでした。難しすぎたよ……。

難解のラスト

前作もそうでしたが、終盤は何らかのメタファーだらけで、深く考えずに見ていると「そのガキ誰やねん!」「なんでお前ここにおんねん!」「結局逃げられへんのかい!」とツッコミたくなるところが満載です。

聖書や神話に造詣が深いと気付きもあるのかもしれませんが、少なくとも私にはチンプンカンプン。

提示されているヒントから読み解くとすると、

  • 最下層が333。1階層につき2人。かけ合わせると666となり、最下層=地獄を思わせられる(あるいはこのプラットフォームの空間自体が地獄そのもの?)
  • 階層の入れ替え中の光景を見ても、明らかに物理法則が無視された空間
     →この空間が常世ではないということの強調
  • 最下層にいる子供を助けて降りると、その子供だけは上に運ばれていく(プラットフォーム1と同じ結末で、1では子供がメッセージだとされていた)
     →プラットフォームは地獄に落ちるような人々に対する試練? 子供を助けることが許しの条件?
     →でも、最下層で出会えるのは、単にこの中で死んだだけの人だったりする。別に助けたのが誰であろうが関係ない?
     →プラットフォームの空間は無限に繰り返す並行世界みたいな感じになっていて、あの登場人物たちもどこかの世界で子供を助け出して最下層にたどり着いた?

といった当たりで、やっぱりわかんねーな、と諦めることになりました。制作者の解説を聞いてみたいです。切実に。

まとめ

1で描いた素晴らしい世界観を引き継いだものの、描かれたテーマが陳腐化してしまった感じがあり、非常にもったいない続編の典型となってしまった気がします。

ラストも必要以上に難解で、個人的には難解にするにしてももうちょっとわかりやすくしてよ……と血の涙を流しました。

とりあえず今日は、好きにご飯が食べられる今の幸せを噛み締めながら眠りにつくことにします。