イーライ・クレイグ監督、ホラー(スプラッタ)コメディ映画『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら (2010/原題:Tucker and Dale vs Evil)』を紹介・レビュー。
紹介・感想
森の中のキャビン、バケーションにきた大学生、可愛い女の子、チェーンソーをもった大男……。
これから大殺戮が起きるぞ!なんて絶好のシチュエーションで繰り出されるのは、某芸人・アンジャッシュのすれ違いコントを思わせるようなドタバタコメディ。
主人公のタッカーとデイルは、一見何を考えているかわからない恐ろしい山の大男二人組。彼らの姿をみた大学生たちは、殺人鬼だと勘違いしておびえるのだが、実はタッカーとデイルはただの優しい青年。親友同士の彼らは、長年貯めたお金で森の中の別荘を手に入れ、そこでの休暇を楽しもうとしていただけなのだった。
ただ安らかに休暇を楽しみたいだけだったタッカーとデイル。大学生の中の一人の女の子であり、ヒロイン役となる美女・アリソンがおぼれているのを助けただけなのに、誘拐だ殺人だと勘違いされ逆に襲われたり逮捕されそうになったり。
しかも、勘違いした学生たちは暴走で勝手に自滅していくものだからもう散々。
有名ホラー作品へのオマージュも多数思わせながら、しっかりとしたゴア表現と、ばかばかしいコメディがしっかりと融合された非常にクオリティの高い作品だ。
続編も期待されていたのだが、2024年現在では製作にはいたっていないようだ。(海外ソースなどを見る限りでは、制作予定はあったのだが、脚本に問題があってプロジェクトがとん挫したような状態ではないかと思われる)
ホラーコメディが好きな私にとっては、『キャビン・フィーバー (2002)』を思い出しつつも、ドラマとしても非常に素晴らしい友情とサクセスが見られて、感動した一作だ。個人的な映画TOP10に入れたいくらいのお気に入りになった。
(キャビン・フィーバー鑑賞時の感想) sasazame.hateblo.jp
ドタバタ自殺劇だけじゃない!
この映画のレビューでは、「大学生たちが勝手に死んでいく姿がばかばかしくて面白い」という意見が多い。実際、そこがこの映画のコメディを支えている部分だと思う。
ただ、映画全体で見たときに、個人的に気に入ったのはタッカーとデイルの友情と、デイルが劣等感を克服していく物語性がとても上手く描かれていた点だった。
映画冒頭から見ていると、なんでタッカーは間抜けな感じのするデイルとあんなに仲良くしているのだろうと感じてしまうのだが、作中でその理由をしっかりと回収し、自然とデイルを応援したくなるような演出が素晴らしい。
デイル自身の描写としても、随所に優しい男だというのをにじませながら、ただ優しいのではなくて、友人のためなら男らしいところを見せるし、柔軟に相手の事情を汲む姿も見せてくれる。そんな姿をみていると、タッカーのようにデイルと仲良くしたいと思わせられるのだ。
まとめ
映画ラストは、正直ちょっと大団円すぎるというか、典型的な出来すぎエンディングな感は否めないのだが、そこに至るまでの物語はとても楽しく、最後まで飽きることのない映画だった。
ちょっと(けっこう)グロイので、ゴア描写に耐性がない人にはオススメしにくいが、元気がないときには、ぜひもう一度見返したい一作だ。