2015年公開。『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ (2015/原題:The Final Girls)』を紹介。
あらすじ
結末は・・・シナリオ通りなのか・・・
有名なホラー映画女優だった母・アマンダ(マリン・アッカーマン)を交通事故で亡くしたマックス(タイッサ・ファーミガ)。
3年後、失意の底から立ち直った彼女は、友人たちに誘われ、母が出演していた80'sホラー映画を鑑賞することに。
ところが突然、映画館で火災が発生。
パニックになって逃げ惑う中、気が付くと、物語の中に入り込んでしまう。
冒頭シーンが目の前で起こったり、映画の登場人物のはずのカートたちに会ったりとありえない出来事に戸惑いながらも、ナンシー役を演じている母にも会え、マックスは喜びの涙が止まらなかった。
だが、当然、殺人鬼ビリーも出現し、次々とシナリオ通りに殺されていく・・。
母の命が危ない! !
マックスたちが加わったことで、ストーリーは変わるのか?!
それともシナリオ通りに終わってしまうのか・・?!
紹介
80'sスラッシャー映画の中に入り込んでしまうという設定のホラーコメディ映画(恐怖度合いはかなり低めで、コメディ要素が強い)。
たまたまNetflixのオススメに出てきていて、どんな映画かわからないまま見始めたが、とんでもない個人的傑作だった。わりと、MY BEST TOP5に入れたいくらい大好きな作品だ。
邦題はファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオとなっていて、絶妙に #クソダサ邦題 の匂いを感じさせているが、ホラー映画へのリスペクト、完璧な演出、表現される画にはポップさもあってかなり完璧な映画だと感じる。
アメリカンコメディらしく、下品な要素も含まれるが、そこもややマイルドだ。まあ、物語の根幹に「セックス」というのが関わってくるので、ある程度は避けられないのだがw
日本では劇場公開されず、ディスク版により初公開されたようだが、ぜひ劇場で見てみたかった一作だ。
以下は、ネタバレを含む感想を述べる。未見の方はご注意されたし。
設定からして完璧
まず一番の肝となる設定部分、「事故で女優の母を失った主人公が、映画の中の世界に入り込むことで、まだ生きている母と再会する」というところが熱い。タイムリープで失った家族に出会うというのはよくある設定ではあるが、それを映画の世界に入り込むことで実現させたのはかなり良い発明だと思う。
彼女たちのシーンはどれも感動的だ。主演のタイッサ・ファーミガの幸薄少女感は半端じゃないし、母親役のマリン・アッカーマンも、売れないブロンド女優感と心優しい少女と強い母という、様々な要素を完璧に演じきっている。
物語の中に入っているからこそ出来るクールなメタ表現
13日の金曜日を思い出させる殺人鬼ビリーとの戦いにはメタ表現が満載で、素直に面白いと感じた。
自分たちは映画の登場人物じゃないから殺されない、と調子に乗って近づいて行って刺される、なんて刺されていったり、殺人鬼を呼び出すトリガーとなるセックスやストリップを無理やり妨害したり。コミカルな演出が詰まっている。
特に表現的に印象に残ったのは、映画の中の登場人物達が回想シーンに入る表現。ジワーッと主人公たちの周囲の風景が歪んでいき白黒の世界に変化していくという演出は、なるほどうまい、と関心させられた。
友人を失った悲しみの直後のスローモーションの演出はちょっとやり過ぎではないか、とも思ったが、笑いもしてしまった。
バカバカしさがちょうどいい
コメディ部分を支えているのは、映画の中の登場人物たちだ。特に、やはり印象に強く残るのはアダム・ディヴァインが演じるセックスしたがりクソ男と、アンジェラ・トリンバー演じるブロンドでセックス中毒なバカ女だ。
アダム・ディヴァインは個人的にはその顔のインパクトが強く、癖が強いので、そんな彼から馬鹿げたワードが飛び出ればそれだけで笑ってしまう。
アンジェラ・トリンバーは、やはりセックス/ストリップを妨害するためにガチガチに防具のようなものをつけられて、そしてビリーを呼び出すために解放、からの最高のストリップのシーンがもうやみつきにさせられる。
そのあと、めちゃくちゃ雑に殺されるのも彼女らしい。非常に可哀想だがw
その他の登場人物たちも個性たっぷりでたまらない。無駄な登場人物が一人もいない映画だ。トリー・N・トンプソン(Tory N. Thompson)なんてインパクト強すぎである。
エンディングも、大団円の雰囲気と、ホラー映画らしい「恐怖は終わらない」の演出の両方が味わえる映画だった。うん。完璧である。
『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』というタイトルだけでは想像もつかなかった傑作だった。ぜひおすすめしたい一作である。