2023年に完結巻となる5巻が発売。原作/セキアトム、漫画/箸井地図が務めた『デンタルクエスト』を紹介/レビュー。
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紹介
歯医者さんは、コンビニよりも多い。そんなにも、身近な存在なのに、歯医者のイメージというのは、かなり凝り固まったものではないだろうか。痛い、怒られる、などの恐怖のイメージ。綺麗なお姉さん歯科助手の胸が当たる下世話なイメージ。あるいは、内科/外科医とは少し違う、小規模な医者というイメージなどなど。
デンタルクエストは、そんな凝り固まったイメージを見直すきっかけとなりうる漫画だ。
主人公の歯守リンゴは、眼鏡をかけて賢く、強く、しかも美人な「歯科衛生士」だ。上記の、ちょっと下世話なイメージも持ってしまう部分はあるのだが、それ以上に能力が高い人物である面がクローズアップされるため、歯科衛生士という職のプロフェッショナル性のほうが読者に伝わる内容となっている。
歯科がテーマの漫画には、他にも「ほたる 真夜中の歯科医」や「錦糸町ナイトサバイブ」、または「歯医者さん、あタってます!」などが思い浮かぶが、デンタルクエストは現代の医療知識に基づいて、極めて真面目に歯科治療と向き合う漫画で、他にはない魅力を持っている漫画だ。
キャラクターも可愛らしく、非常に読みやすさもあり、オススメだ。ただし、内容的に、黒い大人の思惑というのがシナリオの根幹にあり、子供に読ませたい作品だろうかというと、難しいところかもしれない。大人には文句なしにオススメしたい。5巻でサクッと完結するし。
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以下はネタバレを含む感想です。ご注意ください!
歯の大事さをしみじみと感じる
医療系漫画の役割の一つとして、漫画を読んだ読者が、自分もこんな症状はないだろうかとか、自分も健康に気をつけなければ、などと警鐘的な役割があると思う。デンタルクエストは、この点でかなりの力を持っていると思った。
とにかく、歯は守らなければいけないし、なにか異常があるなら、きちんと歯科を受信するべきなのだというのがしみじみと理解させられる。
また、フッ素塗布などについての、現実世界でも続いている誤解や、歯科治療から、口腔以外の疾患を発見する可能性など、広い知識を得られる可能性を持っている。
この漫画を読んでいると、なんとなくいつもよりちゃんと歯磨きをしなければ行けないなと思うし、今かかりつけの歯科がない私は、かなり危機感を抱かされる思いだった。
ただし、内容的に書いてあるものを全て妄信的に信用するのは危険だ。WEB上では、1巻にある歯科知識の誤りを指摘している方もいるし、今後時代が進めば載っている知識も陳腐化し誤ったものになるかもしれないからだ。
また、個人的には、漫画の中で歯科助手という役割が登場しなかったのも気になった。歯科といえば、歯科医・歯科衛生士・歯科助手という3つのロールがあるものだと思っていたので、その当たりに言及がないのはなぜだろうかと思ってしまった。
口の話から命の話へ
漫画終盤は、口腔診断から舌がんの発見という重いストーリーが展開される。1巻から続く、主人公リンゴさんの因縁とも上手く絡めながら、最後を締めくくるにふさわしいシリアスな話だ。
これまでの話の流れと比べると、やや急展開にも感じられるが、個人的には5巻という短さでしっかりドラマが着地するため、好感の持てる最後だった。
それに、登場したキャラクター達はどの人も、物語の中で成長をしていく。主人公のリンゴさんも、知識や技術は最初から一級品の超一流だが、医院での仲間を見つけ、人間的により芯のある人間へと成長していったといえるのではないだろうか。
各人、それぞれの失敗と挫折と成長が見られ、自分も頑張ろうと鼓舞される作品だった。
まとめ
やや重たいテーマもあるものの、医療漫画の中では比較的見やすく、身近なテーマで非常に楽しめた作品だった。
歯への意識を高めるためにも、一度読んでみてはいかがだろうか。
余談だが、アマゾンだとなぜかシリーズ販売で出てこないので、全巻のリンクを一応貼っておく。