ささざめブログ

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【ドラマ】ネトフリ版実写『幽☆遊☆白書』の感想を正直に書く

2023年12月公開の話題作。Netflix制作の実写ドラマ版『幽☆遊☆白書』の感想を正直に書く。果たして、良作と呼べるか、問題作だったのか……!

全体的に、原作との違いを比較しながらの感想となります。諸々ネタバレ注意。

まえがき

小学生時代、私が人生で初めて買った漫画、それが幽白だった。毎月貯めたお小遣いで、一冊ずつ買い進め、とうとう19巻まで揃えきったときには達成感があったことを覚えている。

それくらい大好きだった幽白という作品が、この度、ネトフリ資本での実写ドラマ化に至った。つい先日、ONE PIECEの実写版が公開され、なかなかの高評価を博したところのため期待も高まっていたところだったが、事前に出ていたビジュアルからしてかなりの心配が強かった。

配役自体には文句はない。特に、幽助を演じる北村匠海なんか、かなりハマっていると思うし、飛影を演じた本郷奏多もかなり飛影の表現にこだわったであろう努力が見えたが、気になったのはビジュアル面。衣装と髪型への違和感がとてつもないのである。


この点は、実は舞台版幽遊白書がかなり上手く表現している。一度、公式HPを見てみてほしい。めちゃくちゃ再現度が高いことが理解してもらえるだろう。 ・出典 officeendless.com


そんなわけで、事前の評価はかなり怪しい状態だったが、とうとう放送の日がやってきた。私と同じく、幽遊白書が大好きなパートナーと一緒に見ることに。

よく見ると、全5話となっている。あの濃密な物語をたった5話で? 戸愚呂兄弟が出てくるところまでやるのに一体どうやって!?と驚いたのだが、本編を見て、さらなる驚きが待っていた――。


強烈な改変に混乱

全5話で構成するために、物語や設定はもう原型をとどめていないくらいに改変されていた。原作の色々な要素を一度箱からとりだして、床にぶちまけた後、ほしいところだけ拾って箱に詰め直した、そんな印象だ。

実際の所、予算や話数、表現内容など、出資側からの要望などで、再構成というのは必須だったのだろうし、意外にも上手くまとめたナ、という印象は受ける。しかし、あまりにも変わっているので、原作ファンな私達は爆笑してしまった。


私も、最後に原作を読んだのは10年以上前。原作は実家に置いてきてしまったので、もうスッカリ内容は覚えていないのだが、それでも色々とひっかかりを覚えてしまった。

第一話から、本来四聖獣編で朱雀が操っていたはずの魔回虫が、左京がぶち開けたらしい魔界の穴から勝手に飛び出てきて、男子学生に入って大暴れする。なんなら、幽助が轢かれる件も、本来はただよそ見をしていたカップルが運転してた車だったはずなのに、魔回虫に寄生されたであろう運転手のトラック暴走によるものとなっている(結果として、あまりにも殺意の高い事故現場が演出されて、一部の視聴者から「こんなに気合の入った事故映像は見たことがない」と謎の高評価を得ていた)。

せっかく岩本先生を冒頭に登場させたのに、なぜ彼に寄生させなかったのか?というのも疑問なのだが、おそらくアクションシーンの都合だろうな、と思う。


そんなわけで、原作につらなるシナリオというのは1話冒頭から既に消え去っており、残っているのは一部のキャラとそれに関わる展開だけだった。

中盤以降も、垂金の屋敷に雪菜さんを助けに行く話(戸愚呂兄弟との邂逅)と、その次の首縊島での暗黒武術会編がミックスされた話になっており、原作との比較は困難になっていく。


原作と比較したってしょうがないだろう、という声もあるだろう。実際、単体で見れば良く出来ているとか、原作を知らないけど普通に面白かったなんて声も多く聞こえてくる。
しかし、あの頃幽遊白書にかぶりついていた私達としては、どうしても沢山の違いが気になってしまった。

私は、そんな違いを、パートナーと二人でやいのやいのとツッコミながらみていたので非常に楽しかったのだが、もしこれを一人で、熱心に、楽しみにしてみていたとしたら、おそらく酷い評価を下してしまっただろうと思う。

原作ファンの方は、そんな「ツッコミ」の姿勢で見るのが楽しむコツかもしれない。


気合の入ったアクション

本作で最も評価されているのはアクションシーンだ。第一話から、とんでもなく濃厚なバトルアクションが展開される。

どのシーンも「フィジカルバトル」すぎるかなぁという印象こそあるが、私としてもアクションのクオリティは高く感じた。近年の日本映画が『ベイビーわるきゅーれ』などのアクションで評価されているので、その系譜だろうかと勘ぐったほどだ。
ただ、一話だけを見るとゾンビ映画感がハンパじゃなく、アクションの動きっぷりからも新感染シリーズや、『今、わたしたちの学校は…』を思い出されたのか「韓国ゾンビ」みたいだと評価している人も多かった。

原作では能力バトルな面も強いと思うのだが、まあこのあたりは実写で表現するに当たって、あまりにも漫画・アニメ過ぎると良くないという判断があったのだろうかと感じるところだ。


デザイン・衣装はやっぱり気になる

とにかく最後まで違和感が拭えなかったのは、やはりデザイン面の改変だ。

まず、全体的に髪の質感や髪型に違和感が強すぎる。蔵馬の髪の毛なんてバッサバサだし、耳を出していないからか、もっさりしすぎている(バッサバサに見えるのは、鴉による「トリートメントはしているか」を言わせる伏線という説もある)。
雪菜ちゃんも変な髪型に見えるのだが、これも耳が出ていないからだろう。出せ!出してくれ!!

いや、実際には、そういう髪型にすると違和感が強かったのかもしれない。現代っぽくなくなってしまうということなのかもしれない。けれど、舞台版の画像を見るに、もう少し原作に寄せても良かったんじゃないか……と感じてしまったところだ。


髪型だけでなく、衣装も気になった。これまた蔵馬の例で恐縮だが、あの赤いチャック式(?)の学ラン。彼のトレードマークとも言えるこの服だが、何故かバラの刺繍のような物が入っていて、あまりにも質感がてらてらして「変」だ。

しかも、母親の病室に行くシーンだけなぜか「ブレザー」に着替える。なんで着替えた!つか、制服はそっちなのか!?じゃああの刺繍の入った服はなんだったんだ!と、爆笑とともに脳がフリーズしたほどだ。

おそらく、「こんな赤くて変な形の制服あるわけがないから、こっちは普段着(戦闘服)で、制服は別に新規デザインにしよう」みたいな会議が行われたのだろう。そして、わざわざブレザー制服を使ったが、実際に撮影した結果そのシーンというのがあの病室のワンシーンだけになってしまったのだろう。

そんな風に経緯を解釈することはできるが……いや、やはりどうやっても気になってしまうところだ。

蔵馬以外でも、飛影はなんかエスニックな服になっているし、ぼたんの着物がそういう夜のお店のコスプレみたいな質感にしか見えないし……衣装は気になるところが沢山あった。


ただ、上手くいっているところも多かった。北村匠海の演じる幽助は、かなり原作に近い雰囲気が再現できていると思うし、敵陣営の戸愚呂兄弟、鴉、武威らも良く出来ていた。稲垣吾郎演じる左京さんもなかなか悪くなかったし、特に一番良かったのは春海四方さん演じる垂金権造。
原作が元々(いい意味で)狂ったデザインだっただけに、それを実写に上手く落とし込んだナイスな表現だった。

あと、玄海を演じた梶芽衣子がとても美しくって、玄海だなぁ、と納得できた部分だ(若いシーンは個人的にはもっと可愛くしてあげても良かったんじゃないかとおもったが)。


まとめ

色々と原作と比較して難癖をつけてしまったが、作品としては、存外に楽しめたと言いたい。
ただ、そう言えるのは、私がパートナーと二人でやいのやいのと難癖をつけながら楽しんでいたからだろうと思う。やはり、純粋なドラマ作品として見たときの面白さというのはなかなか判断が難しいところだ。

ドラマだけでは、幽助の心優しい面や、玄海と戸愚呂弟の関係性、桑原が天才であるところ、飛影が雪菜のことを大切に思っていることなど、さまざまな情報が読み取り切れなくなってしまっていると感じた。 それに、アクション面は凄いかも知れないが、難敵をいかに巧みに打ち倒すかという面白さも物足りなかった。剛鬼戦で口に棒を突っ込んでそこに霊丸を放つところの再現や、妖狐蔵馬VS鴉、飛影VS武威なんかはよく出来ていたとおもうが、その他はこれは!というところがなかったのだ(というか、桑ちゃんの見せ場なさすぎじゃね!?)。

改めて文字に起こすと、やはり文句ばかりが重なってしまった。ただ、この2023年という現代に、また幽遊白書という作品がひとつのうねりを巻き起こしたというのは喜ばしいことだ。その点は評価されてほしいと思う。
ただ、もし原作を知らない人でこのドラマだけを見た人がいれば、是非原作にも触れてみてほしい、そう思わせられる内容だった。


今後の展開を想定されているのかは分からないが、できることなら是非魔界の扉編も映像化されれば、また文句を言いながら、なんだかんだで楽しめるだろう。(パートナーが刃霧要オタクなので、是非かっこいい彼を登場させてあげてほしい)