ささざめブログ

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【漫画】オタクの恋路は甘くて苦い『古オタクの恋わずらい』(全4巻)の感想

ニコ・ニコルソン著『古オタクの恋わずらい』を紹介/レビュー。

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紹介/感想

鬼滅の刃空前絶後大ヒットを記録するなど、オタク文化が一般に浸透してしまった現代と、約25年の時を遡り、『スラムダンク』『るろうに剣心』『幽遊白書』に『スレイヤーズ』など、今ではすっかりレジェンドな作品たちが現役だった1995年頃。2つの時代を舞台に、オタクな主人公・佐東恵と、オタク嫌いな青年・梶正宗との恋路を描くラブコメディ。

オタク要素と、ラブコメ要素の割合が絶妙で、どちらか一辺倒にならないまま最後まで駆け抜けた名作。過去と現代が繋がって、シビアな現実を見せつけながらも、最後は大団円を迎えるので、途中で止まらずにぜひ最後まで読み切ってほしい一作だった。


ニコ・ニコルソンさんの著作は、以前に呼んだ『アルキメデスのお風呂』以来。

sasazame.hateblo.jp

アルキメデスのお風呂』でもそうだったのだけれど、この人の描く漫画は、キャラクターの心情描写が半端じゃなく鋭くて苦い。読むだけで、真っ暗な深海に引きずり込まれていくみたいな、面白さと辛さが同時に駆け巡ってくる。すごい。

本作でも、中盤はかなり精神的に辛いシーンが続くのだけれど、今回はそんなときに助けてくれるキャラクターたちが個性的かつ魅力的で、楽しく読み切ることが出来た。

というか、1巻から主人公にアニメージュの踏み絵をさせたり、オタクでなぜ悪いと眼鏡を白く光らせながら言ってるクレイジーオタクなミコさんの話がもっと読みたかったよあたしゃ。

あまりにも解像度の高い"古オタク"

タイトルにもなっている「古オタク」の要素は、かなり漫画の魅力を高めていると思った。

ニコ・ニコルソンさん自身が生きたオタクとしての生きざまが完全に物語に反映されていて、オタク友達との文通やらコミケ参加やら、随所にあまりにも濃すぎる思い出が刻まれている。

多分、今主人公と同世代の40代オタクたちは、読むだけで思い出が溢れてきた楽しくなるか、逆に目をそむけたくなっちゃうんじゃないかというくらいの解像度で素晴らしい(ちょっと自分は世代がずれているのと、そこまでの熱があるオタクじゃなかったので、ドンピシャで刺さりはしなかったが……w)

なんにせよ、当時を生きたオタクがあの頃を懐かしむためにも読んでみてほしい一作だ。

まとめ

一筋縄ではいかないオタクの恋わずらい。全4巻で、苦くて胸が締め付けられるところも、ときめく部分も、楽しく笑える部分も、しっかりバランスよく堪能できる。

これから先、どんどんオタク文化は一般に広がっていくのかもしれないが、もっともっと隠れてひっそりと生きていたようなあの頃の時代を懐かしむような古オタク世代の読者は、ぜひ一度手に取ってみてはいかがだろうか。