ささざめブログ

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【漫画】乙女と阿呆に祝福を『夜は短し歩けよ乙女』(全5巻)の感想

森見登美彦原作、琴音らんまる著『夜は短し歩けよ乙女』(全5巻)を紹介/レビュー。

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紹介/感想

森見登美彦の夜は『夜は短し歩けよ乙女』と『四畳半神話体系』にもう存分に影響を受けた学生時代を持つ私が、この令和の時代に改めて出会ったのが、この夜は短し歩けよ乙女の漫画版。

四畳半シリーズのデザインにて再現された映画版も大変好評なところだが、漫画は初体験。あの頃の思い出を引き出しの奥底から引っ張り出しながら読んでみたところ、これは大当たりな出会いだった。

文学少年少女には今更説明不要な超傑作の原作だが、簡単に言えば、京都の某大学に通う阿呆な男・私と、彼が出会う同じサークルの後輩・黒髪の乙女の二人を中心に、奇想天外な恋愛模様(?)が繰り広げられるファンタジーなラブ・コメディだ。

森見登美彦の書く文章は、読むとしばらく影響が抜けなくなるというくらいのパンチ力があるのだが、琴音らんまる先生の漫画になってもその威力は相変わらず。あの頃と同じようにこの不可思議ででもちょっとおバカで、愛らしいキャラクターたちに翻弄されっぱなしの漫画体験を得られた。

四畳半シリーズのビジュアルとはまったく違うデザインで、最初は不安になるところだが、読み進めれば全く気にならなかった。(個人的には樋口師匠は向こうのほうが、不思議な魅力が感じられて好きではあるのだが、漫画版はちょっとイケメンそうな感じが出ててこれはこれでありである)

どうやら、原作ファン(おそらく、特に原作を読んで間もない人や四畳半アニメから入ったような人)には、デザイン的な不満があったと思われ、世間的なレビューなどはあまり評価が高くないのだが、2024年の今読んだ私としてはこれはもうあっぱれな漫画化だった。

偽電気ブランが飲んでみたくなる一作。

森見登美彦のコメントが良い

1・2・5巻のラストには、原作所・森見登美彦のコメントが掲載されている。これがまた良い。あぁ、買ってよかったなと思わせられる内容で、作品の魅力を存分に語っていて、原作者がこう言っているなら私が読んで楽しめたのも当然だろう、と思わせられる。

原作付き漫画の原作者コメントで、なんだかちょっとガッカリするようなこともあるわけだが、こればかりは最大限に拍手をしたい内容だ。是非読んでみて欲しい。

ちなみに、この作品、新装版も出ているのだが、そちらにもコメントが載っているのかどうかは謎だ。

まとめ

とにかく可愛い黒髪の乙女に、あの頃と同じように恋をしてしまったわけだが、「私」の方もなかなか憎めないやつで悔しいところである。ラストなんかはなんだか少女漫画を見ているような甘い雰囲気が出ていてこれまた憎らしい。

樋口師匠に羽貫さん、学園祭事務局長の彼、パンツ総番長に古本市の神など、原作を読んでいた頃に思い描いていた彼らが漫画の中で楽しく動き回るのはやはり楽しいものだった。

まあめんどうなことは抜きにしても、ヒゴイを背負って走り回るプリンセス・ダルマがあまりにも可愛いので、そこだけでも読んでほしいと思ったりするのである。