ささざめブログ

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【映画】少女3人組夏の恐怖体験 スウェーデン産ジュブナイルホラー『災い (2017/原題:RUM 213)』

2017公開。日本では(おそらく)amazon プライムビデオ限定配信作の「災い」を紹介。

あらすじ

親に連れられ、夏の合同キャンプにやってきた主人公のエルビラは二人の少女、メヤ・ベアと同室グループとなる。監視員の(いかにも抜けていそうなブロンド)女性ジェニファーのミスにより、使う予定だった部屋は使えなくなってしまい、閉鎖されていたはずの「213号室」を使用することに。しかしその部屋に泊まり始めると、彼女たちを怪奇現象が襲うようになり……。

 

紹介

日本タイトルは災い、だが、全く本編と関係ない #クソダサ邦題 である。原題はRUM213、英題はROOM213。つまり、単純に「213号室」というタイトルだ。日本でもそのまま「ルーム213」とか、「213号室」とかでもよかっただろうと思うのだが……。

プライムビデオにて、日本語字幕で鑑賞したが、翻訳の精度がやや低く、おそらく原語の魅力が最大限に発揮されてはいないと思うのでやや注意が必要。特に、映画序盤は、そのフォントも相まって違和感が強かった。個人的には見ているうちに気にならなくなったが。

原語もスウェーデン語らしく、英語のように聞き取ることもできないので、ここは少し辛い所だ。

 

子供が主人公であるのもあり、ホラー描写は優しい。どちらかというと、子供特有の人間関係や女子3人組という関係性の危うさなんかが中心である。怖いものを見るぞ!と思ってみると拍子抜けしてしまうが、いわゆる「ジュブナイルもの」だと思ってみれば、そこまで悪くないのではないだろうか。

個人的にだが、監視員のジェニファーがやけにキャラクターが立っていて、美人なのも相まって非常に気になる存在だった。意外に面倒見が良いのも好感が持てる。彼女にクローズアップして見てみるのもおすすめである。

 

感想(ネタバレあり)

物語全体としては、少女3人組が仲良くなったり仲が悪くなったりを繰り返しながら、やんちゃな男子との恋愛模様もありつつ、心霊現象に立ち向かっていくという流れ。

最後まで見てしまうと、ハッキリ言って、怖くない。ただ、中盤の薄暗い廃墟の雰囲気や、その中で起こる怪現象など、ところどころでのホラー描写は全然悪くないし、映像的には私はなかなかよくできていると思った。

 

少女3人組の友情模様については、なんとなく自分でもわかるような「女子あるある」という感じ。3人いたら2人が仲良くて1人がハブられて…。でもあることがきっかけでその2人の組み合わせが変わって別の1人がハブられるようになって…。でも最終的になんか上手くいくと3人で仲良くなれるという。

私は男なので、実際のところどうなのかというのは分からないが、想像する女子というのはこういう人間性を持っているように思う。海外でも同じような感覚なのだなぁと思うと感慨深い。

仲が決裂するだろう、というような展開でも「ごめん」の一言で許されるのは、子供ならではだろう。

男子たちの行動も、あるあるだなぁというのが強い。好きな女の子相手に素直になれない感じは万国共通なのだろう。というか、主人公の恋人役の子、もうちょっと自分から動きなさいよと思うのは私だけだろうかw

 

正直、シナリオの流れとしては、突拍子がないなと感じる面がかなりある。頭にハテナが浮かぶシーンも多いのだが、登場人物が12歳の子供であるおかげで、その突拍子のなさも案外自然なのではないかと受け入れられる。これは私も不思議だなと思わせられる。

 

最終的に、幽霊の存在を受け入れて、めでたしめでたしとなる。悲しい結末を迎えることもなく、ジュブナイルホラーらしく明るい未来を思わせる最後でナイスだった。(それにしては、冒頭で「このキャンプのことは話さない、なんて言っていたが…)

 

考察:幽霊メベルの目的は何だったのか

映画を見るだけではややはっきりしないのが、この怪異、メベルそのものだ。下記の描写から、彼女は1961年に12歳でこの世をさった少女であるということが分かる。

・1961年ヨールディスとメベルが一緒に映った写真が見つかる(赤い屋敷の主はヨールディス本人と思われる)

・終盤、メベル死亡記事が見つかる。死因は不明

ヨールディスとメベルの写真。右がメベル。やたら美人だ。

死亡記事を見てわかる通り、死因こそ不明だが、彼女の死体は見つかっている。邪推をするならば、当時、ヨールディスを含む子供たちがなんらかの事件を起こして殺害して、その未練が……などとも考えられる。

しかし、普通に考えて、そんな悲劇を引き起こした側の人間は、あんなふうにメベルの写真や記事をスクラップにしないだろう。おそらく本当に事故だったのだろう。

 

メベルは主人公にコンタクトを取り「見つけて」という。当初私は、死体をみつける的なよくある展開なのかとも思ったが、これも死亡記事がでていることから死体は既に見つかっているとわかる。

ここからは推測になるが、メベルは「メベル」であることを認知してほしかった、知ってほしかったというようなことなのではないだろうか。

モノを隠すとか、ちょっと驚かすとかは、12歳の子供らしい行動だし、あまり攻撃性を感じない。足をひっかいた件はよくわからないが、自分自身がそのような怪我をしたのを追体験させたのかもしれない。

そのような行動を通して、自分という存在がまだそこにいるんだということを認識してほしくて、あのような事象を引き起こしていたのではないかと思う。

 

物語の最後は、彼女からのビデオレターで締めくくられる。

213号室を開けてくれてありがとう

ずっとからっぽだったの

生き返った気分

最高の気分だったわ

それじゃあ

このメッセージだけを見ると、ただ単に部屋を開けただけで感謝しているように見えてしまう。

しかし、彼女が12歳の子供だったことを思えば、一緒に遊びたいとか、名前を呼んでほしいとか、自分も男の子とイチャイチャしたいとか、そういう俗っぽい欲求が根底にあったのではないかと思う。

「見つけて」というメッセージと整合性が取れていないというのが私の率直な感想ではあるが、子供の言葉だから、と思えば無理やり納得が出来る。

 

スウェディッシュ映画と言えば、他にもミッドサマーやLAMB/ラムなど、有名な作品が多い。この「RUM213」は有名とは言えないが、それなりに楽しめる作品ではあると思う。機会があれば是非見てみてほしい1作だ。