ささざめブログ

さめざめと語ります。日記、エッセイ、短編、感想、その他。

【映画】意外な堅実作!ファンタジーサスペンスコメディ『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。(2023)』

2023年公開。映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』を紹介。

あらすじ

赤いずきんを被った少女・赤ずきん(橋本環奈)は、旅の途中、灰だらけの少女・シンデレラ(新木優子)と出会う。魔法使いに素敵なドレス姿に変えてもらい、舞踏会へ向かったふたりだったが、カボチャの馬車で男をひき殺してしまう。バレるまいとさっさと死体を隠し、ふたりはお城の舞踏会へ。シンデレラと王子様(岩田剛典)が恋に落ちたのも束の間、死体が見つかり舞踏会は中断。絶体絶命のふたりの前に次々と現れるクセだらけの人たちの中に、真犯人の影が…。赤ずきんは、持ち前の洞察力と図々しさで事件に立ち向かう?!
「美しさこそがすべて」の国で起こった悲劇の真相とは…?

出典:Netflix映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』キャスト・登場人物・出演者一覧/あらすじ | ORICON NEWS

 

紹介

今日から俺は!や勇者ヨシヒコシリーズで、一躍コメディ監督としての地位を確かなものとした福田雄一によるNetflixオリジナル作品。この度、全世界に向けて配信がスタートしたのがこの作品。

名作おとぎ話の主人公、赤ずきんをミステリーの探偵役として配置し、更にシンデレラの世界も組み合わせて、とある殺人事件を解決に導くファンタジー・サスペンス・コメディ。同名小説が原作。

 

ちなみに、邦題は『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』と原作小説に忠実な一方、英題は"Once upon a crime"と、"Once upon a time"をもじってオシャレに仕上がっている。

 

福田雄一作品で世界向けの作品とは果たして……と恐る恐る観てみたら、中身は意外に堅実に仕上がっていて十分楽しめた。逆に、福田雄一作品"らしさ"は良くも悪くも薄めに感じる。

全体的に堅実に制作された印象で、一般向けにも楽しめるサスペンスコメディとして、綺麗にまとまっていると感じた。気楽に見れる作品だろう。一方で、やや中途半端な印象もあり、物足りないと感じる人も多そうだ。

 

以下はネタバレを含む感想です。ご注意ください!

赤ずきんのビジュアルが素晴らしい

赤ずきんを演じるは、橋本環奈。その、奇跡の可愛さが遺憾なく発揮されている本作だが、彼女の美しさをさらに引き立てる、その衣服デザインが素晴らしい。

コスプレ的に見えてしまうかもしれないくらいデフォルメされたその衣服は、私はかなり可愛らしくもかっこよくも見えて、かなり引き込まれた部分だった。

 

一方で、周囲のキャラクターはやや浮いた美術の印象も受けてしまう。ただし、各キャラクターの美貌は素晴らしい(韓国系美女のような雰囲気も出ていた)。ただし、やや大げさな美術面についてはは、これがあくまでコメディがベースなんだとわかりやすいようにも作られているようにも思えるため、必ずしも悪いとは言えないところだ。

 

福田雄一作品"らしさ"は良くも悪くも薄め

先述の通り、福田雄一作品に見られるような独特な雰囲気や、ムロツヨシ佐藤二朗長回しなどはかなり控えめな印象を受けた。

あのナンセンスギャグの雰囲気が割りと好きだった私にとっては、やや物足りない部分ではあった。

 

ただ、世界に向けて発信する作品としては、受け入れられるギリギリのラインで入れ込まれているのではないかとも感じられる。結果的にこの采配により、物語に集中できる作品となっているのではないだろうか。

やはり、作品としてはまず赤ずきんが探偵役として事件を解決していくという構図の面白さが第一に来るので、その点の表現には大成功しているように思うのである。

 

翻訳で抜け落ちてしまう表現がちょっと心配

一部のファニーな部分は、翻訳で抜け落ちてしまっているのではないかというのは心配なところだ(まあ、国内鑑賞者である私がわざわざ心配することじゃないだろうと言われたらそれはそうなのだがw)

 

例えば――

赤ずきん:(息切れしてゲホゲホと咳き込む魔女に対して)え、ちょっと、死にますよ?

英語版:Um, ma'am, do you maybe need some help?(えっと、おばさま、何か助けが必要じゃないですか?)

 

王様:(空気の読めない発言をする赤ずきんに対して)心臓エレファントなのきみ?

英語版:Anyone ever explain timing to you?(誰かにタイミングってもんを教わらなかったの?)

 

継母:(真矢みき扮する継母が王子を引き止めるために言う)諦めないから!あなたのことが好き(ちゅき)だから!
英語版:haven't given up yet! And we still really like you!

(まあ、これは中の人ネタ+チャン・ドンゴンネタであるわけで、英語で表現するのは無理があるだろうが……)

 

こういったギャグの部分は、上手く各国ネイティブに向けて伝わるようにローカライズされているのだとは思うが、最大限表現出来ているのかは気になるところだった。

 

まとめ

私としては、中盤、お城での推理シーンがやや退屈で長ったらしいと感じてしまうところもあった。

しかしながら全体を通してみれば、堅実にしっかりと資金と時間を書けて作られた、良質サスペンスコメディであると感じた。

一方で、福田雄一作品としての雰囲気は少しオミットされてしまっていて、彼のファンには残念に感じさせられるところかもしれない。

 

日本のファンからの目は厳しいが、私としては日本の作品が海外で盛り上がるというのは非常に嬉しいことだと思っている。

この原作はまだ「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」と、赤ずきんを主人公としてまだまだ広がりを残しているので、是非もっと盛り上がり、続きを制作するような時が来てほしいと願っている。