2022年公開。映画『ベイビーわるきゅーれ』を紹介。2023現時点でアマプラ/NETFLIXともに配信中。
あらすじ
女子高生殺し屋2人組のちさととまひろは、高校卒業を前に途方に暮れていた・・・。
明日から“オモテの顔”としての“社会人”をしなければならない。組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たち。
突然社会に適合しなければならなくなり、公共料金の支払い、年金、税金、バイトなど社会の公的業務や人間関係や理不尽に日々を揉まれていく。
さらに2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪に。
そんな中でも殺し屋の仕事は忙しく、さらにはヤクザから恨みを買って面倒なことに巻き込まれちゃってさあ大変。
そんな日々を送る2人が、「ああ大人になるって、こういうことなのかなあ」とか思ったり、思わなかったりする、成長したり、成長しなかったりする物語である。
紹介
これからの日本映画界を背負っていくであろう若手監督。その中のひとりが、本作の監督阪元裕吾だ(と、私は個人的に思っている。ちなみにもう一人推しているのは宮岡太郎監督)。
ベイビーわるきゅーれは、そんな阪元裕吾監督の中でも最もヒットし、話題となった作品。前作にあたる「ある用務員」の中でもひときわ輝いていた、女の子殺し屋二人組を再構築し、最高のキャラクターに仕上げた一作。
北野武監督作品のように、人の命が異常に軽く、異様な死生観でありながら、どこかゆったりとしたぬるま湯の如き心地よさが味わえる雰囲気。主役二人の素晴らしさもあって、ずっとこの世界に浸っていたいと思えるほど。
主役の二人がとにかく素晴らしいのはもちろんだが、周りを固める俳優陣もまた良い。ラバーガールの二人はいいアクセントになっているし、本宮泰風がクレイジーヤクザを演じていたり、コワすぎの工藤Dで人気を馳せる大迫茂生がなんだか頼りない男を演じていたりと、楽しさが尽きない。
アクションにも力が入っており、ジョン・ウィックシリーズ監督にも称賛(?)されるほど。
以下、ネタバレあり感想です。未見の方はご注意ください!
とにかくキャラクターが良い
先述の通り、やはり主役二人のキャラクターがあまりにも良すぎる。
めちゃ可愛、おバカ、憎めない天然、でもカッコいいところもみせるちさと(演:髙石あかり)はとにかくキュートなのに、離れがたい魅力を感じる人間だ。
もう一人の主人公はコミュ障、めちゃスゴアクション、健気な金髪ショートカットのまひろ(演:伊澤彩織)で、こちらはさらに魅力たっぷり。彼女のことを好きにならない人などいるのだろうかというくらい愛らしい。
二人の掛け合いはどれも記憶に残るものだが、やはり本作一番の見所は、最後の戦いに挑む直前のシーン。
(ケーキの皿視点のカット)
ちさと「二人で生き残ろうね」
まひろ「かえったらケーキ食べようね」
これから死ぬかもしれない戦いに行くってのにこの青春感を出せて、しかも全然違和感がないのはやっぱりキャラクター造が完璧だからではないだろうか。
ストーリーはあってないようなもの
キャラクターと世界観はとにかく素晴らしいが、ストーリー部分を楽しみたい人にはやや物足りないかもしれない。
結局のところ本作は、若い女子殺し屋二人がお金がなくて苦しんでいる内に、ヤクザとのバトルに発展してしまったけど、なんだかんだ生き残って助かった、というくらいの話だからだ。
ストーリーと言う面では、前作「ある用務員」のほうが、重厚で分があると言えるだろう。
まとめ
本作の楽しみ方としては、まずそのキャラクターの良さに目を向けて、細かいキャラクターたちの言動のおかしさと楽しさ、さらにクオリティの高いアクションを楽しむのが良いのではないだろうか。
本作は今年続編も公開されている。そちらもいずれぜひ鑑賞したい。