2021年公開。阪元裕吾監督作、『黄龍の村』を紹介/レビュー。
紹介/感想
これ、村の決まりやから――。
『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで大注目を浴びている阪元裕吾監督の2021年の作品。同作や『最強殺し屋伝説国岡』『ある用務員』など、「殺し屋」というテーマの作品で独自の世界観と質の高いアクションが評価されていた監督による、「村ホラー」作品だ。
正直に言うと、これはネタバレ厳禁系の作品であるため、あまり情報を入れずにまずは見てみて欲しいところ。まるで遊園地のコーヒーカップに乗りながらジェットコースターで駆け抜けているような楽しい感覚が得られる作品である。
しかし、作品の性質として、前半部分はとにかくストレスがかかる。抑圧されるシーンが続くので、何も知らずに見ていると途中離脱してしまうかもしれない。なので、それはそれで「何も見るな」というのも悩み者なのだ(そもそも、監督名や出演者自体がネタバレ要素となるレベルだし、さじ加減が難しい)。
そんなわけで、2024年2月現在、本作はNetflixで気軽に見ることが出来るので、もし自分でも見ようかと悩んでいるなら、この記事を読む前にまずは観てみて欲しい。
抑圧からの解放
ここからは、軽いネタバレも含む感想を綴るので、閲覧注意だ。
映画の冒頭はバーベキューを楽しむムカつく大学生たちが、山道で車がパンクし、山中で見つけた村に助けを求めるところから始まる。謎のオブジェ。あまりにも怪しすぎる村人。準備の良すぎるご馳走。白仮面の儀式。もう因習村ホラーとしての舞台が完全に整えられていく。
そして、どんどん死んでいく登場人物。え、その人も死んじゃうの⁉と驚いているうちに、もう生き残りがわずかに。まさかこいつ一人でこのあとを…と疑心暗鬼になったところで、ようやく物語が始まる。
そこから阪元裕吾ワールド全開で映画は急転していくのだが、ここの「待ってました!」感がたまらなかった。前半のイライラを乗り越えたご褒美のようなものである。
爽快感とバカバカしさと青春と
後半に入ると、映画は一気に色が変わる。勢いのあるアクションと、ムカつくキャラクターがバッタバッタ倒されていく爽快感。
命のやり取りをしているとは到底思えないバカバカしいやりとりがまた最高で、各キャラクターの会話劇や不思議な関係性が楽しいのも良いところだ。
阪元裕吾監督の描く、サバサバとした命の感覚と、溢れ出るエモさ・青春感が好きな人なら、本作も間違いなく楽しめるだろう。まあ逆に、それが合わない人にはとことん合わないだろうなとも思うが笑
最後のエンドロールとその後まで含めて最高なので是非オススメしたい一作である。
まとめ
好みが分かれそうな作風ではあるのと、前半シーンがかなり精神的にクるのはあるが、個人的には大満足な一作だった。伊能さんを中心に阪元組の皆さんがとにかくカッコいいし、キャラクターが立ってて癖になる。
ちなみに、本作が楽しめた人は、現在アマプラで『最強殺し屋伝説国岡 完全版』が見れるので、是非見て欲しい。撮影自体は本作よりも前で、本作以上に荒い作りなところはあるが、エッセンスの部分は変わらない良さがあるはずだ。