狩野アユミ原作、パルプピロシ キャラクター原案、小田ヒロ著『草魔法師クロエの二度目の人生 自由になって子ドラゴンとレベルMAX薬師ライフ』(既刊3巻)を紹介/レビュー。
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紹介/感想
令嬢死に戻り系ファンタジー作品。火・水・風・土の四大魔法が崇拝される価値観の王国に生まれた主人公・クロエ。火魔法の適正を得ることを実の父母から期待されていたが、彼女の適性は「草魔法」だった。
物語の冒頭は、そんな「草魔法」を得てしまった彼女が、両親からも、唯一信用していた相手からも見捨てられ悲運の死を遂げる所から始まる。そして、次に彼女が目覚めたときには、あの魔法適性の検査を受けた日に時が巻き戻っていた。
前回の人生の失敗を糧に、「もう誰も信用しない」と心に決め、生き延びるために戦い続けるクロエ。前回の生から引き継いだ草魔法のレベル、そして新たな出会いにより、好転していくように見えるその道には新たな障害が次々と立ちふさがっていく。
とにかく読んでいるだけで、「お、重い…」「なんでそんな悲しい思いをさせるの!」とクロエを取り巻く悪意に怒りを覚えずには居られないのだが、クロエ自身の強さのもたらす安心感と、二回目の人生で新たに関わることになる人々の優しさが原動力となってページを捲っていきたくなる作品だった。
死にゆくドラゴン授かった子ドラゴンや、新たな家族という、前回は得られなかった真の理解者たちとの関係性がどうなっていくのか。彼女が平穏に暮らせる日はくるのだろうかとハラハラしながら楽しめる一作。
老人キャラが素敵
第二の生で主人公が新たに出会うことになるキャラクターたちの多くは好きになれるキャラクターが多いのだが、個人的には老人キャラたちがみんなカッコよくて推せるキャラだなと感じさせられた。
主人公が最初に出会うのは、草魔法の師匠となる庭師のトムじいさん。見た目通り柔和で優しく、それでいて草魔法の実力も高い彼。一見、漫画でよく見る「師匠」キャラではないのだが、しっかりとその役目を果たしてくれる。こういう、孤独な主人公を「見守る」みたいな人の話は条件反射的に泣きそうになってしまう。
本作一番の色気を醸し出すのは、主人公の祖父で辺境伯のリチャード。白い長髪で細身のイケオジという感じで、そもそもがかっこいいし、孫を真剣に守り愛す姿がとにかく素敵だ。こんな出来た人からあんな娘が生まれるのかと思うと……人生とは難しいものである。
もう一人、忘れてはならないのは、辺境の神官長・ドーマ。こういった作品での神官というと、面倒な曲者の印象がどうしても拭えないのだが、彼女は聖母的な優しさがありつつも実直で、腐敗している中央へ悪態をついているところなんかを見ていると、もう応援せずにはいられなくなるキャラクターだった。
まとめ
実の両親(継母とか妾の子、とかじゃなくてマジで実の両親だし正妻の子)から見捨てられるという壮絶な体験を、二度目も味わうことになる主人公。もうとにかく不憫で、漫画版の可愛いキャラクターも相まって、抱きしめてあげたくなるような物語だ。
なぜ死に戻りが起きたのか、そして彼女に平穏はやってくるのか。まだまだ次が楽しみな一作である。