2014年公開。映画『グランド・ブダペスト・ホテル』を紹介・レビュー。
あらすじ
美しい山々を背に優雅に佇む、ヨーロッパ最高峰と謳われたグランド・ブダペスト・ホテル。その宿泊客のお目当ては“伝説のコンシェルジュ“グスタヴ・Hだ。彼の究極のおもてなしは高齢マダムの夜のお相手までこなす徹底したプロの仕事ぶり。
ある日、彼の長年のお得意様、マダムDが殺される事件が発生し、遺言で高価な絵画がグスタヴに贈られたことから容疑者として追われることに。愛弟子のベルボーイ・ゼロの協力のもとコンシェルジュの秘密結社のネットワークを駆使してヨーロッパ大陸を逃避行しながら真犯人を探すグスタヴ。
殺人事件の真相は解明できるのか!?
紹介
本作は、アカデミー賞4部門受賞など、華々しい肩書を手にした、傑作のコメディドラマ。
あらすじの通り、伝説のコンシェルジュと、その弟子のベルボーイの大冒険活劇を中心として映画は描かれる。シュールでコミカルなコメディをベースとしながら、サスペンス/ミステリー要素や、感動ドラマ的要素も含んだ脚本で、一切飽きることのない作品に仕上がっている。
特にこの映画を代表しているのは、徹底的な画作り(シネマトグラフィー)や美術群である。ビビッドで高品質な美術群や、圧倒的こだわりを感じるアングルやシンメトリカルなデザインが、まるで絵画作品をパラパラ漫画のように楽しんでいるかのような驚きとワクワクを生み出していてる。
ホテルを舞台にした映画といえば、三谷幸喜の『THE 有頂天ホテ ル (2006)』が思い出されるが、それとはまた全く異なる、壮大で楽しい映画だった。
以下はネタバレあり感想です。ご注意ください!
映像表現がスゴすぎる
先述の通り、この映画を傑作たらしめる最も大きな要素は、その映像表現にある。とにかく鮮烈で飽きることのない映像ばかりで、ほんとうに1カットも見逃したくないと思わされた。
シーン(時代)毎に異なる画面のアスペクト比や、シンメトリカルなデザインは、映画への統一感と没入感を高めていて、全ての要素がかみ合っている。
各種造形は、個人的には『チャーリーとチョコレート工場』や『アリス・イン・ワンダーランド』を思わせるような不思議さをもちつつ、興味深さがたまらない仕上がりになっていた。
本当に無駄がない映像ばかりなので、何度見ても発見があるのではないかと思わされる作品だ。
シュールとコミカルのバランスが絶妙
淡々とした語り口で、何を考えてるのかわかりにくいコンシェルジュと、なんだか可愛らしくて応援したくなるベルボーイ。映画全体に漂う、やや人間味にかけた雰囲気を、かれらの掛け合いが明るくポップに変化させてくれる。
割と簡単に人間が死んだり、そうはならんやろ、というシチュエーションだったりも多く、シュールギャグという人を選ぶジャンルかもしれないと最初は思っていたが、見ている内にこの内容なら誰でも楽しめるレベルではないかと思った。
まとめ
最後には悲しくも、温かみを少しばかり残しながらしっとりとエンディングを迎えてしまう。ただ、余韻たっぷりで、いい映画を見たという気持ちにさせられた。
シナリオ自体には意外とひねりがないのだが、アドベンチャー的にワクワク楽しめる要素もあって、飽きさせない作りだ。高品質なコメディ映画を求める人には是非ともオススメしたい一作であった。