2023年公開。台湾映画『僕と幽霊が家族になった件(原題:關於我和鬼變成家人的那件事)』を紹介。
あらすじ
うだつの上がらないノンケの警察官ウー・ミンハン(呉明翰)は、捜査中に祝儀袋を拾ったために、若くしてひき逃げ事故で亡くなったゲイの青年マオ・バンユー(毛邦羽)と死後結婚させられることに。マオ・バンユーの存在に悩まされつつも、ある事件の解決に向けて奔走するウー・ミンハン。やがてマオ・バンユーの助けを得て事件は解決に向かうと思われたが、そこには驚くべき事実があった―。
紹介
インターネットで度々見かける、台湾の伝統的風習「冥婚」。地面に落ちている赤い封筒を拾ってしまうと、死んだ娘と結婚させられるというものだ。
本作の主人公である、(ちょっとネジのとんだ)ある警官は、捜査の途中でそんな赤い封筒を拾ってしまう。拾った瞬間に「ありがとう!」などと周りにいた老人から祝福され、文句を言いながら中身を確認すると、中にはいっていたのは「男の写真」。
あらすじの通り、主人公は「ゲイの男」との冥婚をさせられてしまうのである。
日本人の私達の感覚からして、まず、「冥婚ってそういうふうに扱ってもいいものなの!?」という驚きが最初にくる。ホラーではなくコメディにできるのか、と。そして、本作は完璧なコメディに昇華している。
冥婚したゲイの青年は、主人公の前にだけ、幽霊として姿を表すようになる。主人公に未練を解消してもらって、成仏したいというストーリーの流れは、日本でもよく見る展開だし古典的だが、「ゲイ」というセンシティブな要素が上手く絡み合ってめちゃくちゃ面白かった。
ゲイに対してやや下品な扱いもあるため、不快に思う人もいるかもしれないが、全体的に真摯かつポジティブに仕上がっていると思う。
シナリオ的にも、しっかり最後までサスペンス要素も楽しませてくれるし、家族愛で泣けるシーンもあって素晴らしい出来だった!
以下は、ネタバレを含む感想を述べる。未見の方はご注意されたし。
破天荒ノンケ警官のゲイ幽霊のタッグが完璧
逮捕の為なら、ちょっとの犠牲も厭わない。そんな破天荒さを感じさせるOPから始まる本作。そんな、不器用でハチャメチャなイケメン主人公と、軟弱そうで皮肉屋なゲイ青年という組み合わせが、黄金コンビ的でめちゃくちゃ楽しめる。
最初はいがみ合っていくけれども、どんどんバディ感を増していき、最後には感動がやってくる。主人公はノンケだけれども、ゲイである青年を嫌悪したりする雰囲気ではなく、あくまで好意を抱く対象が違うだけだという認識であるように描かれるのも素晴らしい。このあたりの描き方は現代のありようが反映されている。
というのも、台湾は2019年に同性婚を法制化していて、この分野ではアジアで先進的な位置にいる国なのだ。だから、描写としても無駄に尖っておらず、実際のありようが反映されているのではないかと感じた。
ゲイ幽霊側の家族達もまた良い人達で、好印象だ。家族間の関わり方などには、台湾らしさを感じさせられた。
一捻りを見せてくれるサスペンスと美女
冒頭から輝いているのは、ヒロイン的ポジションに居る美女、ワン・ジンが演じ女警官だ。主人公が惚れている相手で、出てきたときには「AI美女か?」と思わせる美貌だった。
そんな彼女も絡んだサスペンス要素も楽しむことが出来る本作。展開こそ目新しいものではないが、最後まで楽しむことが出来ると思う。
ただし、女については物語的なその後の描写があまりないのが残念だ。物語的に別のところにフォーカスが当たってしまうため、ふわっと退場してしまう。でも、その直前まではかなりの存在感を見せていた。
サスペンス部分を支える他の役者陣。特に、そのコミカルな風貌と演技力が目立ったMa Nien-Hsien(日本語での表記がわからず!)も素晴らしかった。なんとなく、柄本時生感があって親しみを感じさせられるw
日本ではまだあまり目立った声は聞こえていないが、個人的には大満足な一作。誰しも楽しめるエンタメ作である。ぜひおすすめしたい。