ささざめブログ

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【漫画】全人類読んで!感動ラブコメ『コレットは死ぬことにした』全20+1巻の感想

コレットは死ぬことにした』を全20巻+女神編全1巻までイッキ読みしたので、感想などを書く。

あらすじ

コレットは死ぬことにした』は、幸村アルトさんによって描かれる、薬師として働くコレットの奮闘や、冥府の王ハデス様との恋模様が描かれる、ギリシャ神話をベースとしたファンタジーブコメディ漫画。以下は公式あらすじ。

薬師コレットは毎日大忙し。 食事してるときも、寝てるときも、朝から夜までお構いなしで休む暇がない。逃げ場がない……。  疲れたコレットがとびこんだのは井戸の底!目が覚めるとそこは冥府…。 なんと冥王ハデス様の治療をするはめになって!? 癒しと恋心がつまった薬師コレットと冥王ハデス様の神話ロマンス☆ 

出典:コレットは死ぬことにした|花とゆめ【白泉社】

コレットとハデス様のラブロマンスだけじゃなく、薬師生活で出会う様々な人々との関わりのなかで生まれる苦悩や、冥府だけでないギリシャ神話に登場する神々たちとの交流、各キャラクターたちの壮絶な過去と現在から描かれる「悲しみ」と「喜び」、そして「癒し」がとにかく沢山詰まった漫画だ。

物語としては全20巻できれいに完結するが、その後の話をおまけ的に女神編として追加で描かれている。

魅力的すぎるキャラクターたち

やはりこの漫画の最も愛すべきポイントは、そのキャラクターたちにある。悪い奴がいない…というわけではないのだが、ついつい応援したくなるようなキャラクターたちがとにかく盛沢山なのだ。

ギリシャ神話を完全に踏襲してしまうと、それはもうイカレたキャラクターだらけになってしまうので、ここは作者の方なりの大幅なアレンジが入っている。(余談だが、巻末コメント的なところで、藤村シシン氏にインタビューをした話が載っていて、やはりギリシャ神話を扱おうと思うとこの人が出てくるのか、とやや感慨深い気持ちになった)

 

やはりまずもって欠かせない主役二人が愛らしすぎる。ハデス様はイケメン、病弱、穏やか、冷静、犬好きと人気になる要素てんこ盛りなのだが、一番のポイントは「とにかく甘々」であること。後に恋人となるコレットにも最初から非常に優しいが、恋人となった後はもう見てるこっちが恥ずかしい、というくらいに愛情があふれている。コレット以外にも、自分の臣下であるガイコツたちやカロンに対する慈悲はマリアナ海溝より深い。もう、推すしかないわけである。

コレットも同じくらい魅力的だ。第一巻冒頭から、あまりにも忙しすぎて自らを省みることも出来ずに井戸に身を投げてしまうほど薬師としての責任感と必死さにあふれていて、困っている人は見過ごせないという優しさをもっていて、ハデス様や色々な人たちに良い影響を与えていく様子が描かれる。実直さと危なっかしさが、愛らしさと放っておけないという庇護欲を搔き立てる存在になっていて、色々な神様たちに好かれる要因となっているのだなと思う。

作中最後まで、とにかく自己犠牲の精神が強いキャラクターであり、いやいや、もっと自分勝手になってもいいんだよ!と言ってあげたくなる。でも辛い選択をしていくコレットの、彼女の意思だから尊重したい、というハデス様に感情移入してしまい、また泣ける。

 

ひょうひょうとした性格と、暗い過去、そしてハデス様への確かな忠誠をもつカロンも大好きなキャラクターの一人だ。ある事情から体全体を黒い布で覆っていて、自分が存在するだけでハデス様を蝕んでしまうという葛藤を抱えていて、だけどハデス様から深い愛情と信頼を受けているからこそ、彼なりに自分の仕事を間違いなくこなす姿にとにかく胸が打たれる。彼に感情移入してしまうと本当に胸が痛むし、いやでもハデス様は気にしないよ、気にせず笑ってよ!と思ってしまう。

出典:https://twitter.com/colettegaikotsu/status/921352660422238208?s=20

物語の中盤から、コレットはある目的で村を出て旅にでる。途中から旅の仲間として一緒に過ごすことになる二人がディオニュソスとヘルメスだ。この二人も神様であるが、人間のふりをしてコレットの旅についてきて、優しく見守ってくれているような立場になる。

ディオニュソスは、当初そこまで好きなキャラクターではなかったが、物語が進むほどに魅力が深まっていくキャラクターだ。普段は酒の神として、ひたすら飲んだくれているような印象だが、その心には子供っぽさと神様らしい思慮深さの両方を兼ね備えている。彼が人間の子供に「解けないなぞなぞ」を出題していた心境を考えると、彼の悲しみが非常に痛ましく感じた。その後、そんななぞなぞを出していた少年の成長した姿を見るエピソードでは、感情移入して涙がこぼれる思いだった。

コレットのことも優しく見守っていて、程よい距離感でアドバイスをくれたり、助けてくれたりするキャラクターだった。

ヘルメスは、物語的には便利キャラクターだ。終盤の展開の諸々困ったところは、彼の存在とその能力でなんとかしていることが多い。見た目のかわいらしさと、内面のしたたかさはやはり魅力的で、それでいてコレットに優しくついてきてくれる姿(彼なりの打算もあるのだろうが)には、好意を抱かずにはいられない。

 

これら以外にも、沢山の魅力的なキャラクターたちがいる。コレットと同じく薬師の面々はいずれも高潔なキャラクターばかりで、応援せざるをえない。また、神々の面々はもう個性のかたまりのような感じで、愛らしさが詰まっている。

 

ガイコツや動物キャラたちが超絶キュート

この漫画を語るうえで、やはり欠かせないのが、人や神様という部類から離れた様々な人外キャラクターたちだ。

出典:https://twitter.com/colettegaikotsu/status/710045340271910912?s=20

ハデス様に仕える5人のガイコツ達の深い忠誠心と愛情はだれにも負けていない。針子のハリー以外の4人は、ハデス様とコレットが恋仲になったというときに、頭蓋にひびが入るほど苦悩するのだが、それでもハデス様への愛は変わらなかった。そんな真っすぐすぎる愛情は、読んでいるだけでも涙ぐましく、ハデス様が彼らをねぎらうだけで、私もなんとなく幸せな気持ちになってくる。ガイコツであるのに、見た目も非常にコミカルで愛らしい、大好きなキャラクターたちだ。

出典:https://www.hanayume.com/special/colette2021/result.php

その他多数のキャラクターたちを抑えて、人気キャラクター投票で第3位に入るほどの人気キャラがコツメカワウソのコツメだ。一目見ただけでわかるこの愛らしさ。そりゃあもうときめかずにはいられないのだが、彼の魅力はやはりその背景と性格にある。とにかく努力家でまっすぐな彼。ポンコツで先輩諸氏からいじめられてしまうような彼だが、それでもめげずに努力しようとする姿はもう応援せざるを得ない。

 

このほかにも、冥府の番犬ケルベロスを、おなかが減るとケル・ベロ・スーという3匹の子犬になるという天才的な発想で作られているキャラクターや、天界各地ににいるニンフたちなど、魅力的なキャラクターは人や神様だけではないのだ。

特に感動したエピソード3選

以下は、全21巻のなかでも、私が特に感動したエピソードをまとめる。(~編というのと、だいたいの話数は私が勝手に考えているものなので悪しからず。)

コツメの再就職編(8巻第45話~9巻第54話)

この漫画を読むきっかけにもなったエピソードで、紹介してくれた自分のパートナー一押しの話だ。ポセイドンさまのところをクビになったコツメが、ハデス様のところで修行し、そしてもう一度ポセイドン様のところで面接を受ける。

とにかく一生懸命なコツメは心から応援したくなるが、とにかくどんくさくて頼りにならず心配になるというのも表現されている。そして終盤、ポセイドン様との面接の結果とその理由の部分は、とにかく悲しみにあふれて胸が締め付けられる。こんなに苦しい気持ちになることはない、というぐらい辛い瞬間がおとずれるのだが、その後の幸せな瞬間はもう涙なしには見られない。

この話だけでも見る価値があると思う。

遍歴医の村編(16巻第94話~16巻第98話)

コレットたちが旅の途中に立ち寄った、定住する薬師のいない村の話。「親の死」を扱う話になっている。

家出して何年も帰っていなかった息子が、久々に出会った母親が驚くように弱っていて…と、感情移入してしまうともうめちゃくちゃ食らう。一つ一つの言葉が刺さる。一見するとありふれたエピソードなのだが、各人物の心情描写がとても良くて、帰ってきた息子、母、それを見守る遍歴医、そしてコレット、それぞれの苦しみ、幸せ、葛藤、矜持などが垣間見れる。

コレットはこのエピソードを通して、人間の死というのに改めて向き合うこととなるのだけれど、そんなコレットを察して優しくしてくれるハデスさまの素振りもまた泣けるし、でも今の気持ちはハデス様には打ち明けないと決めるコレットにも泣ける。

余談だが、この次の99話・100話はガイコツ達がメインのとても可愛らしい話なので、そちらもぜひ読んでほしい。

コレットの決意編(19巻第114話~20巻最終話)

コレットとハデス様の久々の二人きりでのお出かけから始まる、この物語の最終盤。あることから、ハデス様が第一巻のときと同じ病状になってしまい、あのころとは違った関係性のなか、彼を介抱するコレット。そんななか、全能の神ゼウスから与えられる「神様になる」という選択肢。

ここで改めて、この漫画のタイトルが回収される。もう16巻あたりからずっと涙腺がぐずぐずなのに、最後の最後でもう大号泣させられる。こればかりはもう説明不要だろう。とにかく、最後まで読めば絶対に満足できるといえるし、この漫画で一番感動するのはここだと私は思った。

 

おわりに

最初から最後まで、各キャラクターたちは自然に元気に動く作品で、感情移入が止まらない。上でも書いたが、私はもう終盤涙腺がぐずぐずになり、頭が痛くなってくるぐらい涙が出てしまったw

女神編までふくめても21巻と、読みやすい分量で人にもおすすめしやすい。まだアニメ化はされていないのだが、ぜひ映像でも見てみたい作品だ。

この素敵な作品に出会わせてくれたパートナーに感謝したい。