ささざめブログ

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【映画】恐怖の鉤爪男の正体を追え…90'sサスペンススリラー『ラストサマー (1997)』

1997年公開。ラストサマー(原題:I KNOW WHAT YOU DID LAST SUMMER)を紹介。

あらすじ

高校生最後の夏。ジュリー、レイ、ヘレン、バリーの4人は車で飛び出してきた男をひいてしまう。動転した彼らは死体を海に沈め、黙っていることを誓い合う。1年後、ジュリーの元に謎の手紙が届く。そこには「去年の夏の事件を知っている」と書かれていて…。

引用元:ラストサマー - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画

 

紹介

前年、大ヒットとなったスクリームの脚本家、ケヴィン・ウィリアムソンが脚本を務めたサスペンススリラー。本作も中々のヒットとなり、後に続編が2作作られている。

邦題は単に「ラストサマー」だけであるため、最後の夏?青春ものかな?と思わせられるが、原題では"I KNOW WHAT YOU DID LAST SUMMER (去年の夏お前が何をしたか知っているぞ)"という、不穏さと響きの良さを兼ね備えた素晴らしいタイトルである。

ちなみに、続編以降のタイトル、邦題は『ラストサマー2』(原題: I Still Know What You Did Last Summer)、『ラストサマー3』(原題: I'll Always Know What You Did Last Summer)となっている。ここまでくると原題の方もあんまり良いとは思えなくなってくるが…w

 

脚本家が同じということもあり、やはりどうしてもスクリームと比較されてしまいがちな本作。スラッシャーホラーのお手本的な展開が多数あることや、終盤の真相や戦いがややがっかり感をもっていることから、評価はあまりよくない。

 

以下は、ネタバレを含む感想を述べる。未見の方はご注意されたし。

見どころは?

メインキャラクターの4人は、いかにもなテンプレート的キャラクターであるのだが、彼らの作られ方が大変良くて引き込まれた。黒髪美人の主人公、その彼の屈強でありながら誠実そうな彼氏、暴力的でトラブルメーカーなヤンチャガイ、作中一番の恐怖シーンを見事に展開する金髪ブロンド美女。

特に、ミスコンの優勝も飾るブロンド美女を演じたサラ・ミシェル・ゲラーがとにかく素晴らしいと思う。すぐ殺される役なのかと思いきや、その美しさの表現から、ニューヨークでの華々しい生活に失敗して地元に帰ってきているみじめさ、フィッシャーマンからの決死の逃亡や、調査にも前のめりな姿勢などなど、魅力的なキャラクター造が次々と出てきて、ときめきが止まらなかった。

最後まで生き残るのは彼女ではないのが残念に思うほどであった。

 

やはり原題タイトルでも引きとなっている、手紙で告げられる脅迫はなかなか恐怖をあおっている。ただ、なんとなく丸文字っぽくてあまり怖くない気もしている。

フィッシャーマン自体は、かなり強い怪人として描かれている。ゆっくりと近づいてくるため、全然逃げ出せそうなのだが、やはり逃してくれない怖さは素晴らしい。ただ、最終決戦はあまりにも残念である。最後までかっこよさをキープできればよかったのだが…。

 

真相はややがっかり

結局のところ、主人公たち4人が轢いてしまった相手こそが、本作の怪人フィッシャーマンに扮する人物である。主人公たちは殺したと思い込んでいるだけで、死んでいなかったというオチだ。女性陣が度々訪れた、自分たちが轢いてしまったと思い込んでいる人も、そのフィッシャーマンに殺された側の人物であったことが分かる。

 

※時系列

フィッシャーマンが男Aを殺して海に流す

フィッシャーマン、殺し終わりでとぼとぼ道を歩いているところを主人公たちが轢く

主人公たちは海に死体を流して隠ぺいするが、フィッシャーマン実は生きてて復讐を決意する

海での死亡記事が出回る。これは男Aのものだが、主人公たちは後に、これが自分たちが轢いたひとのものだと誤解する。

主人公の彼(轢いた本人)は罪悪感から、被害者(実際にはフィッシャーマンに殺された人)の家に贖罪に訪れていた

1年後、満を持してフィッシャーマンが主人公の元に手紙を出す

なぜかMax(演:ジョニー・ガレッキ)も含めて、関係ない奴らもばかすか殺しながら主人公たちを追い詰める

船の上で戦ってフィッシャーマンは負ける(片手切断)

 

別に悪くはないのだが、なんともPredictableで消化不良な結末である。主人公4人の中の誰かが!となったほうが面白いのでは…と思ったが、それもありきたりすぎるか。そう思うとサスペンスは難しい。

フィッシャーマン自体もなんとなく「普通のおじさん」感が強い。スクリームでは普通に撃退されるマスク男がやや滑稽でそれがアクセントになっていた。それと比べると、フィッシャーマンはかなり強い敵として表現されてはいるのだが、それでも怖さが足りないだろう。

 

ただ、フィッシャーマンが圧倒的な攻撃性を持っているのはよかった。このあたりは、スクリームとの関連性を感じるところである。復讐を誓った人物的に描かれていながら、関係のない人物であっても殺害するその狂気は見ものだ。というかビッグバンセオリー(TBBT)のレナード役で有名なジョニーガレッキが急に殺されるシーンでは、私も見ながら「え、なんで殺された!?w」と声を上げて笑ってしまった。

 

スラッシャーホラーの定石を辿りながら、サスペンス的要素の強い本作。特に私は、金髪ブロンドのサラ・ミシェル・ゲラーがとにかく気に入った。彼女はこの後、スクリーム2や海外版の呪怨などにも出演している。要チェックだ。