ささざめブログ

さめざめと語ります。日記、エッセイ、短編、感想、その他。

アスキーアートとブーン系小説と僕と

 昔を懐かしむ。

 2023/11/10のオモコロ特集記事を読んだ。そうすると、2ch全盛期だったあの頃を思い出してしまった。

omocoro.jp

 

 私の中高生時代の青春の記憶に、AA(アスキーアート)というのは確かに存在している。モナー内藤ホライゾン、3ゲットロボも南冲尋定も、みんな懐かしむ対象だ。

 AAとの出会いがなんなのかは流石に自分も覚えていない。2chを見れば、そこかしこに出てきていた気がする。多くの人にとってはきっと電車男 (2004-2005)だろう。

 

 私にとって、最もAAという文化に触れていたのは「ブーン系小説」という世界だった。そして、今にして思えば、この世界が、自分にとっての創作のきっかけの場所だった。

 ブーン系小説とは、所謂ネット小説文化のことで、特に2ch掲示板で連載されていたもののうち、以下のような形態を持つ小説のことだ。

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 14:49:10.97 ID:7CALQIqu0
( ´∀`) 腹が立つほど暑いから、内藤のところに涼みに行くモナ


ピンポーン


( ^ω^) だれだお?

( ´∀`) お邪魔するモナ

( ^ω^) 手土産もなしかお

( ´∀`) 健康なモナの身ひとつで満足してくれモナ

引用元:[Web Archive]オ ム ラ イ ス@ブーン系小説まとめサイト|( ´∀`) ぼくはモナー

 AAの顔文字と台詞で構成された小説。地の文が少なく、顔文字で感情や状況を表現できるから、小説を読み慣れないような人でも気軽に読める文学だ。

 AAをベースにキャラクターが構築されるため、これはある種の巨大な二次創作のようなものでもあった。
 例えば、ブーン系小説でおそらく最も多く登場した、内藤ホライゾン(ブーン)( ^ω^)とドクオ('A`)の二人。
 数多ある作品の中で、彼らは旧知の仲で親友同士でたいていキモオタ童貞という設定だったり、あるいはリア充のブーンと非リア充のドクオという対比で描かれたりした。皆が持つ共通認識に従って書いてもよかったし、独自の世界観を再構築しても許される、そんな土壌が完成していた。

 この、自由な改変が許されるが、共通のキャラクター像があるという創作の世界は、おそらく現代ではかなり希少ではないだろうか。現代にある二次創作というのは、原作にある程度忠実でないと、エアプだとかミーハーだとかにわかだとかいう言葉で形容されてしまうだろう。

 私は、そんなブーン系小説の世界にどっぷりと浸かっていった。朝から晩まで、ひたすらに読み漁った。ある作品では魔を打ち倒す勇者を、ある作品では戦争を集結させる英雄を、ある作品では狂気に塗れたホラーを、そしてときにはちょっとエッチな作品を。トリップしかついていない名前も知らない作者たちが、無限に生み出す作品を読み続けた。

 実は、私も1作品だけ、投稿したことがある。とある合作祭のようなところに投稿して、作品へのレスもほとんどなく恥ずかしい出来ではあったのだが、誰かがイラストまで書いてくれた作品だ。今思うと、私が物語を初めて書いたのは、おそらくこのときだった。小説を書くということに対する憧れが、ブーン系小説のおかげで、ずっと身近に感じられたものだった。

 

 しかしそんなブームも長続きはせず、私の方もいつの間にか、ブーン系小説からは離れてしまっていた。多数あったブーン系小説まとめサイトも、その殆どがもう閉鎖されてしまい、残っているのは極わずかとなってしまった。

 今では、ネット小説のプラットフォームも多くの場所に存在する。最大手の小説家になろうカクヨムもあるし、noteで書いている人もいるだろう。2次創作ならpixivや、いまでも5chに投稿している人もいる。
 ブーン系小説も、数は少なくなったが、今でも投稿している人もわずかながらにいるようだ。

 

 もうきっと、このブームが再流行するようなことはおそらくないだろう。けれど、自分の中にある、あの頃たくさん読んだブーンたちの輝きというのは、きっと忘れられないだろう。久々に目にしたあの頃のタイトルたちを見て、熱い思いがたぎった日だった。

 

あの頃大好きだった作品5選

 もう内容はすっかり記憶にないが、あの頃大好きだった作品を少しだけ紹介して終わろうと思う。見れなくなってしまっているサイトのものもあるが、その場合はWayback MachineのURLにしている。

( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです

http://boonsoldier.web.fc2.com/arufa.htm

 ブーン系小説の頂点にあるのは、この作品だと思う。2006年から2012年という超長期連載作品で、計120話という大作だ。最弱の兵士だったブーンが、血と泥に塗れながら這い上がっていく様は、思い出すだけでもワクワクするし、驚愕のシナリオ展開でそれはもう夜も眠れなくなるほど読んだ記憶がある。

 アルファベットを武器にするという突飛ながらシンプルなアイデアも良かった。イラストも素敵だ。

 ここ数年はもう表立った活動が見られないが、筆者のX(Twitter)アカウントも健在だ。

 

( ^ω^)ブーンは歩くようです

https://web.archive.org/web/20151119235650/http://vipmain.sakura.ne.jp/end/445-top.html

 これも、総文字数は32万字をも超えるという超大作。久々に読み始めたら、もう止まることなく、一気に最後まで読んでしまった。やはり弩級に面白い。

 世界崩壊からのコールドスリープというSFサスペンス的序章の第一部から第三部、そして、第四部からは一変してブーンという男の旅路を描くファンタジー小説に。シンプルなタイトルからは想像もつかない、重厚な物語が展開される。

 

('A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです

https://web.archive.org/web/20150717134025/http://vipmain.sakura.ne.jp/end/445/end.html

 力を持たないハリボテヒーローが、怪人ドス女と出会い、闇の力を纏うダークヒーローへと変身して戦う熱い物語。いやもうとにかく熱い。厨二心に火がつく。

 

( ´∀`) ぼくはモナー

https://web.archive.org/web/20160612025610/http://vipmain.sakura.ne.jp/end/387-top.html

 これも長編。コレを読んで、大学生活というものにとても憧れが湧いた(結果的に、憧れたような生活は送らなかったのだが)。

 なんだかオシャレな雰囲気もあって、私はこの作品のおかげでジャズというものを知った。

 

( ^ω^)ブーンがいろエロするようです

http://boonsoldier.web.fc2.com/iroero.htm

 ここまでに紹介してきた真面目な作品と違って、これはもうエロど直球。テキストと顔文字だけなのに、もうとてつもないものだ。いや、正確には、文字じゃないと出来ない仕掛けになっていて、とてつもなくバカバカしいのだが、当時の私はいたくハマってしまっていたのを覚えている。

 今にして思うと、今私がギャグエロ漫画みたいなのが好きなのは、こういう作品の影響があるのかもしれない。そんな思いを込めてここに並べておこうと思う。